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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第25話 そーとーさくせん、だね

エルミスについて行き、リーヴとセラは街の外れまでやって来た。建物の残骸はあるが、もう人は住んでいないようだった。


「この辺りにあの魔物の巣があるの?」

「そう。ここからはあまり大きな音は立てないでね…1体1体は大した事ないけど、大勢で来られると流石に面倒だから」

「うん、わかった」

「あ…エルミス」


リーヴが『とてとて』とエルミスの背中に近づく。


「なんだい?」

「背中に虫が」


その言葉を聞いた瞬間、エルミスの顔が一瞬で青ざめていく。髪の色と顔の色が見分けられないほどに。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!取って!取ってぇぇぇぇぇっ!!!」


エルミスは背中を地面につけて暴れ回る。


「ちょっ…エルミス…!音出しちゃダメって、さっき君が…!」

「僕虫嫌いなんだよぉぉ!!」

「ま、まって、いったん止まって、とれない、とれないから」


エルミスの動転がリーヴにも伝わりかけている。


「…大丈夫かなぁ」


セラは早々に不安を覚えていた。


「ふぅ……ごめんごめん。魔物が寄って来なくて良かったよ」


エルミスは気を取り直すかのように、2丁の短機関銃を構える。


「それじゃ、行こうか」


3人は廃墟と化した街を見ながら、その奥へと歩いて行く。


「エルミス、あの魔物と戦う上で、何か気をつけなきゃいけない事ってある?」

「うーん…『必要以上の音を出さない事』としか言えないかな。音を出し続ける限り、無限に湧いて来るから」

「そう、なの?」

「何か疑問でもあるかい?」

「さっき、爆弾つかってなかった?」

「……それだ!だから今までの戦いが妙に大変だったんだ!」

「「…」」


リーヴとセラは、奇しくも同じ事を思いながら苦笑いしている。


((もしかして…エルミスって頭悪いのかな))


だが2人とも常識は弁えているので、表には出さなかった。


「さて、着いたよ!ここがあの魔物達の巣さ!」


エルミスが手を向けた先には、地中深くまで続いていそうな洞穴があった。中は真っ暗で、覗いても底は見えなさそうだ。


「この中に入るの?」

「まさか!さっきの話を聞くに、リーヴは戦えないんだろう?そんな危ない事しないよ!」


そう言うと、エルミスは腰に付いているポーチから手榴弾を1つ取り出した。


「また、爆弾?」

「そんなのポケットに入れてるの…?」

「アイツら相手だと結構便利なんだよね!この場合の使い方は簡単さ!ちょっと離れててね…」


エルミスは手榴弾のピンを引き抜き、すぐに魔物の巣の中へ放り込んだ。その直後、鈍い爆発音が聞こえたかと思えば、今度は大量の足音が洞穴から聞こえてくる。


「…君、こんな無茶な方法で戦ってたの?」

「死んでないからそれで良いんだよ!さ、リーヴは危ないから隠れてて!」


エルミスは気合いを入れる為か、額のサングラスを両目に落とす。セラも双剣を構え、背後には金色の光輪を出現させて臨戦体制に入る。


「来るよ…掃討作戦開始だ!」


エルミスの掛け声とほぼ同時に、蕾のような頭部と鋭利な爪を携えた魔物が大量に向かって来る。


「ちょ…!多くない!?」

「まぁ最後の巣だからね!これくらい居なきゃ味が無いってもんさ!」


エルミスは群れの一体にワイヤーを突き刺し、ワイヤーが巻き取られる勢いを利用して魔物に近づく。


「まず1匹!」


エルミスは近づきながら銃を乱射して、魔物の身体を撃ち抜く。魔物1体を片付けると、再び別の魔物の身体にワイヤーを打ち込んで戦場を駆け抜けていく。エルミスに背中を預けているセラも、双剣を巧みに操って魔物の数を順調に減らしている。


(…いつも戦うのはセラだけだったけど…2人いると、セラも楽そうだな)


リーヴは岩陰に隠れながら、戦闘の様子を眺めていた。


「休めない…本当に数減ってるの…?」

「確かにちょっと多すぎだね…それじゃ、少し遊ぼうか!」


エルミスはワイヤーを射出して高く飛び上がり、先程のポーチから大量の手榴弾を取り出した。


「セラ!リーヴ連れて逃げて!」

「えっそんな急に…」


困惑するセラの声を、大量の爆発音が掻き消す。どうやらこの手榴弾は爆発する度に中から小さな手榴弾が出て来る仕組みらしく、エルミスが投げた数からは想像も出来ない大規模な爆撃となった。

土煙が晴れた頃、リーヴを横抱きして空中に避難していたセラが着地する。


「おお〜…空気がびりびりしてる」

「こういうのやるなら事前に言っておいてよ!」

「あはは、ごめんごめん。でもほら、お陰で全員片付いたよ?」


エルミスの言う通り、辺りには爆散した魔物の死骸が散らばっていた。


「おお…壮観、だね」

「これで…終わりなの?」

「そのはずだよ。さ、街に帰ろう!やっと…この星に音が帰って来るんだ!」


嬉しそうに先を歩くエルミスの背中を眺めながら、セラは1人考え込んでいた。


(…やっぱり何か引っかかる。魔物は、生物の死骸と大気中や星の魔力が混ざって生まれる生物だって、昔読んだ本に書いてあった。だから、見た目やその他の特徴が既存の生物と似てる点があるんだって。なら…あの魔物は何の生物の死骸から生まれたの?そもそも…)


(あれは本当に…自然に発生した魔物なのかな…?)


しばらく考え込んでいたが、案の定と言うべきかセラの疑念が晴れる事は無かった。

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