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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第159話 さいきょうのぶき

魔物襲撃の警報を聞き、リーヴ達は作戦通り軍都の外側にある門へ向かう。今更だが軍都は魔物から街を守る為、かなり分厚い鋼鉄の壁で四方を囲まれている。そのうちのどこかへ向かえばいい、とディスガーは言っていたのである。


「おっきい、ね」

「魔物の群れから街を守る為ですから、多少は大きくても不自然ではありませんよ」


そして先頭を歩いていたリーヴが、門番を見つけて話をしにいく。


「ん?君達は誰だ?」

「わたし達は……えっと、援軍?だよ」


門番の男は口元の髭を摩りながら考えを巡らせている。


「……ああ思い出した!そういえば上から通達が来ていたな。通ってくれ。支援、感謝する」


幸いにもディスガーが手配した通達を思い出してくれたので、4人はすんなり軍都の外側に行く事が出来た。


「ディスガーのツテってすごいんだね」

「あの人、顔広そうだもんね」


門を出てすぐの場所には既に陣形が敷かれており、櫓だったり柵だったり砲台などが設置されていた。もう戦闘準備は万端なのだろう。


「君達が、話にあった援軍か。少数精鋭とは聞いていたが……本当に4人とは」


リーヴ達の後ろから、指揮官らしき人物が話しかけて来た。


「訓練を受けている訳じゃないから連携は難しいだろう。特に指示は出さないから、とにかく攻めて来る魔物共を蹴散らしてくれればいい。頼んだぞ」


忙しいのだろうか、彼はそう言い残して足早に立ち去った。


「指示が出されないなら、あたしは1人で行動したいんだけど……いい?」

「いいけど、なんで?」

「……多分、攻めて来る魔物は数が多いと思う。もし黒幕が六芒星の幹部、つまりディスガーさんと同格なんだとしたら……前線は大変だと思うから。なるべく怪我する人は減らしたいんだ。あたしは戦争慣れしてるし、1人でも大丈夫」

「なるほど……分かりました。ですが、辛くなったら呼んでくださいね」

「うん。ありがとう、クオン」


そして、セラは前線へ向かった。リーヴ達は少しの話し合いの末、前衛と後衛の中間辺りで出来るだけ魔物の数を減らす事にした。

やがて大きな足音が聞こえて来た。いよいよ開戦するのだろう。


「来たぞ!射撃用意!!」


拡声器を通した指揮官の声が微かに聞こえて来る。流れ弾には当たらないであろう距離まで移動して来たリーヴ達も、自然と身体に力が入る。


「……!きた…!」


地平線の向こうから、大量の土煙と共に様々な姿の魔物が押し寄せて来る。人型や狼型、中には大きな蟹のような姿の魔物も居た。


「……多くない?」

「確かに思っていたより多いですね」

「なんでそんな冷静なの」

「焦る程では無いかと」

「そっか」


クオンは紫色の大鎌を携え、押し寄せる魔物を斬り伏せていく。クオンが仕留め損ねた魔物はリーヴが消滅させ、2人の消耗はアルシェンが癒す。流石にある程度長い間一緒に居れば、連携も様になってくる物だ。


「一向に数が減りませんね……フォルティさん達は問題無く黒幕の元へ向かえているのでしょうか」

「それは信じるしかない、けど……段々つかれてきた。クオンは大丈夫?」

「正直なところ、少し」

「デスと交代出来たりしない?」

「一応、私達の他にも中衞の方は居ますので……あの子の力が普通の方にまで及んだら大変です」

「そっか……」


その時、ふとクオンはある事を思いついた。しかし、それは疲労故の中々にぶっ飛んだ作戦だった。


「リーヴさん、ちょっと……」


クオンはリーヴの耳に顔を近づけ、何かを囁き始める。それを聞いたリーヴは、好奇と困惑の入り混じったような何とも言えない表情で頷いていた。


「おー……うん。おもしろそう」

「どうしたんですか?リーちゃん」

「アルシェン、耳かして」


アルシェンもリーヴからクオンの発案を聞かされた。いつもニコニコしているアルシェンだが、その時だけは顔を引き攣らせて困惑の意を示していたそうだ。


「……はい。これで大丈夫です」

「ほ、本当にやるんですか?」

「やろう、よ。おもしろそうだし」

「倫理は何処へぇ……」


クオン(疲労困憊)の思いついた作戦というのは、まず触れた相手の命を奪う手を持つクオンが手袋を外す。そして上半身をリーヴが、下半身をアルシェンが支えて、手を突き出したクオンを槍のように横向きにして構える。後はアルシェンが後ろ向きに風を起こして推進力となって魔物へ突撃し、少し狙いの外れた敵にはクオンが死の力で撃退。その巻き添えを喰らわないように、リーヴが権能で守るという算段だ。


「いくよ!」

「は、はい!」


アルシェンが後方へ風を起こすと、3人はかなりのスピードで前方へと駆け出した。少なくとも髪が後ろに置いていかれる程の速度ではある。しかし作戦は一応意味があったのか、経路上の魔物は悉くクオンの力の前に倒れていく。


「おお。つよい、ね。クオンソード」

「ソードというよりランスでは?」

(これクオンちゃん相当疲れてますね……)


そうしてリーヴ達3人は、順調に魔物の数を減らしていくのであった。

一方、前衛に居るセラはふと後方を振り返ってみた。すると彼女の目に映ったのは、中々に奇妙な戦い方をする仲間達の姿だった。


(えっ……あ、あれは何を…?)


困惑が大きすぎたせいか、その後しばらくセラの太刀筋が鈍ったとか。

私はリーちゃん考案のクオンソードを「非人道即死バッシュ」と呼んでいます

クオンソードの方がいいですかね

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