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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第180話 死闘:殲滅の鉄騎

「言っておきますが、アナタ方が目にしてきた量産機のネメシスとは比べない方が良い。これはワタシが、ワタシの為に作った特別な機体ですので」


アノイトスの装甲からは、高音の魔力が蒸気となって溢れ出ている。先程までの文弱そうな学者はもう居ない。そこに居るのは、白銀の装甲を纏った戦士である。


「掃滅、開始」


ネメシスの脚部から炎が噴き出て推進力となり、アノイトスを前方に押し運ぶ。そして拳を後ろに引いて、溢れ出す炎と共にセラへ正拳突きを放った。セラの方は剣を交差させて何とか受け止めたが、受け止めた瞬間に拳から炎が炸裂した。


「重い……!」


当たり前だがネメシスは金属製だ。そんな鉄の塊が爆発と共に突っ込んで来るのだ。セラでなければ受け止めきれずに吹き飛ばされていただろう。


「セラさん後ろへ!」


仰け反ったセラと入れ替わるように飛び出したクオンが鎌を振り下ろすが、ネメシスの鋼鉄の腕がそれを受け止める。工場で聞こえてきそうな金属音と共に火花が散り、絵に描いたような鍔迫り合いが繰り広げられる。クオンが一撃毎に息を漏らしているのに対し、アノイトスからはそれが一切聞こえない。装甲の中にいるのだから当たり前かもしれないが、アノイトスの戦闘慣れしている事が分かるというのも事実である。


(この方は強い……私もある程度本気で挑まねば)


お互いの武器を弾き、2人は一旦距離を取る。そしてクオンは背後の空間を切り裂き、その裂け目から夜空のように真っ黒な闇を顕現させた。セイジェルの時と同じように、瞬く間に周囲が黒く染まっていく。


「ほう……これは確か、あの女(セイジェル)との戦いで使用していましたね」


普通なら多少なり焦るところだが、アノイトスは一切その様子を見せていない。


「その余裕も『死』の下に伏せさせます……!」


真っ暗な領域が広がっている中、クオンは4本の漆黒な刃を形成してアノイトスに降り注がせる。


「暗所ならば有利を取れると?浅はかですね」


ネメシスに暗視機能でも搭載してあるのか、アノイトスは交差する斬撃波を危なげなく回避していく。そして回避のついでに空中へ飛び上がり、そのまま背面から炎を噴射してクオンに飛び蹴りを喰らわせる。が、クオンも冷静に距離を保って回避する。


「神の手により下ろされた夜帳……叡智を以て焼き払いましょう!」


依然として立ち込める暗闇の中、アノイトスは身体を安定させられるように少し足を開いたかと思えば、背面から大量の熱線を発射した。それらは橙色の流星群のように暗闇を裂き進み、クオンを領域の中から退かせた。


「くっ……破られましたか」


主であるクオンが外に出た事により、暗闇の領域はひび割れて砕け散った。そしてその奥からは、烈火の中をアノイトスが歩いてくる。


「クオン!」


ようやく仲間の位置が掴めたセラは、クオンに駆け寄って隣に立つ。


「ふぅ……流石にワタシの部下を退けた者達なら、この程度の実力はありますか。……まさか侵入者相手にこの手を使うとは思いませんでしたよ」


ネメシスの装甲には多少傷が付きはしたものの、まだまだ万全に等しい状態だ。アノイトスは胸部の辺りに装着されている宝石のような物に手をかざし、機械的なエコーのかかった声で叫んだ。


「アクティベーション、アナイアレイト!」

「うわっ……」


その瞬間、胸部の宝石が紫色に輝き始め、周囲を怪しい色の光で覆った。


「何これ……ち、からが……抜けて…」

「気分が悪くなっていく……あの宝石のせいですか。私達の魔力を奪っているようですね」


全員の呼吸がどんどん弱くなっていく。極光の力の影響で身体が弱っているセラは特に辛そうだ。近くに居たセラとクオンはもちろん、離れていたアルシェンとリーヴまでその影響を受けている。とはいえリーヴはそのほとんどを無効化出来るので、他の3人よりは大分マシな状態だった。


「皆……わたしが、やらなきゃ」


実を言うと少しだけ気分が悪かったが、それでも責任感からリーヴは立ち上がった。


(気分悪いのを『無』くそうかと思ったけど……あれを止めないとだめ、だよね。なら、やっぱり……)


リーヴはアノイトスに目を向けた。彼はリーヴを危険視していないのか、襲ってくる気配が無い。その余裕によってリーヴは命拾いをしていたも同然なのだが、同時にそれがリーヴの恐怖に拍車をかけていた。


(どうしよう……わたしに、やれる……のかな)


焦りからリーヴの思考が加速し始めた時、彼女の肩に優しく手が添えられた。


「大丈夫ですよ……私が居ますから」

「クオン……でも、具合が…」

「平気……です。私はこれでも、神ですから……アノイトスさまの言っていた『神たる威光』……お見せして差し上げましょう」


いつぞや、リーヴのによって他人に触れられるようになったその手で、クオンはリーヴを落ち着かせていた。何度も何度も経験した事だが、やはり仲間の存在とは心強いものだ。リーヴはそんな気持ちを噛み締めたという。そしてその後、小さく頷いて決然と言った。


「……うん。やろう、わたし達で」

ボスキャラ解説

【神忌の智慧、殲滅の鉄騎】機神兵装 ネメシス=アノイトス

種族 人間

所属 W.C.P

異能 なし

今回使用した技

・爆拳:オーバーロード

→単なる火属性パンチ。ヒット時に爆発が発生する


・爆脚:プロミネンス

→火属性飛び蹴り。こちらもヒット時に爆発あり


・否定:神種の根絶

→自身を中心としたダメージフィールドを展開し、範囲内の生物の魔力を吸い続ける。魔力を吸われても別に死にはしないが、軽〜中程度の熱中症のような気分になる

概要

アノイトスが兵力として蓄えている機体「ネメシス」の改造機。量産機にはない特別な機能が多く搭載されており、当然ながら戦闘力も量産機とは比べ物にならない。ちなみに中に居るアノイトスは酷い運動不足な為、飛び蹴りなどの激しい運動をする度に彼の関節から音が鳴るとか鳴らないとか。

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