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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第14話 村長を尊重…なんて、ね

「着きました。ここが私の村ですじゃ」


リーヴとセラは先程助けた老人に連れられて、老人が村長を務めているという小さな村までやって来た。


「改めてお礼を…見ず知らずの私を助けてくださってありがとうございます。これが謝礼になるかは分かりませんが…宿を手配しておきました。小さな宿ですが、ちゃんと2人分の寝床はありますのでご安心ください」

「いいの?わたし、なにもしてないけど…」

「良いのですよ、お連れ様ですから。それと、これをどうぞ」


村長は小さな箱を取り出した。


「これ、は?」

「これは…簡単に言えばテントですじゃ。ここのような酷寒にも、はたまた猛暑にだって耐えられる優れ物ですじゃ。これからの旅に役立ててくださいませ」

「そんな良い物を…ありがとうございます」


リーヴは受け取ったテントを研究所で拾った袋の中にしまった。


「それでは、一度私の家まで来てもらえませんか。1つ…頼みたい事があるのです」


2人はまた村長について行き、村長の家の中に入った。


「「お邪魔します」」

「どうぞ、座ってください」


2人は言われた通りに椅子に座る。少しすると、温かい緑茶と煎餅が出て来た。


「…おいしい」

「おいしいね、リーヴ」


久しぶりに食べ物を口に入れた2人は、幸福感で思わず笑みが溢れる。


「それは良かった。では、そろそろ本題に入ってもよろしいですかな?」

「はい、どうぞ」


村長も緑茶を一口飲んでから、『頼み事』とやらの内容を話し始める。


「…この星には同盟関係にある星があります。その星の()()俗称は『灼熱の星』…この星は『極寒の星』です。が、数年前まではその呼び名は逆でした。この星が『灼熱の星』、同盟関係の星が『極寒の星』と呼ばれていたのですじゃ」

「なんで、逆になっちゃったの?」

「過酷な環境に耐えかねた2つの星の人々は、お互いの星に漂っていた高純度の氷の魔力、炎の魔力を使ってこの星に『冷却塔』、もう片方の星に『放熱塔』を建てました。それによって双方の星の環境は改善され、住みやすくなりました」

「あ……あたし、大体事情わかっちゃったかも」


セラが苦笑いしながら呟く。


「恐らく想像の通りです。この星の冷却塔、向こうの星の放熱塔は経年劣化によって倒壊し、その時の衝撃で大爆発を起こしました。その時から絶えず放たれている氷の魔力の影響で、この星が極寒の星となったのですじゃ」

「やっぱり……でも、あたし達に出来る事なんてあるんですか?」

「ありますじゃ」

((ありますじゃ?))


リーヴとセラはさっきから村長の妙なキャラ付けが気になっていたが、今はそんな事を言い出せる空気ではない。


「実は…冷却塔を元に戻す方法自体はありますじゃ」


村長は部屋の隅にあるタンスから、美しい赤色の球体を取り出した。


「これは私が若い頃、放熱塔を作る時に使ったコアの予備ですじゃ。触る分には問題ないのですが、一度割れると凄まじい熱を放つ危険な代物なのですじゃ。これを冷却塔の動力源にぶつければ、恐らく冷却塔の動きは止まる筈ですじゃ」

「そんなものタンスに入れてたの?」

「保管する場所が無かったものでのぅ…ちなみに、現『灼熱の星』にもこれの氷バージョンがありますじゃ」


その時、セラが控えめに手を挙げる。


「冷却塔の止め方が分かってるなら、誰かが行けば良かったんじゃないんですか…?」

「そうなんじゃが…冷却塔の周りには寒さに適応した魔物が大量に生息していますじゃ。この星には戦える者が居ないのですじゃ。だから、戦う事の出来るあなた方にこれを頼みたいのですじゃ」


そこまで言うと、村長は深々と頭を下げる。


「…断る理由は無いよね、リーヴ?」

「うん、困ってるひとはたすける」

「引き受けてくれますか…!ありがとうございます…!それと図々しいですが…もし今後灼熱の星に行く事があれば、そこの放熱塔も止めてやってください」

「わかった」


その時、セラは1つの疑問を抱く。


「村長さん…どうしてあたし達が星の間を移動出来るって分かったんですか?」

「見れば分かりますじゃ。この星の寒さを想定していない服装が何よりもの証拠…先程の戦闘の様子を見るに、星の移動はそちらの灰髪の方の能力ですかな?そしてこの星にそのような薄着で来るという事は、行き先は指定出来ない…そんなところじゃろうか?」

「…すごい。見ただけで、そこまでわかるなんて」

「ほっほ…これでも頭は回る方なのじゃ。さ、もう遅いから今日は宿に行ったらどうですかな?勿論、この星を離れるまで居てくれて構いませんし、お代も私が出しますじゃ」

「じゃあ、お言葉に甘えて…行こう、リーヴ」

「うん。おやすみ、おじいちゃん」

「おやすみなさいませ」


2人は、村長の家からそう遠くない宿に向かった。

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