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野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第3章 アルバム
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第36話 初めての友達③

 「行っちゃったね……キューちゃん。どうしよか?」

 ロイにアレックスが連れて行かれ一人残されたシンシアは、使い魔のクリスタルドラゴンのキュリウスを撫でながら呟いた。初めての場所でアレックスが隣にいなくなり、心細くなったのだ。

「夕方までに寮に戻ればいいって言ってたから、それまで学校見てようね」

 がしかし、寂しさよりも好奇心が勝ったシンシアはキュリウスと学園探索をすることにした。


 *


 ダグラス学園は、約400年前の魔女狩りから地図にない島に逃げてきた魔法使い達が、自分達の研究の場所として弟子達の学び舎として建てたものだ。幼稚園から中等部の校舎は現代の国の義務教育制度に合わせて増築されたものだが、高等部の校舎と学生寮は当時の建屋である。


 シンシアはキュリウスを連れて、芸術鑑賞の気分でこれから授業で使うであろう歴史を感じさせる建物をみて周っていた。学園内の廊下には絵画や肖像画があり、壁や柱には鷹や燕などの鳥達のレリーフや彫刻があり、鉄の柵にも鳥の模様や飾りがあった。

「キレイだね。柱の彫刻とか、絵とかホントに見られているみたい」


 植え込みや花壇には季節の花が咲いていて、手入れされた垣根や庭、舗装された道にただただ感心していた。

「スゴいね、キューちゃん」

「キューキュー」


 吹き抜ける風はまだ冷たいが、晴れた午後の春の陽射しは暖かい。シンシアは長閑な昼下がり、移動教室で行く校舎や体育館、魔法の授業の演習場、職員室、救護室など回って、最後に図書館へ向かおうとしていた。

 「キューちゃん、次は図書館行こうか。案内図だと南の方にあるみたいだよ」



 *



「風が吹くとローブ着ててもまだ寒いね。キューちゃん」

 シンシアが風舞う桜の花びらの中、広い学園を探索していると、不意にルカが後から話しかけてきた。


「なんだ? 迷子か? ウチの寮に用でもあんのか?」


シンシアは今朝のアネットの言葉を思い出した。


 確か……ルカとアネットは同じ黄色のスウォーレン寮だったね



 シンシアの目的地の図書館は高等部の校舎からかなり離れた南側の場所にある。ルカの所属するスウォーレン寮は高等部校舎の南側だ。シンボルである聖獣の方角に合わせた場所に、学生寮が配置されているのだとシンシアは気づいた。


 ルカは教室の時と同じく噛みつくように向かってきた。シンシアはルカの機嫌を損ねるようなことはしてないはずなのに、何故喧嘩腰なのかわからない。とりあえずシンシアは話しかけられたので応えた。モゴモゴで尻窄みになってしまったが。

「えーと……と、図書館行こうと思って……」

「ガリ勉ヤローだったか? チビだしな。この学校は勉強だけできてもムダだぞ?」

 読書家のシンシアはただ単に気になるから、行きたいだけなのだけだ。シンシアは、身長と勉強は関係ないと思うが、ルカは勉強が好きではないのかと教室でのやり取りを思い出した。


「そういえばルカはペーパーテストの成績、下の方だって言ってたね」

 シンシアのこの何気ない呟きがルカに聞こえたようだ。

「バカにしてんのか?!」

 とルカが左拳で稲妻の如く殴りかかった。



 予測できなかったルカの動きと、慣れないブカブカのローブと制服にシンシアの反応が遅れた。ルカの拳はシンシアに届かなかった。硬い何かにぶつかった音で、シンシアは護りの加護が防いでくれたと察した。


 お母さん……いつも護ってくれてありがとう。今は大丈夫だよ。だって、私、自分で戦えるから


 *


 得体の知れない壁に阻まれたルカは、防がれたことに顔を顰めた。距離を取るシンシアに、「この位出来て当然なのか」と見くびっていたことを改めた。

「ちったあ出来るみてーだな」

 痛がる素振りで左手の甲を擦ってから、

「けどよおを、オレ様のが強えっことを教えてやる!!」

 と、激昂したルカは己の力を誇示すべくシンシアに向かった。



 *


 シンシアはルカから一旦距離を取った。そして、よくわからない因縁をつけてきたルカは、打ち負かす相手だと認識を切り替えた。


「キューちゃん、これ預けるね」

 と、アレックスから貰った大切な白い薔薇の髪留めをキュリウスに預けた。シンシアはキュリウスが「キューキュー」と頷き離れたのを見届けから、ルカと対峙した。


 最初にルカは殴りかかってきたので、シンシアも素手で挑んだ。先ず、シンシアは素早くルカの懐に潜り込み左拳で突き上げた。


「はあっ?!」

 そんなシンシアにルカ面食らったようだが、後へ下がりガードした。シンシアは飛び込んだ勢いを利用してルカの肩に回し蹴りを入れようと跳んだが、ローブの裾が邪魔で縺れてしまった。


「動きにくい」

 と呟き、とたとたとシンシアは場を離れローブと制服の上着を脱いだ。几帳面に畳んで小脇のミモザの花壇に置いて、今度は勢い良く踏み込み、ルカに跳び蹴りを食らわせた。

「うん、動きやすくなった」

 シンシアは蹲るルカを見据え、集中していった。


 *


 魔法の撃ち合いを想定していたが、意外と武闘派だったシンシアにルカは思う様に立ち回れずにいた。そのためルカはシンシアの跳び蹴りから受け身が上手く取れず倒れた。


 チビの女に殴り合いで負けたらなめられる……。オレ様のが強えって認めさせてやるんだ!!


 ルカはシンシアに自分の強さを認めさせたい一心で、挑んでくるシンシアに応戦する。



 集中力を高めていくシンシアはルカの懐に入ろうとするが、振り払われたり蹴りで牽制されてしまった。その度にシンシアは、アレックスとの稽古と比較した。


 (距離感が掴みにくい。構えがアルと鏡映し……私と同じ左利きかな?)




 *


 一方その頃アレックスは周りの空気も気にせず、会議でシンシアへの愛を語っていた。右手のブレスレットを愛おしそうになで、切なげに彼方を見つめながら、自分の世界に入っていた。


 「シンシア……シシィはな、可愛いんだ、綺麗で……」





シンシアとルカは左利き

アレックスとアネットは右利き

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