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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第179話 神滅:銀の装甲

長い弁論の果て、ようやくアノイトスとの戦闘が幕を開けた。アノイトスはリーヴ達に『神たる威厳を見せてみろ』と言っていた。つまりこの戦いは、手加減などせずに全力で挑む必要がある。中折れ式の特製銃を指に絡めて回転させ、アノイトスは銃口をクオンに向けた。


「誤謬を穿ちます」


その銃口からは金色の光を纏った魔力弾が放たれた。クオンは間一髪で回避が間に合ったが、次の瞬間には彼女の後頭部に銃創が出来ていた。額には小さな穴が貫通しており、色白なクオンの肌に赤い川が流れ出す。


「うっ……!」

「何で……!クオンは避けた筈なのに」

「……!リーヴ!」


戸惑っているリーヴを、セラが地面に伏せさせる。どうやらセラはそのカラクリに気づいているようだ。


「……多分、跳弾だよ」

「ちょう、だん?」

「壁に銃弾を反射させてるって事……本来なら普通の弾丸より威力が下がる筈なのに、人の身体を貫けるなんて……あの銃、かなり良い代物だよ」

「おや、知識が豊富ですね。流石ルミエイラの生き残りと言ったところでしょうか」


再びアノイトスは跳弾を放つ。そもそも狙い通りの対象に命中させる事自体かなり難しい筈なのだが、彼にはそれが出来ている。ネメシスを量産出来る技術力や頭脳だけでなく、射撃の才能もあるという事だろうか。


「な、何であたしの事……!」

「ウィズダムは逝去する前、己の知識を保存したデータベースのような物を遺しました。ワタシのモノクルはそこと繋がっており、知りたい情報をそこから引き出す事が出来るのです」

(ウィズダムが逝去……?本当ですか?)


回復を待っている間、クオンは心の中でデスに問いかける。すると彼女からは、こんな返答が返ってきた。


(うん。もうウィズダムは死んでる。『あの戦い』でね。眷属であるセイジェル達が死んでないのは、彼女らが『一から作られた眷属』じゃないから。人間の身体を元にして作られた眷属は耐久力が低い代わりに、他の機能とかに魔力を割けたり、主が死んでも生きていけたりするっていうメリットがあるんだよ)


また『あの戦い』というワードが出てきた。2度も聞かされては多少気になるので、クオンはデスに聞いてみた。


(あの戦いとは……一体何ですか?)

(フフ……それも旅の中で見つけてごらん?)


答える気は無いようだ。


(それより……女の子の顔に傷を付けるなんて、やんちゃな子だね。アタシが仕返ししてあげようか?)

「……いえ、平気です。あなたに頼ってばかりでは情けないですから」

(いい子。偉いね)


クオンの視線の先では、セラが弾丸の隙間を飛び回っている。アルシェンがバリアでセラを守り、ここでは出来る事がほとんど無いリーヴは後ろに下がってその様子を見ている。


「……援護しなければ」


クオンは1回転しながら大鎌を振り抜き、濃い紫色の巨大な斬撃を飛ばす。セラの脇を飛んでいった斬撃は床を抉りながら進んで行き、アノイトスの眼前まで迫る。


「良いでしょう、及第点です。さぁ、もっと頑張りなさい」


アノイトスはヒラリと斬撃を躱し、3発連続で跳弾を放った。


「リーヴ!アルシェン!」

「平気!アルシェンはわたしが守るから!」


リーヴの力強い声を聞いて、セラは目線をアノイトスに向け直す。丁度その時、クオンがアノイトスに向かって行っていた。偶然か必然か目の合った2人は、小さく頷いてアノイトスを挟み撃ちにする。


「ほう……考えましたね。ですがその程度予測済みです」


アノイトスは迷いなくセラに銃口を向け、その引き金に力を込める。彼は多少のダメージなど覚悟の上で、敵の戦力を確実に削ぐ事を選んだのだ。それを予想できていなかったセラは『しまった』と思いながら顔を歪める。と、その時……


「セラちゃん!」


アルシェンの起こした突風が瓦礫を巻き上げながら、アノイトスに衝突した。


「くっ……小賢しい」


一瞬でも怯んでしまえば、セラの前では命取りになる。かと言って後方に下がれば、そちらには死の魔力を纏ったクオンが居る。


「……フッ」


しかしこの状況でさえ、アノイトスは不敵な笑みを浮かべていた。その笑みをリーヴが認識した瞬間、セラとクオンの斬撃が交差して金と紫色の混じった爆発が起こった。セラは攻撃を当てた手応えを感じていたものの、これが致命打になるとは考えていなかった。一度距離を取って、クオンと共に武器を構え直したその時、土煙の中から声が聞こえてきた。


「やれやれ……やはり多勢に無勢で生身では無理がありますね」


機械的なエコーのかかったその声と同時に、アノイトスは土煙を勢いよく払い飛ばした。そこに立っていたのは今まで何度も見た()()()()、ネメシスだった。


「……ネメシス?」

「ええ、そうです。何を呆けているのですか?これからが本番……おっと、ありきたりな台詞を言ってしまいましたか」


アノイトスが纏っているネメシスの装甲。その関節部からは、内蔵された高音の魔力が蒸気となって溢れ出ていた。

今回出てきた技

アノイトス

・一式魔力弾

→マジでただの魔力弾


・三式魔力跳弾

→壁に反射しやすいように設計された弾丸。どうやって作ってるのかは企業秘密らしい

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