第161話 邂逅
「……なるほど。そんな経緯で…」
随分と長い間昔話をしていた2人は、一旦足を止めて語り合っていた。
「悪かったね。事情も知らず、一方的に憎んで」
「謝罪なんざ要らねえ。思えば俺の方こそ、もっとアンタらを信用するべきだった。アンタらならきっと……例え星を敵に回してでも、俺と戦ってくれただろうにな」
フォルティはいつにも増して穏やかな口調で言った。
「ふぅ。湿っぽい話は止めにしようぜ?もうすぐ黒幕とのご対面だしな」
「ああ……交戦用意を」
フォルティは煙草を握り潰して鎌を構え、ディスガーは首元のネクタイを締めて短剣を取り出した。2人が茂みを抜けて広い荒野に出ると、少し遠くの方に笛を吹いている男が居た。何やら魔法使いのような尖った帽子を被っており、胡座をかいて絶えず笛を鳴らしている。
「居たね。やはり……元凶は彼だったか」
「あれがエルメーダとかいう奴か」
「ああ。僕の知る限りでは本体はそれほど強くないが、手数の多さは厄介だ。舐めてかかると痛い目を見るぞ」
「ハッ、誰に物言ってやがる」
2人は仲が良いのか分かりにくいやり取りをしながらエルメーダに近づいていく。フォルティもディスガーも、かつて肩を並べて戦っていた頃の気持ちが蘇りつつあったのだ。
「なっ……貴様はディスガー!何故この星に……!」
隠れもせずに堂々と接近してくる2人に気づいたのか、エルメーダは取り乱す。
「故郷に居る事の何が悪い?それより、君は僕の故郷に随分と迷惑をかけてくれているね。君が魔物を増やしているせいで、この星は土地の開拓も進んでいないんだ。戦争という手段は誰かさんのせいで断たれてしまったから、この星の資源だけで日々を食い繋ぐしかないと言うのに……」
(手段断ったのはテメェだろ)
フォルティは苦笑いしながら内心で呟く。
「それがどうした?我ら六芒星の宿願の為だろう、多少の犠牲を厭っている場合ではない」
「全く……まだあんな事を実現させようとしているのかい?馬鹿馬鹿しい……神を狩ってその魔力を集め、『奴』を復活させるだなんて……我らが首魁は余程の阿呆なのだろうね」
「さっきから聞いていればその言動……まさかとは思うが裏切るつもりか?」
「裏切り?とんでもない……僕はハナから、君達の仲間になった覚えはないんだがね」
ディスガーはその台詞と同時に、エルメーダに向けて発砲した。それ以上は何も言われなかったが、これが事実上の開戦の合図なのだとエルメーダは受け取った。
「そうかそうか……ならば死ね!数こそが最大の力だとその身に教え込んでやろう!」
「ありきたりな品の無い台詞だ……」
エルメーダは後ろに跳んで距離を取り、笛を鳴らして大量の魔物を作り出した。
「多くねえか?」
「あんな物さ。それよりフォルティ、どっちが本体を叩く?」
「そりゃお前、そんなの定番の『アレ』で決めるに決まってんだろ」
「フッ……やはりな」
ディスガーは迫り来る魔物の大群にも臆せずに、影の中からリボルバー銃を取り出した。そして適当な位置に3発だけ弾を込めて、シリンダーを軽く回転させる。
「アリだ」
「ナシだね」
2人がほぼ同時に言った直後、ディスガーは正面の魔物1体に向かって引き金を引いた。すると鋼の弾丸が魔物の眉間を貫き、魔物は煙のように姿を変えて消滅した。
「……決まりだな」
「ああ。今回は譲るよ」
フォルティは足に力を込め、魔物の群れを飛び越して一気にエルメーダの方へ跳んでいった。
「さて……消えてもらうとしようか」
2人の故郷を守る戦いの火蓋が切って落とされた。
ボスキャラ解説
【吹笛のパペットマスター】エルメーダ
種族 ?
所属 六芒星
異能 魔物を生み出し、使役する能力
概要
アルテミシアに大量の魔物を仕向けていた張本人。種族に関しては後々のストーリーで明かされます。ちなみに本体はクソ弱いです。総合的にも多分六芒星の中で最弱です。




