表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/197

第15話 さむい、ね

リーヴの能力の仕様

・ランダム転移は1日1回

・転移する先の風景がある程度詳細に想像出来れば何回でも使える

・基本的に使ってるのはランダム転移

・上記の仕様について、リーヴ本人はなんとなく理解している

村長に冷却塔の暴走を止める事を依頼されたリーヴとセラ。その翌朝、2人は朝食を済ませて宿から出て来た。


「おいしかった」

「久しぶりのご飯だったもんね」

「うん。セラの家で、たべた時以来」


2人は昨日の夜に村長と別れる前、準備の為の資金として幾らかの金を貰った。


「このお金で防寒具とか買いに行こうか」

「そうだね。このさむさの原因の場所…近づいたらもっとさむいはず」


2人は雑貨屋に向かい、厚手の防寒着と野宿用の調理器具を購入した。


「おお…ほんとに、その紙と物を交換するんだ」

「うん。これは『クレジット』って言ってね、この世界の基本的な共通のお金なんだ。まぁ、一部の星は違うらしいけど…」

「ふぅん」


その時、セラはとある事を思い出す。


「そういえば…こういう寒い地域だと、金属の柵とか舐めたら大変な事になるらしいよね。確か…舌がくっついちゃうんだっけ」

へあ(セラ)


リーヴの口を開けたまま喋っているかのような声に、セラは若干嫌な予感がした。


「な…何?」

ほえない(取れない)


セラが横を向くと、道端の柵に舌がくっついたリーヴの姿があった。


「何でやっちゃいけない事を片っ端からやるの君は〜!」


セラはなんとかリーヴの舌を柵から剥がした後、リーヴの両頬を引っ張る。


「い、いたい、いたいよセラ!」

(もちもちだ…)


その後数分間に亘って、セラはリーヴの頬を触り続けたという。


「じゃあ、準備も出来たし行こっか」

「うん。強いていうならわたしのほっぺが無事じゃないけどね」


心なしか、リーヴの頬が少し伸びているように見える。


「ご…ごめん。思ってたより触り心地良くて」

「それは、よかった」

「良いんだ…」


2人は村長に貰った地図を見ながら、冷却塔へ出発した。


「村の外はやっぱりさむい、ね」

「本当に昨日聞いた方法で…この寒さが収まるのかな」

「でも、やるしかない、よ」

「…そうだね」


2人は村を後にして、冷却塔のある方角へ進んでいく。


「みて、セラ。あそこの魔物、もふもふ」


リーヴが指差した先には、体毛の濃い虎のような姿をした魔物が居た。


「ふわふわそう。さわりたい」

「えっ……と、それは…やめといた方が…」


セラが苦笑いで止めるのも無理はない。何しろ、その魔物はリーヴを余裕で丸呑み出来るほどに巨大なのだから。


「むぅ…ちょっと、ちょっと近づくだけ」


リーヴは忍び足で魔物に近寄る。幸いな事に眠っているようだが…


「あっ」

「あっ」


足元が雪なのでバランスが取りにくく、リーヴは『ベシャッ』と音を立てて転んでしまった。見ていたセラも、つい同じような声を漏らす。


「!!!!!!!!!!」


その音で眠りを妨げられた虎の魔物は、苛立ちからか大きな咆哮を上げる。


「す、すみませんでしたぁぁぁ!」


セラが正しく光の速度でリーヴを回収し、遥か彼方まで飛んでいく。


「ごめん、セラ。次からは足元をよくみる」

「いいよこれくらい。リーヴを守る為に、あたしはリーヴと一緒に居るんだから」


優しそうに微笑むセラを見て、リーヴはその何も映っていないかのような目を少し輝かせる。

「セラ…!ありがとう。すき」

「ふぇっ!?…い、いきなり過ぎない…?」

「だって、これ以外に言葉がみつからない」

「う……そうだとしても、無闇に他人に『好き』って言っちゃダメだよ?」

「むぅ…わかった。じゃあ、セラには?」

「えっ?」

「セラには、すきって言っていい?」


セラは顔を若干赤く染め、数秒ほど悩んでから小さく呟く。


「………いいよ」

「やった…ふふ。セラ、だいすき」


そう言いながら、リーヴはセラの右腕に抱きつく。


「リーヴ…歩きづらいよ」

「でも、こうするとあったかい、でしょ?」


確かに冷却塔に近づくにつれて、段々と防寒着を着ていても寒さを感じるようになっていた。


「確かに…リーヴ、体温高いもんね」

「ふふん。わたし、役にたってる」


得意そうに拙く微笑むリーヴを見て、セラも思わず笑みが溢れる。


「ふふ…でも歩きづらいのは確かだから、代わりに手繋ご?」

「うん。いいよ」


またしばらく歩いた頃、吹雪の奥に倒壊した塔の残骸のような物が見え始めた。塔は途中で折れており、周囲には巨大な氷柱が四方八方に伸びている。


「着いた、ね」

「これが冷却塔…すっごい寒い」


2人がなんとなく辺りを見回していると、リーヴが信じがたい物を発見する。


「セラ…これみて」


リーヴが発見したのは、凍りついて氷像と成り果てた多様な形の魔物だった。


「この氷柱も、凍りついた魔物達も…村長さんの話で聞いた『大爆発』で出来た物なのかな」

「たぶん…わっ」


突然、リーヴの眼前に何かが落ちて来たようだ。


「リーヴ?今度は何を…」


リーヴの前に落ちて来たのは、魔物達と同様に凍りついた生物だった。ただし、今回のは人型の魔物などではなく、歴とした人である。


「これ…ひと?なんで…」

「塔から落ちて来たって事は…前に冷却塔の暴走を止めに来た人なのかな」


2人はとりあえずその人間だった物を埋葬し、塔の扉の前に立つ。


「よし…行こう、リーヴ。あの玉は持った?」

「うん。ちゃんとポケットに入ってるよ」


リーヴが頷くと、2人は同時に凍りかけている扉に手をかけた。

豆知識

魔物は基本的に生物の死骸に魔力が取り込まれて生まれます。

今後作中にも出ますが、人型の魔物も普通に居ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ