表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/198

第24話 『スター』

「えっと…たしか、こっちを曲がっていったよね」

「随分遠くまで逃げたね…」


リーヴとセラは、魔物の群れから逃げていった青髪の人間の後を追って街中を歩いている。その人間が反撃したのか、ところどころに魔物の死体が転がっている。


「『無理無理』とか言いながら結構応戦してるね…」

「この魔物の強さがよくわからないけど…あの人、たたかえるんだ」


街を歩いていると、先程よりも微かに人々の話し声が聞こえてくる。


「またあの子か…まったく」

「懲りないねぇ…」


言葉だけ見れば呆れているようにも感じ取れるが、人々のその声色にはどこか安堵のような感情が混じっていた。


「あの人…どんな立ち位置の人なんだろ」

「それも、次会ったら聞いてみよっか」


2人が再び歩を進めようとしたその時、上から誰かが降ってきて2人の背後に着地した。


「いやー…しつこいなぁ。やっっと撒けたよ…あれ、君達は確か…」


それは、今の今までリーヴ達が探していた青髪の人間だった。


「あ、さっきの人」

「撒いたって…あの魔物達を?」

「うん。だってアイツら目が退化してるから。音にしか反応しないんだ」

「「へぇ…」」


2人が雑学を聞いて感嘆の声を漏らしていると、その人間がハッとしたように声を上げる。


「あっ!忘れてた…会ったなら自己紹介しなきゃね!僕はエルミス…この星が誇る大スターさ!」


そのテンションの高さに、リーヴとセラは言葉が出て来なくなる。数秒ほどその場に妙な沈黙が漂った後、エルミスが言葉を続ける。


「君達、僕の後をついて来てただろう?と、いう事は…僕のファンだったりするのかい!?」


再び、気まずい沈黙が周囲を包む。


「うーん違うか…なら、何だって僕の事を…?」

「…ねぇ、セラ」


思案するエルミスを横目に、リーヴがセラに耳打ちする。


「どうしたの?」

「だいすたー、ってなに?」

「えっとね…平たく言うと人気者って事かな」

「人気者…」


リーヴは先程聞いた、街の人々の話し声を思い出していた。


「ねぇ、人気者の人」

「なんだい?」

「わたし達はしりたいの。この街に、この星に何があったのか」


それを聞いた瞬間、エルミスが僅かに真剣そうな顔つきになる。


「…知ってどうするんだい?」

「こまってる人がいるなら、たすけたい。ただ、それだけだよ」

「うん。あたしも同じ気持ち」

「なるほどね…」


エルミスは数秒だけ考え込み、それから元の明るい表情に戻って話し始める。


「そういう事なら教えてあげよう。まず…この星は何年か前まで、『祭の星』って呼ばれてたんだ」

「まつり…?」

「え、知らないのかい?祭っていうのは…ほら、あれだよ。皆で集まって騒ぐやつだよ」


その認識の仕方もどうかと思うがな。


「話を戻そう。僕達はずっと、毎日のように大勢で騒いで楽しく暮らしていた。今の様子からは想像もつかないだろうけど…かつてこの星は、幾千もの音に包まれていたんだ」

「そんな星が、どうしてこうなったの?」

「ある日突然現れたのさ。さっき僕が戦ったような、音に反応して生物を狩る魔物がね。奴らは街中を中心に現れて、声を発した人間を片端から攻撃していった。当然…死人も出たさ。それ以降、この星の人々はその魔物を恐れて声を発さなくなった…」

「じゃあ、あなたはこの星に音を取り戻すために、あの魔物とたたかってるってこと?」

「そういう事…何年かかろうが取り戻してみせるさ。あの幸せに溢れた人々の顔を…僕はその為の星に、『スター』になる。この星から音が消えたあの日、僕はそう誓ったんだ」


エルミスは決然とした様子で呟くと、少し慌てた様子で言葉を足す。


「って、なんか湿っぽい話になっちゃったね…そうだ!今度は君達の話を聞かせてくれないか?まだ名前

も知らないしね!」


リーヴとセラは、今までの旅の事をエルミスに話した。


「なるほど…リーヴの『星々の間を移動する』っていう能力を使って、2人旅をしてるんだね」

「そう、だよ。一応『星間旅団』って、名付けたんだけどね」

「名乗るタイミング無いよね」

「ね」

「あははは!君達、仲良しなんだね!これは想定外の追加戦力だ」

「あの…あたし達から言っておいてなんだけど、この星の為にあたし達に出来る事ってあるのかな?」

「あるさ!まずはあの魔物の根絶だよ!この数年で大体全部倒したからさ、あとは巣を1,2個叩けば全滅…のはず!」

(いまサラッとすごい事いった)

「なら、とりあえずはあの魔物の巣に向かう…って事かな?」

「そう!早速行こうか!」

「さっきまで戦ってたんじゃ…休憩とかしなくていいの?」

「何言ってるんだい!君達の参戦という何よりも嬉しいサプライズがあったのに、立ち止まってなんていられないよ!」


そう言い残し、エルミスは走り出した。


「いこう、セラ」

「うん」


リーヴとセラも、エルミスの後を追っていく。ところで…魔物を根絶する事が、果たして根本的な解決になるのだろうか。そんなような漠然とした疑問が、セラの中に漂っていた。

キャラクタープロフィール

名前 エルミス

種族 人間

所属 祭の星

好きなもの 音楽 騒ぐ事 りんご

嫌いなもの じっとしている事 きゅうり 虫

異能 なし

作者コメント

異能なしで戦う隠れたバケモン。パラノイアにも異能は無いが、アイツは淵族なのでノーカン。もう特に書くことが無いが、コイツがかけているサングラスは幼い頃に見たステージの歌手がかけていて、その者に憧れて着用しているものである。イメージした言葉は「星」「音」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ