表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第3章 アルバム
39/51

第38話 初めての友達⑤

 「アイツ、全く何やってんのよ!」


 ルカがまたシンシアにケンカを吹っかけたと聞いて、アネットは現場に駆け出した。


 やっとのことで現場についたアネットは瞠目した。

「はぁ?!」


 先ず、仲裁に来たのが自分達の寮長ではなく、赤の寮長アレックスであったこと。次に、一匹狼で他人と関わりことのないと言われていたアレックスが、見たことのない甘い甘い表情でシンシアと抱き合っていたからだ。


 アネットは二度見、三度見どころではなく、何度も見てしまった。その間にチラっと視界に入ったルカは、無視したが。


 あの2人って……デキてるの……?


 そう思ったアネットは気まずいと、目のやり場に困った。とりあえずルカに目線を向けて、「ご愁傷様」と心の中で伝えた。それから桜とミモザの花壇を見て、「春だね」と気を紛らわせた。



 *




 シンシアは、ルカの元へローブを翻して歩くアレックスの後ろ姿を、ぽぅっと見つめていた。

「キュー」

 そこへ、キュリウスが白薔薇の髪留めをシンシアに返しにきた。

「あっ。キューちゃん。ありがとね」

 シンシアが髪留めをつけてると、いつの間にかアネットがいた。


「ほら、上着とローブ。持ってきてあげたよ」

「えっ、アネット?ありがとう」


 シンシアはアネットから上着とローブを受け取った。それを着ると暖かくなるが、アレックスの指先が触れた頬の方が熱く感じた。


 なんだろう……凄くドキドキする。1戦終わった心拍数と体温とは違う気がする……






 一方、ルカはシンシアと全く異なる心境で、心拍数が上がっていった。アレックスに振り払われた後、立ち上がれずにいたのだ。


 ヤベー……ヤベー……


 今のルカの頭の中に浮かぶ言葉は「ヤベー」しかなかった。一歩ずつ近付くアレックスに左手の痙攣が始まった。


「ルーカス、ヤきが足りなかったようだな」

 ルカが見上げるとルカの前に来たアレックスが、静かに言い放つ。突き刺さる殺気と視線。



「いえ、あの、その」

 アレックスは銀髪ではないが、姿が獣の瞳に牙に爪に変わっている。


 その姿にルカの過去の記憶が蘇る。


 過去にもルカはケントに同じ様なことを仕出かしていた。ルカはアレックスの弟がどれだデキるか、そもそも魔法が苦手なアレックスが本当に強いのか、自分の方が上だと見せたかった。

 こうしてルカは先ずケントに仕掛けたのだ。そこへ幸か不幸かアレックスが来た。黒から徐々に銀色に変わる髪、獣の耳、牙に爪。この時、アレックスが獣人であったことを初めて知ったのだ。更に、放たれる殺気や凄味に、ルカは自分が手を出してはいけない人物だと悟ったのだ。



 アレックスがかなりの熱を放っている筈なのに、ルカの寒気が止まらない。あの時、掴まれ重度の火傷を負った左手首が痙攣している。あの時に刻まれた捕食者と被捕食者の関係。喰われる側の兎だと分からされたルカは謝り倒すしかなかった。



「申し訳ありませんでした」

「今日の所はシシィに免じて減点なしにしてやるが、次は無いぞ」

「はは、はひ」


 助かったぁと安堵したルカはぱぁと喜んだが、話はまだ終わっていなかった。


「ルーカスはシシィ、シンシアと同じクラスだったよな?」

「ええ、それが何か?」

 アレックスが先程の震え上がる静かな怒りと変わり、真面目なトーンになり、ルカは緊張感が高まった。


「シシィは可愛いよな?あんなに可愛いと男が寄ってきたり誘拐されて監禁されて手籠めにされたりとか心配なんだ。正直、お前では不安だがケントよりはましだろうし、アネットもいるから大丈夫だとは思うが」

「えー……」

「寮では俺と一緒だからいいんだけど、学年違うと下のクラスまでなかなか行けないだろ?俺が卒業した後も心配だから、シンシアに危険がないようアネットと護ってくれないか」


 因みにアネットにはまだ話してない。双子の性か、常にセット扱いである。


「あのう、シンシアとはどのようなご関係で?」

 シンシアに対するアレックスの重たい感情に、ルカは質問してしまった。


「シシィは俺の愛しい愛しい最愛のお姫様で、俺の恋人で、花嫁で、未来の奥さんだ」

 見たことのない満面の笑みで答えるアレックスに、


 終わった…



 と、そうルカは悟った。





 *


 晴れ晴れとしたアレックスとどんよりとしたルカがシンシアの元に戻ってきた。


 アレックスはシンシアにプレゼントするように、ルカを差し出した。

「シシィ。ルーカスは舎弟、下僕そんな感じで好きなように使っていいから」

 どういう経緯でそうなったか分からないが、シンシアの欲しいものではなかった。

「お友達がいいな」

 対等の立場で、一緒に勉強して遊んでご飯を食べる友達が欲しかったのだ。


 シンシアがルカの友達になる、そんな場面に焦ったアネットが怒涛の勢いで割って入ってきた。アネットは必死になってシンシアに訴えた。

「あんなヤツなんかより、アタシと友達になろう、ね」


 アネットは長身とキツ目の性格だが、かわいい物好きである。そんなアネットは、ふんわりぽわぽわした小さくてかわいいシンシアと、友達になりたくて仕方なかったのであった。

「アネットもお友達になってくれるの?」

「もちろん!!」

 ビックリして小声になってしまったシンシアに、アネットは勢い良く応えた。

「アル、私、初めてお友達が出来たよ」

「良かったね」

「かわいい。なんてかわいいのーこのコ」

 嬉しそうに微笑み合うシンシアとアレックスに、アネットはキャーキャーはしゃいでいた。



「ルカもお友達になってくれるよね?」

「あぁ」

 シンシアはルカを見ると不安そうに話かけた。


 シンシアと友達になるはいいが、バックに控える存在が怖すぎる。ぽわぽわしたシンシア達とは対照的に、ルカはびくびく縮こまっていた。拒否権のないルカはどうにか声を絞り出した。



 こうして、お姫様の初めての学園生活で、初めてのお友達ができました。

キャラ身長設定 

アレックス、ロイ 183cm

アネット、ルカ  175cm

シンシア     147cm

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ