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大宙の彷徨者  作者: Isel


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20/203

第20話 わたしだって

自分で書いておいて何だが

早く次の星行きたい

「ついた、ね」


セラが想定外の怪力を見せた時から1時間ほど歩いた頃、2人の目の前には木で出来た簡素な家が立ち並ぶ村が現れた。


「やっっと到着だぁ…疲れたねぇ…」

「うん…あつかったし、ね」

「そう遠くないってのは嘘だったのかなぁ」

「感覚は人それぞれ、だね」


と、ここでリーヴはある問題に気がつく。


「…そういえば、なんて説明すればいいんだろう」

「あ、それは大丈夫だと思うよ。村長さんが話をしてくれてるらしいから」

「違う星の間でも、おはなしできるんだ」

「発展度によるけどね。そんなに高度な技術でもないんだって。村長さんが言ってたよ」


2人は村の中を歩きながら、聞き込みをしてこの村の村長を探す。そして、村長の家は村の端の方にある

という事が分かった。


「ここだ、ね」

「思いっきり表札に『村長』って書いてあるね」

「聞き込みしなくても、3分くらいでこれたかもね」

「ね」


なんとなく微妙そうな顔をしながら、2人は目の前の扉を叩く。


「はい、どちら様ですか?」


家の中からは、極寒の星とは違って若い女性が出てきた。


「あ…もしかして、あの星のおじいちゃんが言ってた方々ですか?」

「多分…そうです」

「そうですか…!話は全て聞いています。本当に…ここの猛暑を何とかしてくださるのですか?」

「あの星とおなじ方法が通じるなら、だけどね」

「その点は大丈夫です。これをどうぞ」


女性は、ポケットから美しい青色の球体を取り出した。


「ご存じとは思いますが、一応説明を。これを放熱塔の動力源にぶつければ、放熱塔は活動を停止する…そのはずです」

「うん。この前とおなじ、だね」

「もう出発する?」

「そうしよ。あついし」

「今から行かれるのでしたら、これも持っていってください」


今度は、リーヴに紙が渡された。


「簡易的な地図です。ここからそう遠くはありませんが、極寒の星よりも入り組んでいる土地ですので」

「おお…ありがとう」

「じゃ、行こっか」


こうして、2人は村を出た。


「なんか、スムーズにいけるね」

「やる事は同じだからね」

「…」


その時、リーヴは何かを考えているかのような顔をしていた。

しばらくして…

「あ、みて。サボテン」


リーヴはサボテンを見つけた。


「本当だ。リーヴ、この細いやつは棘だから触っちゃダメだよ?」

「大丈夫。棘は、いたい。わたししってる」


リーヴは得意気に胸を張る。そんな2歳児でも自慢しないような知識を誇らしげに言われたところで、困惑するだけだ…が、セラは例外である。


「偉いねぇ」

「ふふん」


甘すぎだろう。


「そういえば…サボテンって食べられるんだよね」


セラは若干不安そうな目つきでリーヴを見つめる。


「むぅ…わたしをなんだとおもってるの」

「えっ?サボテンは食べようと思わないの?」

「おもわない。棘、いたい」

「へぇ…」


またしばらく歩いた頃、前方に塔が見えてきた。冷却塔と同じく途中で折れており、周囲には生物どころか植物すら1つも見当たらない。唯一幸いと言える要素は、冷却塔よりは全体の高さが低いという点だ。


「よし…行くよ、リーヴ」


セラが額に巻いたリボンを直して足を踏み出す…が、その時…


「まって、セラ」


リーヴがセラを呼び止めた。


「どうしたの?」

「えっと…」


「今回は、わたしだけで行きたい」


「えっ…!?」


セラは驚きを隠せなかった。塔の中には魔物が居るかもしれない。戦闘能力の無いリーヴが1人で行くなど、自殺行為に等しいからだ。


「な…なんで…?」

「わたしは、大変な事はいつもセラにやってもらってる。たまにはわたしもやらないと」

「でも…それがあたしの役目だし…」

「まだ、考えはあるよ。でも、ここはあつい。放熱塔を止めてから、ちゃんと理由を話すよ」


リーヴの目には淡い決意が宿っていた。それは、リーヴ自身も初めて感じるものだった。


「…うん、分かったよ。無理だけは…絶対しないでね」

「とうぜん。生きて帰ってくる、よ」


リーヴはセラに背を向けて、放熱塔の鋼鉄製の扉に手をかける。すると数秒ほどして、再びセラの元に帰ってくる。


「リーヴ?」

「ごめん、扉だけあけてほしい。おもかった」

「リーヴ…」


本当に1人で大丈夫だろうか。

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