第20話 わたしだって
自分で書いておいて何だが
早く次の星行きたい
「ついた、ね」
セラが想定外の怪力を見せた時から1時間ほど歩いた頃、2人の目の前には木で出来た簡素な家が立ち並ぶ村が現れた。
「やっっと到着だぁ…疲れたねぇ…」
「うん…あつかったし、ね」
「そう遠くないってのは嘘だったのかなぁ」
「感覚は人それぞれ、だね」
と、ここでリーヴはある問題に気がつく。
「…そういえば、なんて説明すればいいんだろう」
「あ、それは大丈夫だと思うよ。村長さんが話をしてくれてるらしいから」
「違う星の間でも、おはなしできるんだ」
「発展度によるけどね。そんなに高度な技術でもないんだって。村長さんが言ってたよ」
2人は村の中を歩きながら、聞き込みをしてこの村の村長を探す。そして、村長の家は村の端の方にある
という事が分かった。
「ここだ、ね」
「思いっきり表札に『村長』って書いてあるね」
「聞き込みしなくても、3分くらいでこれたかもね」
「ね」
なんとなく微妙そうな顔をしながら、2人は目の前の扉を叩く。
「はい、どちら様ですか?」
家の中からは、極寒の星とは違って若い女性が出てきた。
「あ…もしかして、あの星のおじいちゃんが言ってた方々ですか?」
「多分…そうです」
「そうですか…!話は全て聞いています。本当に…ここの猛暑を何とかしてくださるのですか?」
「あの星とおなじ方法が通じるなら、だけどね」
「その点は大丈夫です。これをどうぞ」
女性は、ポケットから美しい青色の球体を取り出した。
「ご存じとは思いますが、一応説明を。これを放熱塔の動力源にぶつければ、放熱塔は活動を停止する…そのはずです」
「うん。この前とおなじ、だね」
「もう出発する?」
「そうしよ。あついし」
「今から行かれるのでしたら、これも持っていってください」
今度は、リーヴに紙が渡された。
「簡易的な地図です。ここからそう遠くはありませんが、極寒の星よりも入り組んでいる土地ですので」
「おお…ありがとう」
「じゃ、行こっか」
こうして、2人は村を出た。
「なんか、スムーズにいけるね」
「やる事は同じだからね」
「…」
その時、リーヴは何かを考えているかのような顔をしていた。
しばらくして…
「あ、みて。サボテン」
リーヴはサボテンを見つけた。
「本当だ。リーヴ、この細いやつは棘だから触っちゃダメだよ?」
「大丈夫。棘は、いたい。わたししってる」
リーヴは得意気に胸を張る。そんな2歳児でも自慢しないような知識を誇らしげに言われたところで、困惑するだけだ…が、セラは例外である。
「偉いねぇ」
「ふふん」
甘すぎだろう。
「そういえば…サボテンって食べられるんだよね」
セラは若干不安そうな目つきでリーヴを見つめる。
「むぅ…わたしをなんだとおもってるの」
「えっ?サボテンは食べようと思わないの?」
「おもわない。棘、いたい」
「へぇ…」
またしばらく歩いた頃、前方に塔が見えてきた。冷却塔と同じく途中で折れており、周囲には生物どころか植物すら1つも見当たらない。唯一幸いと言える要素は、冷却塔よりは全体の高さが低いという点だ。
「よし…行くよ、リーヴ」
セラが額に巻いたリボンを直して足を踏み出す…が、その時…
「まって、セラ」
リーヴがセラを呼び止めた。
「どうしたの?」
「えっと…」
「今回は、わたしだけで行きたい」
「えっ…!?」
セラは驚きを隠せなかった。塔の中には魔物が居るかもしれない。戦闘能力の無いリーヴが1人で行くなど、自殺行為に等しいからだ。
「な…なんで…?」
「わたしは、大変な事はいつもセラにやってもらってる。たまにはわたしもやらないと」
「でも…それがあたしの役目だし…」
「まだ、考えはあるよ。でも、ここはあつい。放熱塔を止めてから、ちゃんと理由を話すよ」
リーヴの目には淡い決意が宿っていた。それは、リーヴ自身も初めて感じるものだった。
「…うん、分かったよ。無理だけは…絶対しないでね」
「とうぜん。生きて帰ってくる、よ」
リーヴはセラに背を向けて、放熱塔の鋼鉄製の扉に手をかける。すると数秒ほどして、再びセラの元に帰ってくる。
「リーヴ?」
「ごめん、扉だけあけてほしい。おもかった」
「リーヴ…」
本当に1人で大丈夫だろうか。




