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野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第2章 新しいページ
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第30話 染まる色①

ヒスイ伯父さん質問タイム

 アレックスがヤレヤレと溜め息交じりにシンシアに声をかけた。

「シシィ、それシシィの伯父さんだよ」

「おじさん?」

 伯父さんと言われ、はっとしたシンシアは自分の魔法で作り出した水晶のナイフを首元から離し、男の上から離れた。


 立ち上がった男を確認すると、確かにシンシアの伯父、ヒスイだった。

「伯父さん?」

「シンシアか?久しぶりだな。大きくなったな。つーか、何だ?その物騒なエモノは? ほら、よこせ」

 ヒスイは不思議そうにしているシンシアの左手から、水晶のナイフを取り上げた。



 シンシアは近くで見たヒスイに、シンシアの覚えている顔と声と出で立ちから、本物の伯父だと判断した。しかし、あれから数百年経った今、何故生きているのか?

 自分の親族が生きていたことは喜ぶことだが、疑問が尽きないシンシアは、戸惑っていた。


 アレックスはシンシアを抱き寄せてから、ヒスイに訊いた。

「何でここに来たの? 義伯父さん」

「テメェはオジさん呼ばわりすんな! まあ、この結界の内側に誰か入って行ったのを探知して来てみたらお前らだったからな。ちょっと小突いてみようとしたらあのザマだ」


 ヒスイの言葉に、アレックスの初めて知る情報が出てきた。その他にも、アレックスはヒスイのには知らないことが沢山あることに気づいた。


「何で真っ先に飛び出したのがシンシアなんだ?テメェの仕事じゃないのか?」

 ヒスイがアレックスを睨んだ。続けてヒスイは、シンシアにも杖で頭を小突いて小言を言う。アレックスはヒスイの言うことは尤もで、反論せず黙っていた。

「シンシア、お前も前に出ていくな!危ないだろうが」

「ごめんなさい。アルが怪我するの嫌で」

 シンシアも、咄嗟に飛び出したのは危ないのは確かだと少し反省した。ヒスイは反省するシンシアに満足するも、アルの名が引っかかった。

「アル?」


 アレックスはヒスイが自分の名前を確認で呟いたと分かるが、シンシア以外から口にされたくない。アレックスは少し不機嫌な口調で、ヒスイに名乗った。

「アレックスだ。アルの呼び名はシシィだけだ」

「ああ、アレックスか。わかった」


 *


 暫く沈黙が続いた。沈黙の間、ヒスイはアレックスとシンシアの距離が近いことにイライラ、モヤモヤ、ムカムカしていた。

 アレックスは何から訊くべきか考えていた。

 シンシアは何をは話したらいいか分からずあたふたしていた。そんな時、キュリウスが飛んできた。キュリウスはヒスイの頭をプンスカ怒りながら突いている。

「キューちゃん、伯父さん突かないで」

「キュリウス、あんまり突っつくなよ」

 アレックスとシンシアは、初めて見る知らない男に警戒しているのだろうと思った。


「こいつキュリウスって名前付けたのか?」

 しかし、ヒスイの落ち着いた反応とこの台詞に、初めてキュリウスを見る反応ではないとアレックスは感じた。

「義伯父さん、キュリウス知ってんの?」

 驚きを隠せないアレックスがヒスイに訊いた。

「ああ、こいつはシンシアの魔力の結晶を核にオレが作ったからな。オレの代わりにシンシアを見守る役としてな。あとシンシアが目が覚めたら、使い魔として側にいるようにな」

 ヒスイは木に寄りかかり、淡々と説明した。

 初めて明かされたキュリウスの話に、シンシアは心打たれた。キュリスがずっと前から自分の側にいてくれたことに。


「まあ、こいつの扱いはペットみたいに世話して、たまにお遣い頼む位でいいぞ。餌は無くていいけど、たまにはこういうの食わせてみな。で、他に訊きたいことは?」

 ヒスイはキュリウスに魔法の結晶を食べさせながら、得意気な表情でシンシアとアレックスに話す。待ってましたとばかりにアレックスが口を開いた。

「今まで何をしていた?何故生きていた?彼女の出自は?両親は?何故あの屋敷に捨てた?この場所の結界を張ったのは?あの城とシンシアの関係は?」

「多いな。それもそうか。まぁ答えられる範囲で答えてやるよ」


 何も知らないシンシアとアレックスに、ヒスイは、仕方ないなといった態度で語りだした。

「何故生きていたか?だっけか。ほらいるだろ?種族的に長生きな奴とか、数百年生きたりするだろ?あとは長寿の薬とか秘術とか。老化しない術を施したり、そんな薬だったり。永年封印されたりとか、死ねない呪いを掛けられたりとかな。オレの場合はそんな秘術の類だ」

 アレックスは学校で習ったはずだが、シンシアは馴染みがないだろうと思い、解説を入れながらヒスイが語る。


「因みにシンシアはこんな感じで眠っていた」

 更にヒスイは、シンシアが眠っていた状態の説明をした。ヒスイ自身の体を結晶の中に閉じ込めて、すぐに解く。


「あんな風になっていたんだ」

 初めて知る結晶に封印された姿に、シンシアは驚く。


「オレ達の一族はよくあの姿で冬眠か?よくああやって冬を越していたぞ。あの状態になると仮死状態に近いのか?よく分かんねーけどよ、生命活動はしてないんじゃね?だからシンシアは、生まれた年からだと431歳だけど、肉体的には15歳か?誕生日が10日前にあったからな」

 シンシアはヒスイから明かされた自身の一族の話に興味津々であったが、実年齢が判明されると固まってしまった。


「431歳なの……」

 実年齢にショックを受けるシンシア。

 同じくシンシアの出自の話に耳を傾けていたアレックスは、

「シシィの誕生日?! 10日前…祝いたかった」

 と、シンシアの誕生日が終わったことに激しく落胆した。


 ヒスイは激しく落ち込む二人に、気にするトコそこかよ、と思いながらも話を続ける。

「お前ら、いいか? でだ、あの日、オレはシンシアをさっき見せた形で眠らせてこの場所に運んだ。それから特定の人間しか入れない結界を張って、見張り役作って、そいつを待った。待てど暮せど来ないから、ここにシンシアがいると伝えようと考えた訳だ。近くに丁度な、一人しか住んでいなかった立派な城があったから使わせて貰ったんだ。ほら、城には逸話が付き物だろ? で、シンシアをその城のお姫様にして、お姫様が森の奥で眠っているっつー話を作った訳だ。そのお姫様はずっとずっと、唯一人の王子様を待っていたからな」


 あの日とは、アレックスの前世アリーが、名の無い少女を迎えに行く約束を果たすはずだった日だろう。お姫様にしてあげたかった少女が、いつの間にかお姫様に仕立てられて、守られていた。それはアリーを、自分をずっと待っていたからだと解ると、アレックスは胸に込み上げるものがあった。

「あの城の周りの集落は、いつか目覚めたお姫様を迎えて貰い、そこで暮らして行けるように話が伝えられている筈だ」

「この城の伝承って、義伯父さんの作り話?」

 ヒスイの話を聞きながら、アレックスは引っかかることを訊ねた。


「草案を作ったのはオレだけどな。伝承なんて正確に伝わらないだろ?途中で話が変わったり、誇張されたり、嘘か真か検証できないしな。だから真実を交えつつ最初から色々盛っといたぞ。実際に後世に伝えたのは今もいるだろ?城に。ジェバンニ=モリス、そいつだ。因みにあの城建てた本人な、色々訊いてみな。あと、城にある『宝石のお姫様』の絵本はオレが書いた」


 城の伝承もさることながら、子供の頃のお気に入りの絵本の作者がヒスイで、更に落胆した。絵本を書くイメージが全く無いガラの悪いオジさんが作者だったとか、知りたくなかったのだ。


 思考停止状態に陥っているアレックスの隣で、シンシアは特に気にすることなく呟いた。


 「伯父さん、絵本書くんだね。意外」

「そうか? シンシアが赤ん坊の頃、寝かしつけでテキトーに話創って聞かせてたぞ」

「私が赤ちゃんの頃、伯父さんは一緒にいたの?」

「お前の両親と同じ村で同じ家に住んでいたからな。シンシアはディアナ、オレの妹でお前の母親にホントそっくりだぞ。まあ色々とあってな、オレ達の暮らしていた村が放火魔に襲われてな。しかもシンシアがそいつに目をつけられてな。だから村から遠くへ逃がしたんだ。もっと早く見つけたかったけどな。逃がす時に、ディアナは思いつく限りのあらゆる加護をお前にかけた。その護りの加護はお前に向けられる悪意や敵意、殺意から護っている。今も変わらない」


 護りの加護。シンシアは自分を護る存在に気がついていた。それが何かわかった今、シンシアは初めて母に愛されていると実感出来た。


「お母さんがいつも護ってくれてたんだ……」


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