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あかい骨

作者: 合沢 時

あなたには、霊感は無いのですね? 少しでも霊感があるのなら、下の文は読んだらいけません。


 噂では霊感を持つ者は決して見てはいけないと言われていた。

 確かに、その題名を目にした時、奇妙な感覚になった。何故か嫌な予感がした。

 原本は古びた古書だったらしいが、誰かが小説投稿サイトに載せてしまった。したがって不特定多数の者が見ることが出来る状態になった。

 その話のあらすじとして書いてある文章もおかしかった。

 あらすじが、あらすじとしての体をなしていなかった。一見すると、その題名に興味をもった者を、煽っているようにもとれた。

 あらすじには、こう書かれていた。

 

 これは、呪いの話です。少しでも霊感がある者が読むと、呪われてしまうかもしれません。霊感があると自覚している人は、決して読まないで下さい。責任はもちません。あかい骨は、昔、ある村の


 そこで、唐突に終わっている。

 噂では、あかい骨という物語の中に、呪文が紛れ込んでいるらしかった。

 私は、あかい骨の話に興味をもったが、本文を見るのは躊躇われた。何故なら、私には霊感があったからだ。霊感といっても大したものではなく、たまに見えてしまうという受動的な霊感だ。

 あかい骨という物語が、本当に呪われた話だとしたら、それを読んだことによって、どんなことが自分の身に起こるのだろうか。

 怖くなった私は、読むのを止めた。


 三日後、私は、あかい骨に魅入られてしまったのかもしれない。読みたいという欲求の方が、見てはいけないという理性に勝ってしまった。

 ついに、私は震える手で、小説投稿サイトの「本文を読む」のボタンを押した。


 前書きにも気になる文があった。


 あなたには、霊感は無いのですね? 少しでも霊感があるのなら、下の文は読んだらいけません。


 しかし、私は本文に目を移した。


 




 あかい骨は、昔、ある村の。

 

 アジサイが黒く変わる。


 気の触れた女が、踊り狂う。月のものの血。

 流れる、流れろ、流れろ、流れろ

 地蔵仏の願いは、むなし。


 ほら、あそこ

 ほら、あそこ

 ほら、あそこ

 ほら、そこ         ここよ


 

 あかい骨 砕けた赤い骨 あたいの脚の骨

 いけにえ、喜ばしいいけにえ、名誉ないけにえ

 村のため はん

 あんたらはいい 

 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う

 

 呪ってやる


 真っ赤な花 彼岸花 地獄の花 

 あたいに取ってくださいな

 気が触れた女 おっかあ

   こわいよ おっかあ いたいよ いたいよ

 ぎひひひひひ

     ひぃひぃひぃ ひいぃぃぃ

 血に染った空 青い雲 楽しいな 楽しい


               なにが


 後ろの正面だあれ   あたい 血まみれのあたい


 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う

 呪う 呪う 呪う 呪ってやる


 狂った月が、赤く染まる

 いいきみだ 地獄に落ちろ


 いや、死にたくない 死にたくない

 死にたく         


                おまえが死ねば


 

 

 ねえ、見つけて あたいを見つけて

 見つけてくれたら、連れてってあげる


 





             ほら、後ろにいるよ


 



 赤い骨 あたいの脚の骨 

 折れた脚の骨 突き出た脚の骨      血まみれの脚の骨

 

 突き刺してあげようか


 だれでもいい だれでもいいから 助けて


 ここに来て 助け


 お日様がいない ずっといない 

 赤とんぼ 田んぼ 雨 雨 雨の音

 赤いカラスかないた 赤い水


 つぶれた目ん玉

 きれいね             きたない    白目がにごる 


 うごめくミミズ 赤いミミズ 

 かたまりになったミミズの団子 口の中

 赤いかえる 赤い蛇 赤いとかげ 赤いやもり 赤いいもり

 赤い 血に なれ 白い花


 あした あたい

 あたい あした


 あんたを見てる あたい


 おしっこだまり 血がまじったおしっこだまり

 血だまり 血だまり 

   止まりかけてる心の臓    ドックン ドックン ドッ ド


 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う


 ずっと呪う         は は は は は は は は


 赤い骨 ほら後ろに いるよ


 見ててやる あんたが あたいに気づくまで

   右の目 つぶれた目ん玉 にごった白目


 赤い山羊 赤い猫 


  あたまのちぎれた赤い山羊 

      からだのない赤い猫


 にゃあ にゃあ めえ めえ めえ


 おもえたちも死ね なかよく死ね


 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う 呪う

  呪う 呪う 呪う 呪う


 手をかしてあげようか


 うごかないゆび うごかせないゆび

 赤い骨 あたいの骨

 くさったからだ とけた目ん玉


 手をかしてあげようか


 ぬけていく歯

  ぬけていく髪

   みにくいあたい      きれいでしょ   きれいでしょ


 呪う 呪う 呪う みんな呪う

   みんな地獄に落ちろ 落ちてしまえ  は は は は は は


 さびしいよ くらいよ こわいよ

 あたいがわるいの


    あたいはわるくない


 のろう のろう のろう のろ


 みんなだ のがさない のがすものか


 ずっと ずっと ずっと


 赤い骨 いけにえ あたい

 おまえが死ねば


   ごめんね


      ゆるさない

 のろう のろう

   やっぱり のろってやる


  赤い骨       あたいの赤い骨 あかい


       あかい    のろい

 


 私は読んだことを後悔した。

 読んだ後、いや読んでいる途中から、背後でじっと私を睨んでいる何かがいるような、そんな気配を感じていた。

 これは、明らかに小説ではない。誰が何の目的で載せたのだろうか?

 赤い骨を知った誰かが、自分だけが呪われる恐怖から逃れるために、他の者を道連れにしようとしたのではないか?

 だから、後書きに、哀れむような、そして小馬鹿にしたような文が書いてあったのだ。

 きっとそうだ。    私も、

 とうとう読んでしまったのですね。仕方ありません。赤い骨は、霊感がある者を惹きつけてしまうのですから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の最後での、主人公の、取り込まれた感というか呪われてしまった感。 [気になる点] 妙にラップ感があって長く続くので、不気味さは薄かったです。主人公が読み進めている際の気分などの変化など…
[良い点] ビックリするくらいグロテスクでスプラッタなホラーで驚きました。ホラーというより呪いの詩に近いと思いましたが、私には詩の才能がないので全くこういうのは書けないですね。 [一言] 途中で引き返…
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