第152話 二重人格?
夢界にて。報酬金を受け取って家に帰って来たリーヴ達は、改めてデスについて話を聞く事にした。
「そういえば、いつの間にかクオンに戻ってる、ね」
「はい。緊張させてしまうから、とあの子が」
「色々聞きたい事もあるし、出て来ても良いのに」
「……このままでも話は出来る、との事です」
その時の4人は、恐らく同じ事を考えていた。
「……不便じゃない?」
「まぁ、そうですね。ですが、特にどうしようというアテも……」
クオンが指を顎に添えながら呟くと、すぐ近くにあるセラの部屋から聞き慣れた声がした。
「お困りのよう……あら?座標を間違えたかしら」
さも当然のようにセラの部屋から出て来た幻は、4人がいる居間に来て再びポーズを取る。
「お困りのようね!」
「ああ続けるんだ」
「話は聞かせてもらったわ。私に任せてちょうだい」
「任せるって……どう?」
「ここは私の領域よ。この中限定なら、クオンの中のもう1人の人格を外に出す事だって出来るわ」
「おお、幻すごい、ね」
幻はクオンの目の前までやってきて、優しく指示を出し始める。
「まず目を閉じて……そう。次に、自分の目の前にもう1人の自分がいるのをイメージして。クオンの中のあなたもよ」
言われた通りに想像を巡らせたおかげか、幻は順調に2人のイメージを『夢』として具現化していく。そして淡く煌めく泡の中から、先程研究所の地下で見た姿、デスが現れた。
「……本当に、すごいですね。幻さん」
「礼には及ばないわ。ただ、これは夢界でしか効力を発揮しない……要は、外に出ればデスの身体はクオンの中に戻るわよ」
「分かったよ。ありがと。これでようやく……」
デスはクオンを見つめて、何やら不穏な空気を纏い始める。反射的にセラは身構えるが、デスの取った行動は……
「……愛しいこの子に触れられる」
「へ?」
デスが変わらぬアルカイックスマイルを浮かべたまま、クオンにベッタリと抱きついた。
「あ、あの……は、なれて、いただけると……」
未だ接触を苦手とするクオンは、身体を震わせながら戸惑っている。
「……まぁ、話続けようか」
「えっ」
クオンが何とも言えない顔でリーヴを見つめていたが、それを知ってか知らずかリーヴはデスに問いかける。
「デスは、さ。何者なの?」
「アタシは『死』を体現する者。訳あってクオンの中に宿った死の概念種だよ」
「『訳あって』って、どんな?」
「フフッ……教えてあげない」
「どうしてですか?」
今度はアルシェンが不思議そうに尋ねた。その間、クオンは徐々にオーバーヒートしていっている。上昇するクオンの温度を感じながら、デスはクオンの背中に張り付いたまま答える。
「そう何でもかんでもアタシが答えてたらつまらないでしょ?別に急いで知らなきゃいけない訳でもないだろうし、当面は頭の片隅に置いておいて、旅の目的の1つにすればいいんじゃない?」
リーヴ達はいまいちデスの思惑が分からなかった。とりあえず敵意は無いのだろうが、それでも怪しくないと自信を持って言うのは難しい。
「ああ、安心していいよ。アタシはアナタ達の敵になるつもりはないから。協力出来る事なら力を尽くすよ」
リーヴ達の不安を見透かしたようにデスは言った。
「そう言うなら、疑う気はない、よ。よろしくね」
「うん。よろしく、皆」
「じゃあデスもこの家で暮らすって事かな?」
「また食卓が賑やかになりますね〜!嬉しいです!」
横に居る幻もニコニコと優しく笑っている。
「そういえば、さ。デスってもしかして、クオンの片割れだっていってた、ヘーメラーって人の生まれ変わりだったりしない、の?」
そんなリーヴの問いに、デスは少し目を伏せながら首を横に振る。
「残念だけど、それは多分違う。アタシはあの恵みの太陽にはなれない……アタシは、全ての生きとし生ける物に降り注ぐ、雨のような物だから」
「そ……そっか」
デスはやたらと伝わりにくい言い回しを好んで使うようだ。
「まぁアタシが知らないだけで、本当はそうなのかもしれないけどね。そもそもアタシの事を知っている存在なんて、あの空虚の傍観者くらいだよ。あとは……フフッ。ほとんど皆死んじゃった」
デスは再び怪しく微笑む。
「空虚の傍観者……って、誰?」
「アナタ達はアルヴィースって呼んでたかな」
「なんで名前で呼ばない、の?」
「フフッ。それはね……」
何か勿体ぶるデスの様子に、リーヴ達は自然と生唾を飲む。
「かっこいいからだよ」
「えっ」
リーヴ達は何も言えなかった。その後もデスは何やら『かっこいい』事について語っていたが、半分くらいしか耳に入って来なかったという。
キャラクタープロフィール
【三途河原の掬命者】デス
種族 概念種
所属 星間旅団
好きなもの クオン 旅団
嫌いなもの クオンに害を為す何か 日光 濡れる事
権能 「死」
作者コメント
いつの間にかクオンの中に宿っていたらしいもう1つの人格(?)で、病的なまでにクオンが好き。本編でも言っていたように出自や素性については明かす気が無く、リーヴ達が知りたいなら旅の中で調べてもらおうと思っている。なんか怪しい。しかし、意味深な事を色々言っていたがシンプルに厨二病なだけである。




