第166話 意外な再会
豆知識
クオンちゃんは勉強が好きです
旅団入りした今でも、誰か教えを乞える人が居ればその人を師としたい
なんて考えたりしています
「流離、と幻……なにしてる、の?」
「それはこちらの台詞だ。お前達は何の用でここに?」
「えっと、ね」
リーヴはこの星に来た経緯を簡潔に説明した。
「なるほど、六芒星か……それなら、俺達の用とも似ているな」
流離はそう言って、自分達がここに来た理由を話し始めた。
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2日前、とある星にて。人混みを嫌う流離の要望で、流離と幻は街の外で野宿をしていた。夕食も済ませてこれから眠ろうという時、何かが飛んで来るような音が2人の耳に入ってきた。
「……?来客か?」
なら何で空から来るん。
「ん……流離…?そこの人達は?」
空から降りて来たのは、人の形をした3つの銀色の装甲だった。中に誰か入っているのだろうか。彼ら(?)は目の前の流離ではなく幻の方に目線を向け、機械的な声で言う。
「神種を発見。討伐開始」
「は?」
そして3体は同時に襲いかかってきた。が、狙う相手が悪かった。
「全く……睡眠の邪魔をするな」
流離はその内2体を斬り砕き、最後の1体はなんと素手で殴って破壊した。一応金属か何かで作られている筈なのだが。ともかく装甲達は沈黙したのだが、流離は彼らを斬った際に何か違和感を覚えたようだ。
「流離、ありがとう。平気?」
「ああ。それより……人間じゃないな」
「え?」
「今の奴ら、中に人が入っていなかった。奴らは自律式の兵器という事だろう」
「そう……どうして私達を狙ったのかしら」
「狙われたのはお前だけだ。言っていただろう、『神種を発見』とかな」
睡眠を邪魔されたせいか、流離は少し機嫌悪そうに装甲の残骸を漁っている。そのすぐ後、彼は気になる文字を装甲の内部に見つけた。
「『W.C.P』……?」
「それは……何だったかしら」
「詳しくは知らないが、俺が知る限りは様々な星に支部を持つ一大企業だ。医療、工業、魔力……様々な分野に秀でているらしい」
「ああ、思い出したわ。行く先々で看板を見るから、この前少し調べて見たの。けど……だとしたらおかしい点があるの」
「何がだ」
「六芒星……って知ってるかしら」
「ああ。各地で神を狩っているらしい組織だろう?」
「そうよ。神を狩るなんて真似、六芒星の仕業以外考えられない……なら、W.C.Pは六芒星の傘下という事になるわ」
「何がおかしいんだ?」
「そもそもW.C.Pのフルネームは『ウィズダム・コーポレーション』よ。ウィズダムという名前が何なのか知ってる?」
すっかり眠気の覚めてしまった2人は、夜の荒野で話し込んでいる。
「さぁな。俺は俺の死以外に関心を向けた事が無い」
「ウィズダムというのは『知恵』の概念種の名前……単なる勘だけど、W.C.Pとウィズダムには何か関係がある気がするの。でなければ、わざわざ知恵の概念種の名前を社名にしたりしないでしょう?」
多少こじつけのようにも感じ取れるが、幻の言う通りW.C.Pとウィズダムに関係が無いようには思えない。そもそも、特定の神、ないしは概念種と直接的な関連がある組織というのは事実存在している。それこそ流離がかつて所属していた『赤月の使徒』がそうだろう。その例から考えれば、W.C.Pに所属する一部の者はウィズダムから力を与えられているかもしれない。
「……なるほどな。神の一種……奴らが言うところの『神種』に属する者と関連がある組織が、何故神種を狩る組織に属しているのか。そう言いたいんだな?」
「ええ。それに……考えていくうちに、何か段々良くない予感がしてきたの」
「……素直に言えば良い物を。行くぞ、W.C.Pの下に。どのみち機体が破壊されたのは知られてるだろう。大勢で押しかけられても面倒だからな」
そうして、2人は今に至るという。
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「……で、俺達は早速社内に行こうとしたんだが…」
「この前の襲撃で顔を見られたのかしら。入り口で銃撃されてしまったの」
「なるほど。だから顔隠してたんだ」
リーヴは納得したように頷いている。
「お前達も目的は同じなのだろう?ならば今再び、共闘するのはどうだ?」
「うん。いいよ。ありがとう」
「流離達が仲間になってくれるのは嬉しいけど……W.C.Pって六芒星の傘下だったんだ」
「私は……意外ではありませんでしたが。あの組織にはディスガーさんのような忠誠心を持たない幹部も居るくらいですし、何かの事情があって私達に協力してくれるという事かもしれません」
だとしたら幹部の中に裏切り者が2人って事になるんだがな。放っといても滅びるんじゃないか。
「……そうは行かないのが《この世界》だろう?」
流離は諦めたような表情を《こちら》に向け、すぐリーヴ達の方に向き直った。
「なら、とにかく行ってみよう。人手も増えた事だ、何かやれる事も増えているかもしれない」
そうして、6人は前半に見える大きな建物を目指して歩き出した。




