第133話 loveとlike
今回、百合回です
苦手な方はご注意ください
ある日。セラは以前ノーノゥに言われた事を思い出していた。
(うーん……リーヴって『love』と『like』の区別付いてるのかな)
言われてみれば、リーヴはこれまでも結構色々な人間に向かって『好き』と言っている。いつか訪れたホテルの窓際で、セラもそう言われた事を覚えている。
(あの時は雰囲気的に『love』の方かと勝手に思ってたけど……もし違ったら…)
1人で想像を巡らせながら、セラはうつ伏せになって自室の枕に顔を埋める。
「……聞いて、みようかな」
今この家に居るのはセラとアルシェンだけで、他の2人は買い物に出かけている。
「でも……あたしの度胸なんかじゃそんな事聞けないし……あああぁぁぁ〜〜…」
セラがベッドの上で足をバタバタさせていると、不意に部屋のドアが開いてアルシェンが入って来た。
「セラちゃん?どうかしましたか?」
「あ…ごめん、アルシェン。うるさかったかな」
「いえいえ。何か悩み事ですか?」
「うん。実は…」
セラはアルシェンに先程まで考えていた事を吐露した。
「なるほど…確かに、わたしも言われた事ありますね」
「それと話してて思い出したんだけど…リーヴ、最近あたしに好きって言ってくれないんだ」
「それは……単にそういう時期みたいな物じゃないんですか?」
「うん…クオンとかには言ってるの見るし、この前もアルシェンの事好きって言ってた」
「ふむふむ…『本人の前で言うのが恥ずかしい』って事かと思いましたが…クオンちゃんには面と向かって言ってるんですよね。うーん…」
アルシェンは誰が見ても分かるような考える人のポーズを取り、数秒程唸る。
「あ、そうだ。いっそわたしが聞いて来ましょうか?」
「え?」
「セラちゃんは勇気が出なくて言えないんですよね?わたしが代わりに行って来ても良いですよ?」
「うーん…申し出は嬉しいけど……」
こういう時のセラは、中々結論を出す事が出来ない。他者の厚意を無下にしたくはないが、かと言って自分の事を他人にやらせるのも気が引けるのだ。
「……じゃあ、その…リーヴに話だけしておいてほしい、かな。『あたしがリーヴと話したい事がある』って…」
結局、部分的に協力を仰ぐ事にしたようだ。
「わかりました!帰って来たら伝えますね!」
しばらくしてリーヴ達は帰宅した。クオンとアルシェンが夕食を作っている間に、リーヴはセラの部屋に向かった。
「セラ、きたよ。話って、なに?」
「あ、うん…その…」
リーヴとセラは、ベッドから降りた所にある2枚の座布団の上に座っている。流石にいきなり本題を切り出すのは怖かったので、まずは関連する質問から始める。
「り、リーヴ…はさ。『love』と『like』の区別って付いてる?」
「らぶと…らいく?」
「う、うん」
「…何で、急にそんな事聞くの?」
「えっ……と。それは…」
「…?」
言葉を詰まらせてしまったセラは、上がり続ける心拍に従うように言い放つ。
「そ、その…リーヴ、ここ最近はあたしに好きって言わないな…って。前は、ちょくちょく言ってたのに」
(どうしよう…面倒くさい事言っちゃったよぉ…)
セラは内心で頭を抱えている。そんなセラと同じように、リーヴも少し深刻な表情になって答える。
「…それは…ね。ちょっと、理由があって」
「理由…?」
「うん。まず、さっきの質問の答えだけど…わたしは付いてるよ、区別」
「あ…そう、なんだ」
「でね、わたしは、あなたと会ったばかりの頃は、本当に何もしらなかった。から、恋とか、友達とか、よくわかってなかった」
「…うん」
「でも…旅を続けて、色んなものを見てるうちにわかったの。普通だったら、女の子は男の子を好きになって、男の子は女の子を好きになるんだって。もちろん、そうじゃない人もいるのはしってる。けど…セラがそうかはわからない」
「リーヴ…」
「わたしは、セラが好き。でも…もしかしたら、セラは違うかもしれない。セラは本当だったら男の子とか、別の女の子と恋がしたくて、わたしに付き合ってくれてるだけなのかもしれない…って思ったら、気安く言えなくて、ね」
リーヴの言いたいはおおよそセラにも伝わった。要するに、旅の中で知識を付けたリーヴは恋愛の対象にも色々ある事を知った。それ故に、セラの恋愛対象が自分ではない可能性も知ったのだ。例えば、旅に出たばかりの頃の彼女ならば、こんな程度の事は気にしなかっただろう。皮肉と称するべきか、リーヴが旅の中で手に入れた人間性が彼女を悩ませていたのだ。
「…大丈夫だよ」
話を理解し終えたセラは、優しく、穏やかにリーヴに言う。
「男の子と女の子、どっちがあたしの恋愛対象かって聞かれたら…正直よく分からない。でも……これだけは揺るがないよ。あたしは…君が好き。だからこの旅に加わったんだ…君を守るって誓ったんだ」
「セラ…」
「ごめんね。あたしから好きって言った事、あんまり無かったもんね。不安にさせちゃった?」
「……ううん。平気」
セラの返答に安心したのか、リーヴは表情を明るくさせてセラに飛びつく。
「わっ……この感じも懐かしいなぁ」
「ふふ。今なら安心していえる、ね。大好き」
リーヴは太陽のような柔らかい笑顔を見せる。やはりいつになろうと、彼女にとってセラと居る時間はかけがえの無い幸福なのだろう。
「ちょっ……改めて面と向かって言われると照れるから…」
「ふふ。照れてるセラ、かわいい……」
リーヴはセラにしがみついたまま抱きしめる腕の力を強め、自身の唇をセラの耳元に寄せる。
「…好き。好き。大好き、だよ」
「ふぁっ……っ…!」
リーヴのぽしょぽしょとした声が、セラの鼓膜を揺らす。声と共に吐き出される温かい吐息が耳に掠り、セラの体温を上昇させる。
「ふふ…喋る度に、びくっ…ってしてる、ね」
「だ、だって…くすぐったくて…」
「…セラ、戦う時はあんなにかっこいい、のに。わたしといる時は…かわいい。こういう一面を見れるのは……わたしの特権、かな」
「…」
セラは表情までもが蕩けかけていたが、それと同時に微かな苛立ちも覚えていた。しかし、それは決して負の念ではない。『やり返したい』という至極純粋な感情だった。
「…えいっ」
「えっ…わ、わぁっ」
セラは隙を突いてリーヴの拘束を振り解き、妙に慣れた手つきでリーヴを押し倒した。流石は元戦争兵器、相手の無力化もお手のものだ。セラはリーヴの下腹部に跨り、リーヴの両手を1つに纏めて片手で掴んでいる。
「これで…立場は入れ替わったね」
「う………うん」
部屋が薄暗い為によく見えなかったが、その時のリーヴはセラから目線を外していた。地味に珍しい彼女の照れ顔を、セラは確実に見た筈だった。しかし、それがどんな顔だったのかは…それこそセラの特権である。
「…ふふっ。仕返しされる覚悟は……無い訳ないよね?」
「うぅ……結局、いつも通り…」
そのしばらく後、アルシェンが夕食の時間を告げに来るまで、2人のイチャイチャは続いた。
ちなみに。夕食の支度の途中から行方不明となっていたクオンは、2人がイチャイチャしているセラの部屋の前で目撃情報があったそうだ。(アルシェン談)
たまにはリーヴの攻め描写があっても良いって思ったんだ
おれがルールだ




