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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第102話 すごくふつうにみつかった

今回、久しぶりに明るめの話…か?

リーヴ、アルシェンの夢の中に出て来たという青年…もとい流離を探す為、4人は支度を済ませてから街に出た。


「でも…夢に出て来たからって、現実の流離が詳しい事情を知ってるとは限らないんじゃないのかな」


少し歩いた時、セラが不安そうに呟いた。


「確かに…そもそも夢の中…夢界でしたっけ。生身の人間がそこに入る方法なんてあるのでしょうか?」


セラに続いて、アルシェンも首を傾げている。


「何はともあれ…他に手がかりはありませんし、私は流離さんを探すのが1番だと思います」

「まぁそうだね」


それからすぐに、リーヴがセラとクオンに向かって質問する。


「ねぇ。2人は、流離って人と知り合いなんだよね。どこにいそうとか、わかる?」

「うーん…初めて会った時はお団子屋さんで会ったけど…」

「この星にあるとは限りませんよね…」

「ちょっと探してみよっか」


言い出したのはリーヴなので、リーヴが道行く適当な人に団子屋の有無を聞く事になった。特に何の滞りも無く、数分程して帰って来たリーヴは調査の結果を告げる。


「えっと、ね。お団子屋さんは、この道をまっすぐ行って、右に曲がったところにあるんだって」

「あるんですか…」

「おいしいもんね」

「あと、大人の隠れ家はこの道を引き返して…うわっ」


その台詞を聞いた瞬間、セラは『スパンッ』とリーヴの両頬を両手で挟んだ。


「リーヴ、次それ言ったらほっぺ伸ばすよ」

「…?うん」

(ほっぺ伸ばすって何ですか)

(セラちゃんの脅しって独特ですね…)


というかどうしてリーヴはそこまでキャ◯クラに執着するんだ。そもそも『そういう店名』ってだけで、この星の『大人の隠れ家』は普通の温泉とか酒場とかかもしれないじゃないか。セラも大概心が汚れていると思うんだ、私。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リーヴが聞いてきた情報通りに団子屋を目指し、特に何も無く辿り着いた4人は、店の前に立って話し始める。


「…今更ですが、本当に居るんでしょうか?」

「どのみち居そうな場所はここしか無いし…とりあえず入ろうよ」


とは言ったものの、セラも正直言って流離と会う事は叶わないだろうと思っていた。しかし…


「あ、あの人だよ」

「いた」

「…普通にいらっしゃいましたね」

「お団子食べてますね…」


店内に入ると、2秒と経たない内に流離が見つかった。何だか拍子抜けした4人は、数秒ほど流離を見つめていた。すると、流離も4人の視線に気づいたのか、団子を食べきってから近づいてきた。


「…久しぶりだな。まさかこんな場所で会うとは思わなかったが」

「お久しぶりです、流離さん。お変わりありませんか?」

「ああ」


あまりにも流離があっさり見つかったので、4人は危うく本来の目的を忘れるところだった。


「あ、そうだ…流離、この子を見てほしいんだけど…」


そう言いながら、セラはリーヴを流離の前に連れて来る。


「…お前は」

「セラから、話はきいてるよ。わたし、リーヴ。ふふ…またあった、ね」

「この子、覚えてない?実はあたし達、この星に最近出るって言う黒い魔物の事を調べてて…」


セラが経緯を説明しようとした時、流離が手を出して遮った。


「…いや、いい。おおよそ見当は付いている。確認も不要だ、どうせ正解だからな。それより…ここはこの話をするのに向いていない。ひとまず店を出るぞ」


無事に流離と出会えた4人は、店を出て人気の無い路地裏に移動した。


「…さて。お前達が知りたいのは、大方俺が何故夢界に居たのか。そして、あの黒い魔物は何なのか、と言ったところだろう?」

「…はい。教えていただけますか?」

「構わない。が…見返りとして、俺の役目を手伝う事が条件だ」

「別に、いいよ。みんなは?」

「いいよ」

「私もです」

「はい!」


セラ、クオン、アルシェンはほぼ同時に返事をした。それを見た流離は、表情を変えずに話を続ける。


「…決まりだな。まずあの黒い魔物だが…あれは『凶夢の破片』と言って、人々の悪夢が夢界から剥がれ落ち、現実に生まれてしまったものだ。まぁ、今は訳あって夢界にも湧いている訳だが。奴らは目の前の人間の恐怖や嫌悪を探り、その元となる存在の形に変化する事が出来る」

「だからあの時、凶月教の信者みたいな見た目に変わったんだ…」

「そうだ。そして次に、俺の役目と夢界に関してだが…」


流離がそこまで言った時、流離の隣に淡く輝く泡が出現した。それらは次第に数を増やしていき、徐々に人の形になって、最終的には無数の泡の中から人が出て来た。それは、セラやクオンが夢で見た白髪の少女だった。


「君は…!」

「何だ(げん)、出て来たのか」

「ええ。夢界の事なら、私の方がよく知っているもの。私が説明するわ」


幻、と呼ばれたその少女は、リーヴ達に向き直って小さく『うふふ』と笑った。敵意は感じないが、この少女は一体何者なのだろうか。リーヴ達の内心は、そんな気持ちでいっぱいだった。

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