表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/198

第130話 命と光と死と彩虹

豆知識

この世界で言語、文化、食料や動物などが共有されているのは、アルヴィースがその役目の都合上「いちいち勉強するの面倒くせぇ」っつって統一したからです

他星の文化も容赦なく改変するクズ。あながちノーノゥも間違った事言ってないな

ある日の事。夜ご飯を食べ終わった頃、突然リーヴが言い放った。


「ね、日の出見ようよ」


そもそも夢界ハウスから出る時は、入った位置に戻ってくる。今回の旅団は『景色が良い』との理由で、海の見える崖の上で家に入っていた。日の出を見るにはうってつけの場所だろう。


「日の出ですか…構いませんが、どうしてですか?」

「なんか、綺麗らしいから。ノーノゥがいってた」

「いいじゃん、見ようよ」

「賛成です!明日は早起きですね!」

「では、もう寝ましょうか」

「うん。おやすみ」


そして、4人はいつもより早めに部屋に帰って眠りについた。寝ている者を起こせるように、2人で1つの布団を使う事にしたそうだ。クオンも、リーヴに手袋さえしていれば他人に触れて大丈夫になったので、快くアルシェンと添い寝していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝。リーヴはまだ暗い中で目を覚ました。


「ん…」


隣にセラは居ない。リーヴより先に目が覚めたらしい。


「セラ…」


リーヴはまだ眠たそうに目を擦りながら、水を一口だけ飲んで外に出る。すると、目の前の崖に腰掛けるセラがリーヴの方を振り向いた。


「あ、リーヴ。起きたんだ」

「うん。おはよ、セラ」


リーヴもその隣にやってきて、セラと肩を寄せ合って座る。

数分程、静かな時間が流れて行った。微かな波の音や微風の音が心地良い時間だった。その静寂を優しく破るように、リーヴがゆっくり口を開く。


「…ね、セラ」

「…なに?」

「わたし…ね。思うんだ」


『ぽそぽそ』と話すリーヴの声は、やはりまだ眠そうだ。


「わたしは目を覚ました時…本当に、なにもなかった。服も、意思も、目的も…名前も、全部」

「…だね。何だか懐かしいよね。あたしと君が会ってからもうそんなに……って、この話何回するんだろう…」

「ふふ…でもわたしは、色んなもの、もらったよね」

「そうだね…本当に、色んな場所に行ったからね」


リーヴは過去を懐かしむような笑みを浮かべながら、依然としてぽそぽそと語り続ける。


「パラノイアには、あの便利な袋をもらった。寒い星のおじいちゃんには、野宿用のテントをもらった。エルミスには、みんなでわいわいする事の楽しさを教えてもらった、ね」

「わぁ…よく覚えてるね。言われるまで思い出せなかったよ」

「クオンとアルシェンには、いつも守ってもらってるし。フォルティには、覚悟と、セラ達のありがたさを教えてもらった…」


リーヴは足をパタパタさせながら次々に言葉を並べていく。


「サンサーラには命を助けてもらったし、タナトスには『当たり前が幸せ』であって『幸せは当たり前じゃない』ってことを教えてもらった」

「…思えばあたし達、星だけじゃなくて色んな人にも会ってきたよね」

「流離には夢の中で助けてもらったし、幻には今のお家をもらったし、ノーノゥは、わたしの友達になってくれた…」


思い出せる全てを話した時、リーヴは一旦大きく息を吐いた。


「そして……ふふ。わたしは…」


「あなたに、名前をもらった」


「リーヴ…」

(その事も…ちゃんと覚えてくれてたんだ)


セラは感動と嬉しさに打ち震えている。涙が出そうになるが、話の途中なので頑張って留める。


「全部全部…絶対忘れない。わたしの大事な…宝物、だよ」

「…そっか」


微笑むリーヴに向かって、セラも何かを話し始める。


「…あたしも…1つ、思うんだ」

「なに?」

「この旅も…きっと永遠じゃない。あたしの命みたいに…いつか、終わりが来る…んだと思う」

「…うん」

「もし…」

「ん?」

「えっと…馬鹿げてる話だけど……もしこの世界が《誰かに作られたもの》で…あたしのこの言葉も、君も他の皆も…全部、作り物だったとしても…さ」


セラは荒唐無稽な話をしている自覚があるのか、少し恥ずかしそうに語る。


「今の…この幸せだけは、作り物なんかじゃないって、あたしは胸を張って言えるんだ。だから、その…あたし達は今を生きようよ。今、確かに手の中にある命と幸せを…精一杯楽しもうよ。これからも、4人で、ずっと…」

「セラ…」

「あ…ごめん、格好つけ過ぎた…よね?」

「ううん。すごく、そう思う」


そして、2人はまた沈黙の中に身を投じた。

それから数分後、水平線が徐々に光を帯びてきた。


「…あたし、2人呼んでくるよ」


丁度セラが立ち上がったその時、後ろから誰かがセラの背中に飛びついた。


「セラちゃん!」

「わっ…!あ、アルシェン…」

「ふぁ…すみません、少し寝坊してしまいました」

「おはよ、2人とも」

「あ、ほら見てください!丁度日の出ですよ!」


アルシェンが指差した先では、丁度太陽が昇って来ていた。光を帯びていた水平線はセラにも負けない程に強く輝いており、僅かに周囲に残る夜の気配はクオンのように淑やかで、4人を包む微風はアルシェンのように暖かく、かつ心地の良い風だった。


「綺麗…」

「絶景…ですね」

「早起きした甲斐がありましたね…!」


リーヴは景色に感動するあまり、言葉を発する事を忘れていた。やがて我に帰った時、リーヴはただ一言。他の3人にだけ聞こえる声量で呟いた。


「…うん。これからもずっと、ずっと…みんなで旅をしよう、ね」


それは、クオンとアルシェンからすれば些か唐突な発言だった。しかし、2人は一瞬顔を見合わせた後にリーヴに向かって微笑みをみせる。

3人の返答は記さない。記さずとも分かっている筈だ。ずっと彼女らと共に居たリーヴも、ここまで彼女らの旅路を見守ってきた君達も。

これにて第1章完結です

まだまだこの物語は続くので、引き続き彼女らの旅路を見守ってあげてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ