第22話 しずかだ、ね
リーヴが暑さにやられてしまった為、やむを得ず解決の報告無しで次の星にやって来た2人。薄暗い未開発の地で、セラはリーヴに膝枕をしている。
「体調はどう?」
「だいぶ、だいじょうぶ。ここ、涼しい」
「よかった…」
セラはリーヴの灰色の髪を優しく撫でながら微笑む。
「…ねぇ、セラ」
「なに?」
「わたし…この前いった。『目的を探す為に旅をする』って」
「ああ…そういえば言ってたね」
どちらかと言えば言ってたのはセラだが。
「最近、おもうんだ。もしかしたら…旅に目的なんていらないのかも、って」
「…確かにね」
「だから、もう目的を探すのはやめる。今はただ…」
そう言いながら、リーヴは起き上がってセラと目を合わせる。
「セラと、いろんな場所にいきたい、な」
「リーヴ…」
セラは小さく呟いてから、リーヴを優しく抱きしめる。
「どう…したの。さっきも、やったでしょ?」
セラは何か感慨深さのような感情を覚えていた。出会った時は自分の意思などはほとんど無かったリーヴが、いつの間にか自らの望みを口にしていたからだ。ただ、その変化がセラによるものだという事を、セラは知らない。
「…何回でもやりたいものなの」
セラは少し遅れてリーヴの問いに答えるが、すぐに自分の発言の意味を理解してリーヴから離れる。
「あっ…!ち…違うよ?別に、あたしそんな…」
何が違うと言うのだろうか。
「ふふ。セラ、真っ赤。かわいい」
今度はリーヴの方から、セラを抱きしめにいく。
(リーヴ…優しいなぁ…あといい匂いする…)
(ふしぎ。セラとこうしてると、落ち着く)
2人はしばらく岩陰でイチャイチャした。
「さて…そろそろ、街を探そっか」
「うん。まぁ、ここに人が住んでるかは分からないけど」
一応、遠くの方に明かりが見える。2人はそれを目指して歩く事にした。程なくして、街の入り口に到着した…のだが。
「…なんか、へんな感じ」
「うん…なんだろうね、この…」
2人は街に着くなり、妙な違和感を覚えた。先に言っておくが、当然人は居る。それも、普通の街に居るような人数だ。その事実の脳内で再確認した瞬間、2人は違和感の正体に気がついた。
「「ああ!音が聞こえてこない!」」
そう。決して『閑静』とは呼べなさそうな数の人が往来しているというのに、一切の音が聞こえてこないのだ。行き交う人々の足音やその他の生活音どころか、人間の声すらも聞こえない。
「どういう…ことなんだろう。その辺の人はみんな、生きてる普通の人に見えるけど」
「リーヴ…さっき大声出しちゃったから、あたし達若干見られてるよ」
セラの言う通り、道行く人々がどこか焦ったような眼差しを2人に向けている。
「あそこ、いこ」
リーヴが指差した先は、建物の間の路地裏だった。2人はひとまずそこに移動して、現状の把握を試みる。
「うーん…なんでこんなに静かなんだろう?」
「皆、風邪でも引いてるのかな」
「何かの病気っていうのもありそうだけど…」
その時、リーヴがある事を閃く。
「もしかして…病気とか以外の、音をだせない理由があるんじゃ」
「確かに…さっきも、ただ目立ったって言うより…やっちゃいけない事をした人を見るみたいな目だったよね」
「考えてても、しかたがない。聞きにいこ」
「…そうだね。一応、音を立てないように」
2人は忍び足で路地裏を出た。




