第19話 あついの、やだね
「「あっ…つぅぅ……」」
リーヴとセラが居るのは、昨日まで居た星とは正反対の灼熱の星だ。あの村の村長の話によれば、この気温の原因は冷却塔と同じ理由でこの星につくられた『放熱塔』というものらしい。つまり、極寒の星と同じような境遇という事だ。
「リーヴ…」
「なに…」
「しりとりしよ…」
「いいよ…」
「みかん…」
「かった…」
「負けた…」
こんな訳の分からない会話をするくらいには暑さで脳がやられているようだ。
「あたしの育った星より暑いよここ…」
2人は暑さのあまり、上着を脱いでインナーだけの状態で歩いている。セラは研究所で拾った圧縮袋(セラ命名)に服を入れ、リーヴは腰にパーカーを巻いている。
「あ、セラ…うしろ」
ほぼ軟体動物と化したリーヴがへにゃへにゃと指差した先には、2mほどの大きさの鳥の魔物が居た。1匹だけだが、翼には炎を纏っている。その炎を見た瞬間、暑さによって募ったセラの苛立ちが爆発する。
「今そんなの見せないで!」
セラは振り返りすらせずに、自身の後方に大きな光芒を落として鳥を焼き尽くした。鳥は断末魔を上げる間もなく、跡形も残さず消滅した。
「ふぅ…ちょっとすっきりした」
(…セラはおこらせないようにしよう)
リーヴが心の中で決意した時、リーヴより少し前を歩いていたセラが声を上げた。
「あ、リーヴ。看板みたいなのがあるよ」
2人の前方には、左向きの矢印と共に『村』とだけ書かれた看板があった。
「ほんとだ。…なるほど。この看板に書いてある方向にいけば、人に会えるってことだね」
「あの星の村長さんが言うには、こっちの星にも村は1つしか無いらしいね」
「じゃあ、この看板に従おう」
2人はその矢印に従って、赤みを帯びた大地を歩んでいく。が、旅に問題は付き物である。
「これは…」
しばらく歩いた頃、2人は左右を崖で囲まれた一本道に差し掛かった。だが、その唯一の道が落石で塞がれているのだ。
「べつの道、探す?」
「うーん…周りも似たような風景だから、それだと道が分からなくなっちゃうかも…」
「どう、しよっか」
「…あんまりやりたくなかったけど…仕方ないか」
セラが小さなため息を吐く。
「リーヴ、ちょっと離れてて」
「なに、するの?」
「見てれば分かるよ」
セラに言われた通り、リーヴは少しだけセラから離れる。それを確認したセラは落石と向き合って拳を握ると、その拳を思いっきり振り抜いて、道を塞いでいた落石を粉々に殴り砕いた。その光景を見た衝撃で、リーヴは開いた口が塞がらなくなる。
「セラ…意外と力もちなんだ、ね」
「やっぱりリーヴもそう思うんだ…皆出来るものじゃないのかなぁ」
「できない、できないよ。とても」
「普通の人はそうなんだ…なら、なんであたしはこんな事が出来るんだろう」
「…セラの生まれた場所とかと、関係あるのかな。なにか覚えてたりしない、の?」
「ほとんど何も覚えてないんだ。あの砂漠の星で生まれた訳じゃないって事くらいしか覚えてなくて…」
「そっか。なら、いつか行けるといいね。セラの故郷」
「…うん」
2人は、再び落石の残骸が残る道を歩き始めた。
やる事自体は極寒の星とほぼ同じですが、流石に展開まで同じにはしないので安心してください




