表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/199

第118話 全てを知る者

「あれ、もう居なくなっちゃったか…来て損した」


少年と入れ違いで現れたのは、雨でも無いのに黒いレインコートを着ている白髪の青年だった。気怠そうに溜め息を吐いて、肩や腰を回して身体中を『ポキポキ』と言わせている。運動不足なのだろうか。


「えっと…あなた、は?」


突然の登場に戸惑っているのはリーヴだけではない。4人を代表するかのようにリーヴが聞くと、青年もリーヴ達に気づいたのか柔らかくもどこか余裕を感じる笑みを浮かべて答える。


「ああ、初めまして。僕は『アルヴィース』って言うんだ。こんなナリだけど、一応神様だよ」

「ファ◯リーズ?」

「それ消臭剤……って、前にもこんなやり取りした気が…」


どこかで見たようなやり取りをした後、リーヴが真面目な面持ちで問う。


「あなたは、どうしてここにきた、の?」

「そうだねぇ……僕自身の尻拭いだよ。宗教勧誘と尻拭いを他人にさせる奴は嫌いなんだよね、僕」

「尻拭い…って?」


セラは更に戸惑ったように呟く。


「…ちょっと話が出来ないから思い出してもらおうか」


アルヴィースが指を軽く鳴らすと、セラ、クオン、アルシェンの脳内に記憶が溢れ出した。それは先程まで交戦していた少年、オブリビオンに関する全ての記憶だった。


「…思い出した。何で忘れてたんだろう……あんな強くて、悪そうな人の事…」

「しょうがないしょうがない。それがアイツの権能なんだからさ。特別な事をした訳じゃないから、もう1回彼を見て、彼を視界から外せばまた記憶は消えちゃうんだけどね」

「…アルヴィース、さ」

「なに?」

「よく、変な人って、いわれない?」

「言われねぇよいきなりどうした」


どことなく、アルヴィースは今まで出会って来た者達とは何かが違う気がした。それ故にリーヴは聞いてみたのだが、よく考えれば彼の周囲の人間は彼の調子に慣れている筈なので当たり前ではあった。


「他人の記憶に干渉するなんて…あなたは一体、何を司る神なのですか?」


クオンが不思議そうに聞くと、アルヴィースは『やれやれ』とでも言いそうなテンションで面倒そうに答える。


「話すと長いんだよね……ま、とりあえず大体何でも出来るって思っとけばいいよ」

「ええ…そんなの、ずるい、よ」


リーヴは苦笑いである。


「話を戻そうか。僕が来たのは自分の尻拭いの為…『ノーノゥ』の件なんだけどね」

「…?ノーノゥ…だれ?」


そこで、アルヴィースは『あっ』と小さく溢してから訂正する。


「そっかそっか…君達はオブリビオンって名前で呼んでるんだっけ」

「そうだけど…なにか、ちがうの?」

「うん。オブリビオンはアイツが後から名乗り始めた名前だよ。彼の本当の名前は『ノーノゥ』…ま、神名はオブリビオンって認識でいいと思うけどね」

「何でそんな事知ってるの?それが君の権能だから?」

「そうでもあるけど、それは1番の理由じゃない。何しろ僕は…」


「ノーノゥの生みの親だからね」


4人は絶句していた。色々と言いたい事はあるのだが、まずリーヴが言ったのは…


「…出産した、ってこと?」

「字が違ぇよ。生みはしたけど産んではねぇんだよ」


媒体ならではの台詞はやめてくれないか。


「だったら、どういうこと…」


ここでリーヴの脳内に浮かんだのは、かつて浮月で聞いた話だ。


「……眷属…?」


そう。神に分類される生物は全て、その圧倒的な魔力量から神器と呼ばれる武器、もしくは眷属と呼ばれる従順な下僕を創る事が出来る。本人曰く『何でも出来る』ような力を持つアルヴィースの眷属ならば、概念種を創り出す程度の事は造作もないのだろう。


「ご名答。ノーノゥは僕の眷属なんだよ。まぁ…昔は色々あったんだけどね」


アルヴィースは目を伏せる。彼とノーノゥの間に何かあったのは、誰の目にも明らかだった。


「…でだ。君達には僕に協力してもらいたい。後々話すけど、彼の抱く苦しみや怒りは相当なものだ。そもそも僕はその原因だから、僕は彼を救いたい…が、僕じゃ多分無理だ。ノーノゥは僕を嫌ってるからさ。でも君達なら…もっと言うと、リーヴ。僕の助けが無くても彼を覚えていられる君なら、ノーノゥを救えるかもしれないって思ってるんだ」


リーヴは迷っていた。幸か不幸か、リーヴは最近になって人を疑う事を覚えた。アルヴィースの事はあまり疑っていないが、それでもセラやクオン達のように全幅の信頼を寄せている訳でもなかった。


「…うーん…」

「まぁ迷うよね。じゃあ、対価と言っては何だけど…君達の知りたい事を何でも教えてあげようか」

(余計怪しさが増したけど…そんな事本当に出来るの?)

「出来るよセラ。ああ、本名はセリュミエルだっけ」

「えっ……どうしてあたしの名前を…!」

「ご覧の通り、僕はこの世界の全てを知ってるんだ。前の《物語》では…『全てを知る者』とか呼ばれてたけどね。これで疑う余地は無いだろ?さぁ、何でも聞いてくれ。これが対価になるのかと聞かれれば……僕は何も言えないけどね」


ノーノゥとの戦闘が終わったかと思えば、今度は『全てを知る者』による質問コーナーが始まった。

キャラクタープロフィール

【惨界再臨】アルヴィース

種族 神

所属 地球

好きなもの 和食 ゲーム

嫌いなもの 虫 世界

権能 ① この世界の全てを知り、それらに干渉する力

   ② 熟語で表せる物の力を操る力

作者コメント

帰れ。前作の最強が今作にも出しゃばってくるな。まあまあ特別な存在だが種族的には一応神。ちなみに地毛は黒髪。実は前作では黒髪だったが、今作は偶然にも黒髪キャラが増えてしまったのでアルヴィースには髪を染めてもらった。ごめんね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ