第121話 未だ知られざる昔日の痛哭
今回はいつもより短めです
リーヴの正体を一通り話し終えた時、突然アルヴィースが外の異変を感じ取った。
「はぁ…休めないなぁ」
「外で何か起こったの?」
「うん。早く行こう」
アルヴィースに促されて、一行は現実に戻る。するとそこには、先程交戦した少年ことノーノゥが立っていた。至極不機嫌そうな顔をしており、その目はアルヴィースを睨みつけている。
「チッ…さっきは君が来たから席を外したというのに…何故まだ居るんだい?」
「帰る訳無いだろ?僕は君に用があって来たんだから」
「僕に?ハハッ…これは面白い。……僕を捨てた者の分際で今更何を…!」
「…え?」
予想外の言葉に、リーヴは思わずアルヴィースの肩を叩いてしまう。
「捨てたって……どういう、こと?」
「これは……うん。言い逃れはしないさ」
「『記憶』を見れば分かる…君、まだ彼女らに自分の所業を明かしてないんだろう?何時になろうと変わらない…臆病で矮小な人間だね」
「…」
アルヴィースは何も言わない。どうやら彼がノーノゥに何かをしたのは本当のようだ。詳しく何があったのかはまだ分からないが、憎い存在を目の前にして高揚して来ているのだろうか、ノーノゥは更に語気を強める。
「ねぇアルヴィース。僕はずっと君を憎んで生きて来たんだ。君に捨てられたあの日から…君を忘れた事なんて無かった。なのに君は僕を忘れた…!何十年も、何百年も…君の迎えを待っていた!でも君は来なかった!説明しろアルヴィース…!何故僕を捨てた?何故僕を忘れた?教えてくれよアルヴィース…!アルヴィース!!」
前髪を掻き上げながら叫ぶノーノゥの言葉からは、何か執念のようなものが感じられた。余程アルヴィースが憎かったのだろうか。
「ノーノゥ…」
「そうだ。まだ彼女らに語ってないなら僕の口から教えてやろう…君の許されざる罪業を」
「…話しなよ。言い訳じゃないけど、どのみちこの後話すつもりだった」
リーヴ達はノーノゥを警戒していない訳ではなかったが、今のところ襲ってくる気配はないのでとりあえず話を聞く事にした。




