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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第104話 逆徒と夢

幻と流離の目的を知り、明日から悪夢の概念種『現』を探し出して、幻の力を取り戻す為の行動を開始しようという事になった。

リーヴ達は手早く夕食を済ませて、明日に備えて早めに寝る事にした。しかし、なんとなく眠れないリーヴは『もそもそ』と布団から出て、眠くなるまで暇を潰す事にした。


「…で、何故お前がここに居る」

「ふふ。暇だった、から」


1分も経たないうちに、リーヴは流離の部屋のベッドの横に立っていた。リーヴの顔を見るなり嫌そうに毛布から顔を出した流離は、溜め息と共にリーヴを諭す。


「年頃の女が不用意に男の寝床に来るものじゃない」

「なんで?」

「なんで……そういうものだからだ」

「ふぅん」

「それより寝かせてくれないか。ここ最近はずっと野宿だったから布団での睡眠を享受したいんだ」


こんな時(睡眠時)でも流離の傍らにはあの赫刀が置いてある事から、流離の用心深さが見て取れる。


「わたしが眠くなるまで…お話ししてくれない?なったら、すぐ帰る、よ」


別に流離は異性に対して特別な感情を抱いた事は無いし、今だってリーヴに対して抱いている感情はせいぜい『早く帰れ』程度のものだろう。しかし、流離は何故かリーヴのような純粋な目をした者の頼みは断れないのだ。


「…はぁ。分かった。なら、俺と幻の出会った日の事でも話すとしよう」

「おー…たしかに、きになる」


流離はゆっくりと身体を起こし、リーヴはわくわくしながら流離の言葉を待っている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とある夜、とある星にて。流離は街外れの木に背中を預けて、刀を抱えたまま眠っていた。


「…」


寝息を立てる事も体勢を変える事も無いまま、流離は静かに夢の中を揺蕩っている。そこに、1人の白髪の人影が近づいて来た。誰あろう、幻である。

流離はその気配に気づき、一瞬で目を覚まして素早く刀に手をかけた。


「…誰だ」

「ご…ごめんなさい。あなたを驚かせるつもりは無かったの…もちろん、危害を加える気も無いわ」

「誰だと聞いている」

「…そうね、まずは名乗るのが礼儀だもの。私は幻、夢を司る概念種よ。概念種については知っているかしら?」

「ああ…俺も、概念種と呼ばれる存在に顔見知りが居るからな」

「そう、それなら話が早いわ。実はあなたに頼みたい事があって…」


幻は日中に話した内容と大体同じ事を流離に説明した。


「…なるほどな。つまりは、実体を失って夢の中にしか存在出来ないお前の代わりに、その現とやらをどうにかして欲しい…という訳か」

「ええ。頼まれてくれるかしら」

「……まぁいいだろう。どうせ()()同行者も居ない…それに、俺の知り合いの真似事をしてみるのもまた一興だろう。ただし…1つ約束してくれ」

「何をかしら?無理なものでなければ大丈夫よ」


「…決して、俺の目の届く場所で死ぬな」


「えっと…それだけ?」

「ああ。それさえ守ってくれればいい。俺はお前に協力しよう」

「そう……とにかく、ありがとう。助かるわ」


すると、幻は柔らかく微笑んだ。


「1つ聞かせてくれ。お前は何故俺を選んだ?実力か?」

「いいえ…実はこっそり、あなたの夢を覗かせてもらったの」

「は?」


その台詞に、流離は真顔のまま目を丸くする。


「私も夢を体現する存在だから…夢を覗けば、そこから色々な事が分かるのよ。例えば…まだ名乗っていないあなたの『流離』という名前…これが偽名だという事も」

「…ほう。流石は夢の概念種だな」

「それと…流離という名前を考えた時のあなたが、少しだけ自画自賛をしていた事…んむっ」


僅かな魔力で実体を創り出していた幻がそこまで言いかけた時、流離が幻の口を手で塞いだ。


「…答えになってないぞ」

「ええ…そうね。と言っても、正直なところ理由は特に無いわ。強いて言うなら…あなたに恐怖心がほとんど無かった事かしら。現や凶夢の破片は、恐怖を利用してくるから…」

「…そうか」

「ふぅ…そろそろ実体を維持するのも辛くなってきたわ……一旦お別れよ、また会いましょう」


そう短く言い残して、幻の姿は淡く輝く泡になって消えていった。


「俺の…生きる理由…」


その泡を見つめながら、流離はそう小さく呟いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…まぁ、こんな流れだな」

「そう……なんだ。しらない…ひとに会っても、慌てない…って……流離は、肝が据わってる……ね」


リーヴは酷く眠たそうである。その様子を見兼ねた流離は、小さく息を吐いてからリーヴに言う。


「…眠いなら寝ていいぞ。自分達の部屋でな」

「う……ん…」


それが、彼女の最後の台詞だった。


「矛盾してるじゃないか…」


自分の毛布の端を握りしめて寝息を立てるリーヴを見ながら、流離は『リーヴをどうするか』という事だけを考えていた。

2分ほど悩んだ末に、結局流離がリーヴを抱えて部屋まで返却する事にした。運ばれている間、リーヴは全く目を覚ます気配すら無く、流離は心底寝たそうな顔をし、リーヴを受け取ったセラはすごく申し訳無さそうな顔をしていたという。

【遥か夢中の桃源郷】げん(神名 ユメノウキフネ)

種族 概念種

所属 なし

好きなもの 寝る事 他人との会話 鳥

嫌いなもの 戦闘 爬虫類

権能 「夢」

作者コメント

初期設定だと低身長ショタだったやつ。それが今はリーヴと変わらん身長の少女に。人生何があるかわからんね。イメージした動物はシマエナガ。聖穢大戦の被害を1番モロに受けている個人は多分こいつ。半ば強制的に嫌いな戦場に駆り出された挙句、規格外の存在にワンパンされた上に身体の自由を奪われるという。ちなみに、まだ先にはなりますが後のとあるストーリーで結構重要な立ち位置に居るので、こいつの事は覚えておいてください。

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