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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第148話 激情顕す黄泉の焔

「さぁ邪魔は消えた!今度こそ灰にしてやるよ!」


禍焔を滾らせた夜見が、通った道を燃やしながら勢いよく突っ込んでくる。


(来る……!)


セラは受け流しの姿勢を取るが、夜見も突撃だけが能ではない。セラに攻撃すると見せかけ、禍焔の爆発を利用して身を翻し、両手の剣を交差させて再び爆発を推進力にしながら突進してくる。


「甘えんだよ雑魚がぁ!!」

「くっ……」


地面に着地すると同時に爆発を起こした夜見は、爆発に合わせてセラを蹴り飛ばす。吹き飛んだセラは即座に態勢を立て直し、夜見の方を向く。夜見は既に追撃を用意しており、斬撃状の禍焔が地面を抉りながらセラに襲いかかる。


(この程度ならまだ避けられる……今度はあたしが…!)


セラは禍焔の波状攻撃を掻い潜り、夜見の懐に潜り込む。そしてそのまま夜見の脇腹を斬りつけて離脱する。


「クソがぁ……!何で俺がこんな目にぃ……」


夜見は恨み言を呟きながら再び爆発を利用して斬りかかり、セラも光を纏って応戦する。2人とも中々の高速で移動しながら斬り合っている為、リーヴには2人の戦いが目で追えなかった。

実験場の至る所で禍焔の不協和音や光と火花の散る音が聞こえる中、唐突にその決着は着いた。音が一瞬止んだかと思えば、夜見が勢いよく地面に激突したのだ。隣に降りて来たセラに向かって、リーヴはおずおずと尋ねる。


「夜見……どうしたの…?」

「多分、あの焔を使いすぎたんだよ。火の勢いが弱まってる……きっと、今までずっと碌に休みもしないで戦って来たんだ」

「畜生……畜生…!俺がぁ……!何をしたって言うんだよぉ……!!」


恨めしそうに呟く夜見を見て、セラの中にあったとある気持ちは更に膨れ上がる。その気持ちが抑えられなくなり、思わずセラは声に出す。


「夜見……何であたし達と戦うの?君の過去は知ってる。学会員だけじゃなくて、人間そのものが信用できないんだろうなって言うのも、なんとなく分かるよ」

「あぁ……?」

「でも……あたし達だって君を殺したい訳じゃない。あたし達は君に敵意なんて持ってないんだよ……!だから退いてほしい。あたし達に……君を殺させないで」


セラは必死に訴えかける。が、夜見の爛れきった心には届かなかったようだ。


「フハハハハハハ!そりゃお優しいこった……お前らは俺に勝つのが当たり前だと思ってる訳だ。さっきは尻尾巻いて逃げた癖に、よくそんな大口が叩けるなぁ!」


学会が彼に与えた淵気と焔は、彼の身と心を絶えず焼き続けている。その薪は彼の怒り、恨み、嘆きである。


「ああ苛つくなぁ……!んな甘え言葉で俺を懐柔しようってのか。目障りだ……耳障りだ!とっとと俺の前から失せやがれ!俺を燃やす薪になれぇぇぇぇぇぇ!!」


しかしそれらを燃やして尚、黄泉路を灯す焔は『足りぬ、足りぬ』と熱り立つ。

彼は問うだろう。『何が足りぬ』と。

焔は答えるだろう。『薪が足りぬ』と。

そして彼は問うだろう。『ならば何を薪に望む』と。

そして焔は答えた。『お前だ』と。


「ぐっ……!?何だぁ……俺の焔が、黒く…!」

「よ、夜見……?」


リーヴが戸惑うのも無理はない。溢れ出る激情に任せて怒号を上げた夜見が、突然纏う焔の色を真っ黒く染め上げ始めたのだ。しかし夜見の反応からして、これは本人すら意図していない事態らしい。一体彼の身に何が起こっているのだろうか。


「リーヴ離れて!やっぱり……戦うしかないよ」

「うん。けど……あれは、どういう事、なの……?」

「……勘だけど。淵気って負の感情を多く含んだ魔力って言ってたよね。そして、彼は淵気を投与されて異能を得た……だから夜見の強すぎる怒りが体内の淵気と反応して、暴走したんじゃないかな」

「言われてみれば、あの火……さっきよりも淵気みたいな色になってる」

「何にせよ警戒は必要だよ。援護、よろしくね」

「……うん」


2人の会話の裏で夜見は苦しみ悶え続けている。


「……ねぇ、セラ」

「なに?」

「死、って……救いなのかな」

「いきなりどうしたの?珍しいね」

「例えば夜見は……今、すごく苦しそう。でもこの子の場合、死ぬ以外に苦しいのから解放される手段はない、よね。なら……死ぬ事は救いって呼べるのかな」

「……その答えはあたしには出せない。だって、人によって答えは違うから。でも死は、あたしにとってはもう程なくして訪れる物。他の人にとっても、生きているならいつか平等に訪れる物。『いつか必ず救われる』って言う言葉が正しいのなら、死ぬ事も救いの内に入るんじゃないかな」

「……そっか」


表にこそ出さなかったが、セラのその言葉にはリーヴの戦いに対する忌避感を和らげる為の物だった。セラは戦い慣れてはいるが、リーヴはそうではない。夜見を殺す決心だって、本当はまだついていなかったのだろう。


「……っ!ハァ……ハァ…何だったんだ、今のは…!」


その直後、黒い焔に包まれていた夜見がようやく姿を現した。彼の姿は先程とは大きく異なっており、武神のような衣装に黒い1本の刀、そして金と黒の混じった兜のような物を身につけており、それら全てが夜見から溢れ出る黒焔から作られている。


「まぁ何だって構いはしない……さぁ、続けよう」


ノイズのかかった歪んだ声で夜見は告げる。この戦いはどういった決着を迎えるのだろうか。

豆知識

夜見の禍焔が赤黒い理由は、元々の炎としての色と淵気の色が混ざってるからです

あと、怒りを原動力として戦うキャラの魔力の色は大体赤黒いです

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