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大宙の彷徨者  作者: Isel
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第1話 なにもないもの

始まりました、私の趣味全開の作品です

前作と繋がる部分も幾つかあるんですが、前作を知らなくても充分楽しめるのでご安心ください

人々が『地球』と呼んだ星。とある記憶喪失の青年が自らの素性を知る為に旅に出て、様々な出会いを繰り返し、最終的には2回ほどその青年に救われた星から、遥か遠くまで離れた場所。俗に『宇宙』と呼ばれる場所で、彼女は目覚めた。肩の下辺りまで伸びた灰色の髪が特徴的である。

「……」

彼女が目覚めてから最初に抱いた感情は『戸惑い』だった。何故自分がここに居るのか、そもそも自分は誰なのか、何も分からないからである。そしてその瞬間、彼女はある事を本能的に理解する。

「わたし…は、からっぽ?」

そう。彼女の中には何も無い。先程『戸惑い』を抱いたとは言ったが、それも微々たるものだ。悲しみも、寂しさも、現状を知ろうとする意欲も存在しない。一言で言うならば、彼女は『無』なのだ。

「…さむい」

先程、彼女には何も無いと言った。それ即ち、今の彼女は服を着ていないという事である。『服』という概念を知ってはいるものの、彼女にはそれをどう調達するかは分からない。大体ここは宇宙空間だ。

「…?」

彼女がぼんやりと『服を着たい』などと願った時、彼女の胸の前に金色の光が現れて、彼女の全身を包んでいった。

「…わ」

すると、なんと彼女の全身はしっかりとした衣服に包まれていた。上半身は肩が見える白いインナーと黒いフード付きのロングパーカーで、下半身にはパーカーと同じような黒色のショートパンツを着ていた。

「あったかい……けど、どうして…?」

彼女の戸惑いは増すばかりである。分からない事を考えていても仕方がないので、彼女は人里を目指す事にした…が

「……どうすれば、いいんだろう」

彼女が試行錯誤していると、ふと頭の中にあるイメージが湧いて来た。

「…できる、かな」

彼女はゆっくりと右手を正面の空間に翳す。すると、そこに虹色の光を放つ穴が現れた。

「あ…できた」

その穴がどこに繋がっているのかは分からない。だが、彼女は自分の勘を信じて虹色の穴に飛び込んでみた。一瞬だけ、彼女の視界は眩い光でいっぱいになる。その光が収まった時、彼女は果てしなく広大な砂漠のど真ん中に倒れていた。

「うぇ…じゃりじゃりする」

口に入った砂を吐き出している時、彼女に近づく1人の人影があった。足音に気づいた彼女は、その人影の方を向く。

「あ…」

人影の正体は、等身大の杖をついている少女だった。背中の真ん中辺りまで伸びた銀髪と、翡翠色の綺麗な瞳、そしてヘアバンドのように額に巻いたリボンが特徴的である。その少女は、目を合わせると澄んだ声で自己紹介を始めた。

「こ…こんにちは。あたしは『セラ』…この近くの村に住んでるの。君の…名前は?」

「わたし、は…」

彼女はまたもや困惑していた。彼女には名乗るような名前が無いのである。

「うん、君は?」

「え、っと…」

咄嗟に名前を考えようにも、目覚めたばかりの彼女にそれは難しい。もう観念した彼女は、仕方なくこう名乗った。

「…彷徨者」

それは、彼女が知っている数少ない言葉の1つだった。その中から、最も自分に近い言葉を選んだのだろう。

「変わった…名前だね」

セラは少し驚いたような表情をしている。

「でも…彷徨者って事は、旅をしてる人って事かな?」

「あ、うん…多分」

「なら、あたしの村においでよ。特に何も無いけど…雨風くらいは凌げるよ」

「じゃあ…行く」

彼女…改め、彷徨者はセラの隣を歩いていく。時折セラがフラッとするのが気になったが、気になるだけで留まった。しばらく歩いた頃、2人の目の前に3匹のサソリ型の魔物が現れた。

「わ…」

彷徨者は反射的に足を止めた。と、同時にある事実に気づかされる。そう、彷徨者には戦闘手段が無いのである。どうしようかと思案していた時、意外な人物が行動を起こした。

「はぁっ!」

先程まで杖を頼りにして歩いていたセラが双剣を握り、光を纏いながら魔物を一瞬にして全滅させたのだ。セラは特に何も無かったかのように双剣を消し、地面に倒れた杖を拾う。

「…すごい」

無意識のうちに、彷徨者の口からそんな言葉が漏れ出た。

「あはは…ありがと」

セラは少し照れ臭そうに頬を掻きながら笑う。

「今のは、どうやったの?」

「えっと…村に着いたら、詳しく教えてあげるね」

またしばらく歩いた頃、少し遠くの方にうっすらと村のようなものが見えてきた。

「あれが、セラの村?」

だが、セラからの返答は無い。気になった彷徨者が後ろを振り返ってみると、なんと彷徨者の2,3歩後ろの辺りでうつ伏せに倒れているセラの姿があった。

「えっ」

彷徨者の旅は、初日から波乱である。

主人公の台詞が若干読みにくかったら申し訳ないです

彼女の人柄を表す術なので…

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