第13話 極寒の星
研究所での騒動の後、パラノイアと別れたリーヴとセラが虹色の光を抜けて辿り着いた先は、辺り一面の雪景色だった。
「わ……きれい。これが…ゆき?」
リーヴは足踏みをして、足元の雪を『ギュッ』と鳴らして遊んでいる。
「そうだよ。あたしも初めて見たなぁ」
そんなのんびりとした会話をしている2人に、突如として突風が襲う。
「さむぅ」
「そうだよね…雪積もってる場所が寒くない訳ないよね…」
リーヴもセラも素足をある程度露出した格好をしているので、この雪原とは相性が悪かった。
「とりあえず、人里を目指そっか。お腹も空いたし」
「うん。研究所で携帯食をわけてもらってから、なにも食べてないからね」
その時、セラの中に1つの懸念が生まれる。
「…リーヴ、一応言っておくけど…お腹空いてても雪食べたら…」
『ダメ』と言いたかったのだろうか。だが、時既に遅し。
「ふぁに?へあ」
と、リーヴは口をもぐもぐさせながら振り返る。
「…おいしい?」
「ふえはい」
「雪だからね…リーヴ、お腹壊しちゃうよ?」
「ほれあほはう」
リーヴは雪を吐き出した。
「わたし、学習した。雪はおいしくない」
「もう食べないでね?」
「うん」
2人は足元の雪を鳴らしながら、雪原を歩いていく。そのうち、段々と吹雪が吹いてきた。
「うわぁあぁぁあ」
リーヴが死ぬ程気の抜けた声を出しながら、後ろに飛ばされそうになる。
「手、繋ごっか。転んだらまた寒くなっちゃうしね」
「うん……わ、セラの手…あったかいね」
そう言いながら、リーヴはセラの手を自分の頬に当てる。
「う…うん。役に立ったならよかったよ」
(急にそんな事されたら…ビックリしちゃうよ)
セラの心情など露知らず、リーヴはどこかご機嫌そうにセラの横を歩いている。
「あ、セラ。みて」
しばらく歩いた頃、リーヴが目の前を指差した。
「おっきい、なにかがいるよ」
「…熊?」
リーヴの指の先には、吹雪の中に佇む大きな獣の影があった。さらによく見ると、その獣の足元辺りに老人が居る。
「あのおじいちゃん…もしかして襲われてる…?」
「助けなきゃ…!」
セラはすぐさま武器を構えて、老人の元へ向かって行く。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ…」
老人を襲っている獣は、2mはある巨大な熊のような魔物だった。
「!!!!!!!!!」
狩りの邪魔をされた事に怒っているのか、獣は大きな咆哮を放つ。
「…ごめんね」
その獣に多少なり感情移入したのか、セラは少し申し訳無さそうに獣の左腕を斬り落とす。
「…!!!!!!」
それに怯んだ獣は、吹雪の中へと走り去っていった。
「セラ…やっぱりすごい」
「そう…かな、ありがと」
「助かりました、旅のお方!貴方は私の命の恩人です!」
「怪我はありませんか?」
「はい。良ければ、私が村長を務めている村まで来てください。お礼と…1つだけ頼み事をしたいのです」
「リーヴ、せっかくだから行かせてもらおう?」
「うん。お腹も空いたし…頼み事っていうのもきになる」
「ああ良かった…!ついて来てください。そう遠くありませんので」
2人は、老人の後に着いて雪原を歩いて行った。




