第165話 はいてくのろじー
リーヴは珍しく考え事をしていた。ディスガーから聞いた、六芒星の野望についてである。
(六芒星……神を狩って、よくわからない存在の復活のために動いてる組織……そういえば最近神に出会わないけど、それも六芒星のせいなのかな)
そんな時、リーヴの中に1つの疑問が思い浮かんだ。自室のベッドに寝転んでは、天井を見上げながら考え込んでいる。
(……そもそもなんで、神は『神』って名前なんだろう。みんなは何とも思ってないっぽいけど、この前読んだ歴史の本では、『神』っていう言葉は元々すごい格上の存在のことを言ってるらしかった。でも……クオンは確かに強いけど、格上の存在かって言われたらそうでもない、よね……なんなら概念種とかの方が、格上って感じするし……)
ディスガーは六芒星の野望を阻止するに当たって、手助けになるかもしれない人物が居ると言っていた。フォルティから聞いたのか、リーヴの能力の事も知っていた為、ちゃんとその人物が居る星の写真もくれた。あとは仲間達に相談をするだけだ。
「ね、みんな。話があるんだけど」
リーヴは居間に居るセラ達の下に向かい、六芒星に関する自分の考えを話した。
「……っていうのが、この前ディスガーからきいた話だった、よね」
「うん。ちゃんと覚えてるよ」
「それで、ね。この宇宙を旅する人として、わたしは何か危ないことが起こりそうなら、それを止めたい、の。えっと……みんなも、手伝ってくれる?」
リーヴはしどろもどろながらも、しっかりと自分の意見を伝えた。
「あたしはいいよ。君を守るのが、あたしの目的でもあるから」
「私も構いません。聞いた噂だけでも、六芒星はかなり危険な組織……私達が対処出来るのなら、そうするべきでしょう」
「わたしも同じ意見です!みんなで宇宙を救いましょう!」
「みんな……ふふ。ありがとう」
アルシェンの六芒星に対する認識が壮大過ぎるのは置いておいて、とりあえず意見はまとまったようだ。
「じゃあ、今からでも出発する?ディスガーが、協力してくれるかもしれない人の場所、教えてくれた」
「そんな話もしてたね。予定も無いし行こっか」
そして、4人はディスガーに渡された写真の星へ向かった。
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いつも通りにトンネルを抜けると、そこには今までに無い程の近未来的な光景が広がっていた。車が空を飛び、警備用と思われる武装した人型の機械が街中を闊歩し、街の至る所にネオンサインが散りばめられている。時刻が昼である事も相まって、かなりの眩しさだ。
「おお……きらきら。セラみたい」
「あたしってあんなに光ってるの……?」
「どこを目指せば良いのですか?」
「……あっ。写真の裏に書いてありますよ!どれどれ……『1番目立つ大きな建物に居る』らしいです!」
「大きな建物……あれですかね」
クオンが目線を向けた先には、街に建っている居住ビルとは比べ物にならない程の大きさの建物が建っていた。壁面には大きく『W.C.P』という文字が刻まれている。
「すごい、ね。まさに『はいてくのろじー』」
「リーヴ、本当に色んな言葉覚えたよね」
「ふふん。ほめてほめて」
微笑みと共に褒められて嬉しくなったのか、リーヴはセラに頬ずりしている。
「わっ……そ、それは家でしかやらないでよ……」
「セラのほっぺ、すべすべ。たのしい」
「あら……ふふ」
クオンは微笑ましそうにその様子を見ている。アルシェンも同様だったが、ふと辺りを見回した時に意外な人物を発見したようだ。
「……あれ?あの人達、もしかして…」
アルシェンは視線の先にいる2人組を向いて目を凝らしている。その2人組は建物の影に隠れるように立っており、揃って顔を隠すようなフードを被っている。やがて疑念が確信に変わったのか、アルシェンは急いでその2人の下に走っていく。
「……やっぱり!るー君と幻ちゃんですよ!」
「「えっ?」」
今の今までイチャイチャしていたリーヴとセラは、首だけをアルシェンの声の方に向けて声を漏らす。
「……何でお前達がここに居るんだ」
「あら?リーヴ達じゃない、久しぶりね!」
フードを外した2人組の素顔は、リーヴ達もとうに見慣れた顔。2人組の正体は夢の概念種である幻と(元)赤月の使徒、流離だった。




