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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第158話 立策

豆知識

デスはああ見えて自分から何かを話す事はほとんど無いので、基本的にクオンの中に居ます

用があれば出てきます

10分ほど軍都内を歩き回って、リーヴ達はフォルティとディスガーを発見した。


「ああ、そこに居たのかい。予告通り、君達が軍都の防衛に参加する事は伝えて来たよ。観光は出来たかな?」

「うん。新しい友達もできた、よ」

「そいつはめでてぇな。だが紹介しようってんなら後にしてくれ。こっちの酒クズメガネが策を伝えてくれるらしいぜ」


フォルティは一歩後ろに下がり、ディスガーを前に立たせる。


「まず、君達には事前の話通り、アルテミシア軍と共にこの軍都を防衛してもらう。何か質問は?」

「あ……じゃあ、いいかな」


真っ先に手を挙げたのは、かつてある種の軍人であったセラだった。


「武器とか、装備の支給はあるの?」

「武器なら貰えるだろうが……防具は期待しない方がいいだろうね。君達の事は『全員魔力を扱える』と伝えてあるから……防具は不要と判断されるかもしれない」

「そっか、分かった」


セラは『まぁそんな物か』とでも言うような表情で返事をする。


「無いなら次だ。僕らは魔物の群勢をどうにかして通り抜け、大将を叩く」

「大将がいるのですか?」

「ああ。思考を巡らせるうちに確信が持てて来たから言うが……恐らくこの件は僕の同僚の仕業だ」

「は?」


腕を組んでいるフォルティが首だけをディスガーに向ける。


「どういう事だよ?」

「僕と同じ六芒星の幹部……名は『エルメーダ』。笛を鳴らして魔物を生み出し、使役する能力を持っている。以前に神の居場所を探る為、『人の多い星へ向かう』などと言っていたが……まさかアルテミシアだったとはね」

「同僚だってのに随分と動向に疎いんだな」

「当然だろう?そもそも、僕はあまり他の幹部と関係を持っていない。1人の例外を除いては……会った時に会釈するくらいの仲さ」


ディスガーが軽く鼻を鳴らした時、後ろの方に居たクオンが真顔のまま呟いた。


「仮にそのが本当だとしたら……ディスガーさんは同僚の方と戦う事になると思うのですが、その……大丈夫なのですか?」

「ああ勿論さ。ご心配ありがとう」

「えっ……そ、そうですか」

「何を驚く事が?先程も言ったが、六芒星は僕にとってはただの隠れ蓑だからね。幹部に愛着なんて無いよ。故郷に害を成すなら……死んでもらうだけさ」


ディスガーの目に、再び怪しい光が宿る。


「ひとまず、これで全てだ。何か質問は?」

「いつやる、の?明日とか?」

「いや、次に魔物が攻めて来たタイミングだ。明日どころか、もしかしたら今日中に始まるかもしれない」

「そんなに高頻度で襲って来るんだ……」

「別に驚く事でもないさ。魔物が攻めて来た時は警報が鳴るから、そうしたら軍都の外側にある門に行ってくれ。どこだっていい、門番に『先程伝達された援軍の者だ』とでも言っておけば、問題無く戦線に向かえるだろう」

「わかった。じゃあ、またあとで、ね」

「ああ。アンタらも頑張れよ」


そうして、ディスガーとフォルティはどこかへ去っていった。


「警報が鳴るまではあたし達も暇って事だよね?」

「アリーナちゃんのの家にでも行きましょっか」

「うん。いこ」


4人はアリーナの家へと戻ったが、不思議な事にアリーナは姿を消していた。フォルティ達と話している間にどこかへ出かけたのだろうか。


「アリーナ?」


リーヴはかくれんぼの鬼のように、クローゼットやトイレなどを探す。結果アリーナは見つからなかったが、その代わりに少し奇妙な物を見つけた。それはベッドの下の奥の方に隠すようにして置いてあり、リーヴは身体を伏せてから手を伸ばして取り出してみる。


「わっ……」


リーヴが引っ張り出したのは、古い軍服と2本の短剣、そして狙撃銃だった。短剣の刃部は血で錆びていて、銃の引き金は血で固まっていて引く事が出来ない。常識的に考えればこれはアリーナが現役時代に使っていた物だろうが、更に奇妙だったのは軍服の損傷具合だ。服のみならず、手袋、靴、帽子などにも余す事無く血が付着しており、服に至っては胴体の部分がほとんど真っ二つに裂けていた。


「これ……アリーナの、かな」

「……」


アルシェンとクオンは玄関の辺りで雑談をしている。一方、リーヴと一緒にその軍服を見ていたセラは少し納得の行かなそうな顔をしている。


「……?どうしたの?」

「いや、大した事じゃないんだけど……血の付き方とかがちょっと気になって」

「何か変?」

「変って言うか……おかしいんだよね。ほら、この軍服は胴体の辺りが裂けてるよね。触り心地からしても多分これは戦闘用の服……つまり防具だろうから、決して脆くは無いはずなんだ。そういう服がこんな風に裂かれるなら……着ているアリーナも無事じゃないと思うんだ。それに、血が裂け口を中心に付着してる……」


何やらぶつぶつと言っているが、リーヴには意味がよく分からない。


「えと……結局、どういうこと?」

「つまりね。これがアリーナの装備なんだとしたら、壊れ方から見て……あの子が今五体満足でいるの、ちょっとおかしいんじゃないかな……って」


その一言で、リーヴはようやくセラの言おうとしている事を理解した。


「まぁ……運が良かったって言われればそれまでだけど」

「なるほど……言われてみればたしかに」


その時、家の外から警報が聞こえた。始めて聞く物ではあったが、恐らくこれがフォルティ達の言っていた『警報』だろう。


「今の音……!」

「行こうリーヴ、作戦開始だよ!」


(元)軍人達と一緒に居た影響なのか、セラはいつもより気合いの入った声を出している。そんなセラに先導されて、4人は軍都の外側にある門へ向かった。

一方、家の中にはいつの間にやらアリーナが姿を見せており、小さくこう呟いた。


「……頑張ってね」


アルテミシア防衛戦、開幕である。

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