第?話 翳り、濁り、交わらず
見りゃ分かると思いますが、今回は私的に慣れない一人称視点です
その上途中で視点変更があります
頑張ってください
俺達は物心ついた頃から一緒に居た。俺、フォルティとディスガー、そしてアリーナ。特に何があった訳じゃない。ただ家が近かっただけだ。俺達は初めて会った時からすぐに仲を深めた。そして、3人とも同じ目標を持っていた。
前にも言ったが、アルテミシアは所謂自給自足ってやつが出来ねえ。作物は育たねえわ家畜はどこにも居ねえわで、アルテミシア人は明日どころか今日食う物にすら困ってる。だからこの星には、他の星に戦争を仕掛けては食料を中心とした物資を略奪して来る『遠征隊』が居る。俺達は3人揃って、そこに入る事を目標としていた。だが勘違いはするな。俺もディスガーもアリーナも、決して略奪がしたかった訳じゃない。自分を、そして家族や仲間を食わせる為には、そうするしかなかったんだ。
16歳になった年の春、俺達は遠征隊の入隊試験を受けた。試験自体は楽勝だった。当たり前だろ、この為に十何年も勉強とトレーニングを続けて来たんだからな。
「試験、楽勝だったな」
試験が終わって帰路に着いた時、俺は2人に言った。何度も言ってるから分かると思うが、その日は春だってのに桜の1つも咲いちゃいなかった。まあ当時の俺はどうとも思ってなかったが。
「ああ、過去問を何度も解いた甲斐があったな」
「本当本当!ていうか楽勝とか言ってるけど……筆記に関してはフォルティが1番危なかったんじゃないの〜?」
アリーナが一歩前に進み出て、俺を揶揄うように言った。生まれつきの病気……漸衰病のせいで白くなりかけた髪が風に靡いていた。
「舐めんじゃねえ。ガキの頃から知育菓子作ってたんだぞ」
「よりにもよって信頼しているのが知育菓子とは……」
「フォルティって意外と子供っぽいよね」
「うるせぇ。テメェら実技はどうだったんだよ」
「そっちも楽勝さ。油断しなければ落ちる奴なんて居ないね」
「ディスガーに同意〜」
俺達はいつもこんな調子だった。そりゃ偶には喧嘩する事もあったが、それでも1日経てば仲直りしてた。こういう言葉は好きじゃねえが……俺達の間には絆ってやつがあったのかもな。
それから俺達は遠征隊に入隊した。俺とアリーナは他星に向かって戦う遠征部隊。ディスガーは元々手先が器用だったのを活かして、兵器開発部に入った。昔から武器とか好きだったからな、何も意外じゃねえ。
「正直、肩並べて戦えねえのは少し残念だがな」
「私も。ディスガーだけ仲間外れみたいで、ちょっとね……
「僕は気にしないさ。第一、僕は血の匂いが嫌いだ。後方支援が性に合ってる」
それから俺達は訓練を積んだ。ほぼ実戦に近い形の訓練もだ。同じ部隊……俺が居たのは第1遠征部隊って名前なんだが、そこの先輩に聞いた。どうやら遠征は月に1〜2回行うらしい。それは別に良いんだが、先輩は何やら気になる事を言っていた。
「兵器部の奴らの面倒も見てやれよ?あいつらは俺達と比べて、実戦経験が少なめだからな」
「は?そりゃ……どういう事っすか」
「ああ、お前は新入りだから知らないのか。アルテミシアは物資だけじゃなくて人員も足りなくてな。軍都の防衛隊以外の隊員は兵器開発部も含めて全員戦地に赴くんだ」
「へぇ〜……マジすか」
まぁ正直それはどうでもよかった。いくらディスガーが血嫌いだからと言って、軍隊に入っておいてそれを言い訳に出撃を避ける訳にはいかないだろ。あいつだって覚悟は出来てる筈だ。
そしてしばらくしたある日、遂に初任務がやって来た。俺はディスガー、アリーナと一緒に、移動に使う船みてえなのに乗った。俺とアリーナは汎用のナイフと突撃銃、ディスガーは同じナイフと狙撃銃を装備してた。
「ハァ……結局僕も行くのか」
「仕方ねえだろ。星の為だ」
「2人とも、出発するって!転ばないようにね!」
その直後、でかい音と揺れが俺達を襲った。最初は何か異常が起きたのかと思ったが、どうやらこれが正常らしい。他の隊員は変わらず談笑を続けていた。
数分後、俺達は目的地の星に辿り着いた。そして船が着陸するや否や、隊長達の号令と隊員の足音が轟いた。そして現地の人間と交戦が始まった。俺はいつもの3人と行動を共にしていた。理由は『殺しは最低限にしよう』と、俺達の間で予め決めていたからだ。俺達の目的はあくまでも物資だ、殺戮じゃねえ。
「ふぅ……殺さねえようにってのも、案外難しいもんだな」
「抵抗するのは当たり前の事だからね。あまり気にするな、生きる為さ」
ディスガーは遠回しに慰めてくれはしたが、それでも殺生はそう簡単には受け入れられねえ。だがそこまで忌避する程でもねえ。何とか物資を掻き集め、俺達は船に戻った。入り口が閉まって帰還の準備をしている時、俺はふとある事が気になった。
「……あ?」
「どうした?フォルティ」
「いや何か……数、減ってねえか」
「現地民の抵抗を受けて死んだのでは?」
「今回の奴らは武器持ってなかったろ。完全武装の軍人が殺られるか?」
そんな事を話していると、俺達の後ろからあの先輩が現れた。
「……裏切ったんだよ」
「は?」
「何のつもりかは知らないが、我々を裏切って味方を撃ち始めた者が居た。幸いその者は既に射殺されたが……全く迷惑な話だ」
ぶつぶつと言いながら、先輩は船の奥に行った。俺とディスガーとアリーナは顔を見合わせる。
「……だとよ」
「裏切るとは……何の意味があっての事だろうね」
「……1個、心当たりがあるんだけど」
「あ?」
「その……ずっと考えないようにしてたけど……私達がやってる事って、決して良い事じゃない…よね。もしかしたらその人は、それに耐えられなくなったんじゃ……」
一理はあった。いや一理どころか十理くらいあった。本当は俺だって分かってる、ディスガーもそうだ。だが俺の返答は……
「……関係ねえ。どんな良心の呵責があろうが、仲間を撃つのは違えだろうが。俺は裏切りが、嘘と隠し事と同じくらい嫌いだ。俺はそいつを軽蔑するぜ」
「まぁフォルティ程ではないが、僕も概ね同意見だ。僕らの戦いは生きる為の物……そこに善悪を持ち込むのはナンセンスだよ」
「そっ……か。そうだよね」
アリーナが納得行ってないのは分かってた。それが俺の異能だからだ。だが俺はもう何も言わなかった。ディスガーの言った通り……生きる為の行動に、善悪の話を持ち込むのはアホのやる事だからな。
ーーーーー
俺達の初陣から2年の時が経った。遠征の頻度の都合上、隊員の入れ替わりやそれに伴う地位の移動も結構な頻度である。俺は所属していた第1遠征部隊の隊長に、アリーナはその副隊長に、ディスガーは兵器開発部の最高責任者になっていた。更にディスガーは『星間移動装置』とかいうやつを発明してた。どうやら座標を入れて潜るだけで、他の星に行けるっつう優れ物らしい。『何で作ったのか』を聞いたところ……
「遠征の度にあんな揺れを味わうのは御免さ。もっとスマートに行こう」
それがスマートかどうかは置いておくとして、とにかくディスガーは技術系統の才能があったらしい。その他にも様々な兵器や武器を開発していた。俺が今使ってる変形式の大鎌もディスガーの発明だ。
遠征にも大分慣れて来た。最初のうちは出発前に一言二言発する程度だったが、今ではあの時の先輩隊員達のように談笑出来るようになった。例えば……
「おいディスガー。またそんな大量の弾薬を持ってくのか?自分の腕に自信ってのは無えのかよ?」
「ハァ……何度言えば分かる?僕は自分の腕を信頼しているさ、『99%』ね。だからこそ、残りの『1%』は保険で埋めておくのだよ」
「分っかんねえんだよなぁ。腕に自信があんならそれこそ1発で決めろっての」
こんな調子で会話する事が多かった。そしてまた、俺達は目的地の星に降り立った。今は俺が隊を率いる側だ、俺は部下を指揮しながら突撃した。今回の星はかなり繁栄しているようで、物資が潤沢にあった。
俺は常日頃から、せめて自分の隊の奴には不殺を命じて来た。最初は不満も一部あったが、そこは2年の間に培った人望でどうにかした。俺はガキの頃から目つきが怖えって言われて来た。隊員達も少なからずそう思ってるらしかったから、俺は自分の部下には可能な限り優しくして来た。そのつもりだ。そうすれば俺の指示を聞く奴が増えると思ったんだ。だがそれは間違いだった。結果論だが、そんな無駄な温情なんて抱くんじゃなかった。だからあんな事が起こったんだ。
「隊長になってからあいつらと動く機会無くなったよな……」
そんな呟きを溢しながら、俺は瓦礫の山に成り果てた街を歩いていた。撤収の時間になっても戻らない隊員が居たからだ。死んだのかとも考えたが、そいつらが身に着けてる発信機は生きてるから生死確認はしとこうと思って、俺は街の奥の方へ向かった。
「ここか……こんなボロい家で何やってんだ?何も残っちゃいなそうだが……」
俺は歪んだ木製の扉を開けて中に入った。今思えば、あれさえ無ければ俺達は今も3人で戦ってたのかもしれない。
「何……してんだ、アンタら……」
中に入ってまず目に入ったのは、服とすら呼べねえくらいボロボロの服を着てる数人の若い女だった。そして次に、その前に立つ青髪と黒髪をした2人の隊員が目に入った。ここまでだったら、単に『捕虜を監視してる内に撤収時間を忘れてた』で説明出来ただろうな。だが現実は違った。詳細を話せば不快なだけだから敢えて表現は曖昧にするが、遅れた隊員は2人ともズボンのベルトを外していた。……そういう事だ。
「隊長……」
今正に『それ』をしようとしていたところなのだろう。隊員の1人……青髪の奴がこっちを振り向いた。普通だったら多少なり焦る場面だろう。だが、俺はこの時初めて自分の行動を悔いる事になった。そいつはヘラヘラと笑いながら俺の方に寄ってきた。
「隊長もどうっすか?星の為に頑張ってんだし……ちょっとくらいご褒美、あったっていいでしょ?」
「何言ってやがんだ……見なかった事にしてやるから、とっとと戻るぞ」
「いやいや、隊長も『溜まって』るでしょ?すぐですから、一緒にやりましょうよ」
「……知らない訳じゃねえだろ?こういう行為は所謂『外道』ってやつだ。発散してえならそれ専門の店に行け、こんな立場でも力でも劣る奴相手にする事じゃねえ」
俺は込み上げる吐き気を堪えながら、そいつらを諭した。俺が隊長である以上、俺には隊員の面倒を見る義務と責任がある。間違った道を行こうとしてるなら正さなきゃならねえ。そう思ったんだ。だがそいつらの返答は……
「……今更善人を気取るんすか?」
「あ?」
青髪は言った。
「他の星に侵入して、住民殺して、物資奪って……そんな事やってるクセに、何良い人ぶってんですか」
「殺してって……俺は言った筈だ。『極力住民は殺すな』って……」
「本気で守るとでも思ってんですか?そんな口約束を。隊長、1つ教えてあげますよ。アンタは慕われてるんじゃない、舐められてるんすよ」
「俺が……?」
「何かの秩序になる人間ってのは、冷酷で厳粛じゃなきゃいけない……なのにアンタは、訓練に遅れた奴を罰しもしない、どんな暴言吐かれても何も言わない、その他諸々の規律違反も咎めない……そりゃ舐められるっすよ」
「だからって……それとこれとは話が違うだろうが」
「分からないっすか?俺達はね、覚悟があるんすよ。生きる為に悪人になる覚悟が。ある種『吹っ切れてる』とでも言うんすかね?アンタはどうだ?その覚悟があるんすか?」
青髪の目はさっきより真剣だった。恐らくこれはただの言い逃れじゃない、こいつなりの考え方なんだろう。
俺は真っ先にその台詞を詭弁だと感じた。何が覚悟だ、結局は『生きる為』って言葉を口実にして私欲を尽くしているだけだろうが。そして、次の瞬間俺は気づいちまった。俺自身もその組織の一員なんだ。俺達の都合なんざ、奪われた側が知る訳もねえ。それどころか、俺達以外の誰も知らねえだろう。つまりだ。俺が今まで自分達の『正義』だと信じてして来た事は、
ただの虐殺と掠奪だ。
この2年間、『生きる為』に食料や資源を奪って来た。『生きる為』に抵抗してくる奴は殺した。そうしなければ死ぬからだ。俺はあの日から、初めて『生きる為』に戦った日から、とっくに悪人だったんだ。あの時、あの初陣の日、アリーナの言っていた推測は正しかったんだろう。気持ちはよく分かる。説得なんか無理だもんな。1人でも多く殺して、これ以上被害が増えないようにするしか無えもんな。
ああ、やる事は決まった。
「隊長?どうし」
俺は迷わず大鎌を構え、青髪の首を刈り飛ばした。隣で無言のまま俺を見つめていた黒髪の方も、顔面を殴り潰して殺した。
「あ……ああ…」
捕虜達が怯えている。そうだろうな、訳が分からないだろう。だから俺は言った。
「失せろ。死体の数が増えるぞ」
捕虜達は怯えながら、バタバタと逃げていった。
この時、俺はもうアルテミシアには戻らないと決めた。どのみち隊員を殺してるしな。宇宙は広い、アルテミシアみてえな事をしてる星は他にもあるだろう。この星だけでも戦争から守る。だが舐められるつもりは無え。善人を気取るつもりも無え。悪人として星を守る。もう同じ轍は踏まねえ。道を踏み外した奴は、誰だろうが『処刑』してやる。
◇◇◇◇
フォルティはある日を境に姿を消した。丁度、物資が豊富にある星に行った日からだ。アリーナは焦りに焦って、軍都中を駆け回ってフォルティを探した。だが当然彼が見つかる事は無く、次第にアリーナは訓練にも集中出来なくなっていった。そんな状態で遠征に行けばどうなるか、結果は見えている。だから僕は、2人で軍都の防衛隊に転属する事を提案した。
「転属……それが正解なのかもしれないけど……」
アリーナは返答を濁していた。大方、色々な星に遠征すればそのどこかでフォルティを見つけられるかもしれないと考えたのだろう。
「……彼はいつか帰ってくるさ。その時の為、彼の帰る場所を守るのも……僕達の役目だろう?」
「……うん」
本音を言えば、僕だってフォルティを探しに行きたかった。彼が万が一戦死していたらと思うと、仰向けで寝る事も難しかった。彼だってアリーナと同じ、大切な親友なのだから。だがその想いをどうにか堪えて、僕はアリーナを説得した。
アリーナの元気が無いのは、何もフォルティの失踪の影響だけではない。彼女の漸衰病が進行しているのだ。結局僕達2人は防衛隊に転属し、不定期に押し寄せる魔物の群れから軍都を守る事になった。
人間を相手に戦っていた経験は魔物相手でも活かす事が出来、これなら憔悴したアリーナでも何とかやっていけるだろうと思った。
ーーーーー
数ヶ月後、僕達はいつもの通り魔物の群れと交戦していた。僕が後衛でアリーナが前衛。これもいつも通りだ。この日は魔物の量が少し多かったが、問題無く対処出来る……そう思っていた。
前線で魔物を片付けていたアリーナは、病が故か途中でふらついた。そして彼女の身体がよろよろと横向きに傾いた瞬間……味方の流れ弾が彼女の足を貫いた。
「うっ……!」
「…!アリーナ!」
僕が武器を投げ捨ててでもアリーナの元へ駆け寄ったのは、第2の流れ弾を警戒した訳じゃない。蹲る彼女の正面に、巨大な獣人の姿をした魔物が居たからだ。
「あ……」
アリーナは危険を察したのか、震える手を背後に伸ばしていた。しかし僕がその手を取れる筈も無く……
アリーナは胴体を引き裂かれて死亡した。
「ア……リーナ」
別に誰が悪い訳でもないだろう。流れ弾の主を咎める気は無い。かと言って、彼女のカバーを出来なかった僕自身を責める気も起きない。戦争によって、僕も大概歪んだのかもしれないな。幼馴染が死んだと言うのに……涙の1つも流せないのだから。
彼女の死から数日後、僕は遠征隊の本部に向かって歩いていた。
(フォルティ……君が居てくれれば、もしかしたら……)
当然、その場に居なかったのだからフォルティを憎むつもりもなかった。ただ、アリーナという親友の死は、どうにかしてフォルティに伝えなければならない気がしたんだ。僕はとりあえず何かしらの情報を求めて、遠征隊の斥候部隊を尋ねた。彼らは斥候、諜報活動の他にも、戦死者の情報や遺品、軍内部で起こった事件の記録を保管していたりもする。
「失礼、僕の顔はまだ覚えられているかな?」
不思議だった。親友が2人も側を離れたというのに、僕は未だ笑顔を作る事が出来る。その作り笑顔に見覚えがあったのか、部屋の中に居た1人の青年が僕の方に駆け寄って来た。
「ディスガーさんですね。覚えていますよ、兵器部で数々の功績を挙げたって噂ですから」
「それは光栄だね。いきなりで申し訳ないが、ある隊員の情報を見たくてね。大丈夫かい?」
「はい、構いません。何と言う名前の方でしょうか?」
「フォルティ、というんだが」
その名前を出した途端、青年の顔が曇った。
「……どうかしたかい?」
「あ、いえ……どうぞ」
ここに保管されている情報のファイルは、内容毎に色が分けられている。例えば『事件』は赤色、『偵察結果』は青色、『死者の個人情報』は黄色だ。僕は青年に手渡されたファイルの色を見て目を疑った。そのファイルの色は赤色だったのだ。
「彼……何か事件を?」
「はい……もしかして、お知り合いですか?」
「ああ……」
僕はそう言いながらファイルを開き、『概要』と書かれているページを見た。
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隊員番号563548 第1遠征部隊隊長 フォルティ=エグゼクト
新星暦4652年 5月25日
・遠征先の星にて、隊員2名を殺害した後失踪。動機は不明。殺害された隊員は2名とも即死であり、1人は首を刎ね飛ばされた状態で、もう1人は頭部を殴り潰された状態で発見された。
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その先にも何か書かれてはいたが、もう僕の目には文字は入って来なかった。
「これは……事実かい?」
「はい。現場には彼の発信機も残されていたので、間違いないかと」
「そうか……」
僕は半ば虚な目つきで本部を出た。そして誰も居ない家に帰り、僕の中には改めて強い怒りが込み上げて来た。
「何のつもりだフォルティ……!君が言ったんじゃないか、『裏切りは許さない』と……!」
僕は手近にあった机に八つ当たりとして拳を振り下ろした。
「僕達を置いて何処へ行った?辛くなったなら何故1人で逃げた?僕達が居たじゃないか……君が言う『絆』は、偽物だったのか?」
頭を掻きむしりながら考えていると、僕は1つの結論に辿り着けた。
「……そうか。君も……戦争によって歪んだのか」
そう思った時、フォルティに向けられていた怒りの一部が『戦争』という行為に向けられ始めた。
「そうだ……元はと言えば、こんな物さえなければ……今も3人でいられた筈なのに……!」
その時僕は、この世から戦争を根絶する事を誓った。手始めに遠征隊の本部に忍び込み、星間移動装置を破壊した。作成に関する資料も全て焼却した。開発者は僕なのだから、これで少なくともこの星が戦争をする事は無くなった筈だ。
これでいい。この調子だ。全ての星から移動装置を無くして、世界から戦争を根絶する。そうすれば、もう僕のような想いをする者は居なくなるだろう?
豆知識
ディスガーは異能で生み出した影の中に1人用の星間移動装置を隠しています。あいつはこれで星々を移動しているのです。




