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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第136話 明日の己の笑顔を信じて

リーヴ達が次に訪れた星は、アルシェンの故郷だと言う。この星には涙のような味がする雨が降っているが、どうやらアルシェンはその原因に心当たりがあるらしい。しかし、事情を全て知っている以上アルシェンが説明すると長くなってしまう、との理由で、街の人々に聞き込みをする事にした。


「ね、ちょっといい?」


リーヴは道行く老人を呼び止める。当たり前だが傘を差しており、少し腰の曲がった老人だった。


「なんだい?可愛いお嬢さん」

「…!」


そう言われた途端、リーヴは目的を忘れてドヤ顔をし始める。


「ふふん。わたし、かわいいらしい」

「リーヴ、リーヴ。この星の事聞かなきゃでしょ?」

「あ、そうだ。おじいちゃん、この星の雨の事、なにか知ってる?」

「雨か……まぁ役に立つかは分からんが、一応知っているぞ」

「ほんと?なら教えて、ほしい」

「ああ。十何年か前だったか、それまでは普通に晴れと雨を繰り返していたこの星が突然、雨しか降らないようになったんだ。晴れないどころか、雪も降らない。ずっと、この妙に塩辛い雨が降っとるんだ。おかげで洗濯物も干しにくいわ、湿気が鬱陶しいわで中々に困っとるよ」


もうこの雨に慣れているのか、含み笑いと共に答えた老人から目を背け、アルシェンはまた表情を暗くする。


「噂では、魔力だか何だかが関係してるらしいが……ワシには小難しい事は分からんな」

「そうなんだ。ありがとう、おじいちゃん」

「ああ。達者でな、可愛いお嬢さん」

「…ふふん」


リーヴはまだ嬉しそうである。ともあれ大まかな状況は把握出来たので、4人は一旦情報の整理を始める。


「えっと、この星では何年も前からずっと雨が止まなくて、噂では誰かの魔力でこんな事になってる……って感じかな」

「星全体に影響を及ぼすなんて……相当強い魔力を持っているようですね」

「多分その人……結構強い感情を抱いてるんだろう、ね。でさ、アルシェン」

「…はい」

「何か知ってるなら、教えてほしい。よく考えたらセラにしか言ってなかったけど、わたしは決めたんだ。色んな人を、星を助けるって。だから、この星の問題も解決したい、の」


揺るぎない決意を表明するリーヴを見て、アルシェンは理由もよく分からない躊躇いが消し飛んだ。


「……実は、この雨の原因なんですが…その…」


「わたしの、お姉ちゃんなんです」


「……えっ」


そりゃ話すのを躊躇う訳だ。1つの星を、それも自分の故郷を悩ませる事象の原因が自分の姉なのだから。


「アルシェン、お姉ちゃんいたんだ」

「はい……とは言っても、彼女は迷魂ですが。わたしが先生に拾われるきっかけになったのも、彼女の死です」

「……そういえば、いつだったかサンサーラから聞きましたね。当代の送魂士はある迷魂を救う為に送魂士になった、と。今思えば、それはアルシェンさんの事だったのですね」

「はい、その通りです……なので皆さん、彼女の送魂に協力してもらえませんか?運が良ければ話し合いで解決出来ますし、皆さんに危険が及ばないように最善を尽くしますので…!」


アルシェンは一生懸命に頼み込んでいる。身内が成仏出来ず、未練を抱いたまま現世に留まっているのであれば当たり前の行動だろう。特に断る理由も無いのでリーヴとクオンは了承した。しかし、セラはある問題点に気がついたようだ。


「待ってよ……アルシェンって確か、送魂のやりすぎで身体が弱ってるんじゃ…?」

「あ……たしかに」

「しかも、あと1回でも送魂したら死んじゃうかもしれないって…」

「…」


アルシェンは黙り込んでいる。何とか誤魔化そうと一瞬想いを巡らせたが、すぐに観念して正直に話す。


「…はい。ですが、わたしは彼女を送魂する為に今日まで腕を磨いて来たんです。彼女の未練は並の迷魂より強く、先生でも一筋縄ではいかないそうで…」

「だったら尚更…!気持ちは分かるけど、無茶だよ…!あたしはもう仲間を、友達を失うのは嫌だよ…」


アルシェンにもまた、セラの気持ちが痛いほどよく分かった。しかし、アルシェンの決意は揺らがない。


「これは……わたしにしか出来ないんです。もちろん、死ぬつもりはありませんから安心してください!無事にお姉ちゃんを送魂出来たら、また一緒にご飯食べましょう?」


今度は、作り笑いではない本物の笑顔を浮かべていた。もうかなり前から決めていた事なのだろう。


「…うん。分かった。絶対、約束だよ?」

「はい!任せてください!」

「きまり、だね。アルシェンのお姉ちゃんのとこに、いこう」

「場所は分かりますか?」

「はい、迷魂の気配は特殊なので!」


もしかしたら空元気なのかもしれない。いかに同年代の人間と比べて人の死に関わる機会の多いアルシェンと言えど、所詮は10代の少女である。セラと同じだ。己の死など、そう易々と受け入れられる訳が無い。だが彼女は信じているのだ。明日、友人の側で、いつも通りに笑う自分を。

間章っていかんせん展開が速いんですよね

そんな長い設計じゃないので

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