第131話 ジェラ、ジェラ、セラ
今回からは第2章が始まるまでしばらく単発回をやろうと思います
あと間章的な話も
ある日。セラは夢界ハウスのソファーに座って深刻そうな表情をしていた。彼女の悩みの種は、今まさに自分の正面に広がる光景である。
「ね、ノーノゥ。これもおいしい、よ」
「甘い物は嫌いなんだ。そう何個も押し付けないでくれ」
向かいのソファーに座って自分のお菓子をノーノゥに食べさせるリーヴと、口では嫌がりながらもリーヴの隣から動こうとしないノーノゥ。そう。言わば、セラはノーノゥに嫉妬のような感情を抱いているのだ。
(…ううん。ダメだよ。リーヴにも友達くらい居るし…誰と仲良くするのもリーヴの自由だもん)
頭ではそう分かっているものの、心は納得していない。セラは悶々としながらスカートの腿の辺りにシワを作っている。ふと、ノーノゥに目を向けた時だった。彼もセラの視線と心情に気づいたのか、わざと勝ち誇るような表情を浮かべてみせた。
「…」
セラの中で何かが弾けたようだ。セラは無言で立ち上がって『どすん』とリーヴの隣に腰を落とし、リーヴの腕を抱きながら少し控えめに言い放つ。
「あ……あたしの、だよ…!」
違うだろ。いや違くもないか。
「どうしたんだい急に?もしかして……嫉妬でもしたかい?」
「しっ…嫉妬なんて、別に…!」
セラの声は上擦っている。
「あたしは…!その……り、リーヴに『好き』って言ってもらったし…!」
「あの子は結構色んな人に言うだろ?そもそも…彼女に『love』と『like』の区別が付いていると思うかい?」
「それは……」
確かに、リーヴにその辺の区別が付いているかは断言出来ない。
「…?セラもたべたい、の?」
リーヴはリーヴでいまいち状況が理解出来ていないようだ。
「ああ、そうじゃないかな?食べさせてあげなよ。僕は誰かさんと違って嫉妬なんてしないから」
「ぐぬ……」
セラは悔しそうにしている。どうやら、セラとノーノゥの相性はあまり良くないようだ。
「セラ、嫉妬してるの?」
「してないよ!してないからね!」
(バレたら絶対嫌われちゃうよ……面倒くさい子なんだって思われるだろうし…)
とは言っても、セラは思春期真っ只中の17歳だ。唐突に現れた恋敵(?)に対する多少の嫉妬は致し方あるまい。セラがリーヴに引っ付きながらまた悶々としていると、突然居間のドアが『バン!』と開いた。そしてそれと同時に、
「お困りのようね!」
という台詞と共に幻が姿を現した。
「幻、久しぶり、だね」
「ええ、お久しぶりね」
「何でここに……って、当たり前か。幻って夢界の主なんだもんね」
「そうよ。何やら楽しそうなお話が聞こえて来たから飛んできちゃったわ。うふふ…今頃流離は大慌てでしょうね」
かつて幻と敵対していた現との関係性上、ノーノゥはほんの少しだけ気まずそうな顔をしている。
「それより、さっきの話は聞かせてもらったわ。1つ提案があるのだけれど」
「提案?」
「あなた達2人には、どちらがリーヴに相応しいのか勝負してもらうわ!」
幻はノリノリで手を前に突き出して宣言する。
「おおー……わたし、に?」
「ええ、そうよ。『リーヴがどちらの物か』なんて問題…あれこれ議論するよりも、どちらがリーヴを安心させられるか、どちらがリーヴの側に居るに値するのかを競った方が良いわ!」
何やら幻は楽しそうである。セラは一瞬の逡巡の後に答えを出した。
「あたしは…やる!」
しかし、ノーノゥは両手を広げて鼻を鳴らしながら言う。
「茶番がしたいなら勝手にしなよ。僕は付き合うつもりは無いよ」
その台詞を聞いたセラは、『今が好機』と言わんばかりに目を光らせる。
「へぇ〜?やらないんだ…君の気持ちはそんな程度だったんだね」
先程煽り散らかした相手に言い返されたのが癪に障ったのか、ノーノゥは顔に筋を浮かばせて返答する。
「言うじゃないか……たかたが年齢2桁の人間の分散で…!」
「年齢は関係ないよ?負け惜しみかな?」
挑発的な表情を浮かべてここぞとばかりに好き放題言うセラを、リーヴと幻は微笑ましく見つめている。
「いいさ…ならやってやるよ。僕と君じゃ実力が違いすぎるからね、ハンデでもあげようか?」
「負けた時用の言い訳にするの?」
ノーノゥとセラの間に『バチバチ』と火花が散っているのが分かる。当然だ。2人は恋敵(?)同士なのだから。
「…わたしが『物』扱いされてることには『のーたっち』なの?」
ノータッチらしいな。
単発回とか言っておきながら次回に続きます




