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野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第2章 新しいページ
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第29話 お姫様の帰還②

 

 晩餐会がお開きになり、シンシアは部屋でメイド達にされるがままに寝支度を済ますと、ベッドに横になった。 

「何か疲れた」

「キュウキュウ」

「キューちゃん、ごめんね、遊んだりできなくて」

いつもと違う疲労感でぐったりしているシンシアを労うように、キュリウスが寄り添う。


 天蓋付の豪華なベッドに薄暗い静かな部屋、シンシアはそこで、キュリウスを抱っこしながら今日の事を振り返る。


 私はこの城のお姫様ではないと思う。でも皆、アルもお姫様って。自分の出自が分からないから、否定すべきか分からない。

 アルの家族、皆仲良しだったな。和気藹々とした食卓ってああなのかな?でも、普通の食卓は晩餐会じゃないよね。あの輪に入っていいのかな?自分のことも良く分からない人間が……。しかも400年前の人間だし……。

 アルの学校は魔法使いの学校だって言ってたから、何かわかるかな?一般人だったら、何の資料も無いから、何も無いかな?

 アルは私のことどこまで知っているのかな?知っていることがあったら教えて欲しいな。

 晩餐会のあとアルはおじいちゃん達と話があるって言ってたけど、何の話かな?

 いつもの家だったら、この時間もアルといるのにな。




 コンコン、コンコン


 シンシアが心細くなっている時、窓からアルが来た。シンシアは一目散に駆け出し窓を開けた。アレックスを部屋に入るなり抱きついた。

「シシィ、上着羽織ってからじゃないと寒いぞ」

「寒いの慣れてるから」

「こういう時は、俺に温めてってお願いするもんだろ?」

「そうなの?」


 シンシアはこういう時が、どういう時か分からない。シンシアは世間慣れしていない自覚があり、一般的な行動が分からない事がある。でも、今のシンシアはアレックスに温めて欲しい気分であった。


 そんなシンシアをアレックスは抱き上げベッドに降ろした。その流れでいつものように、アレックスはシンシアの隣に寝た。


 「寒いから布団入って」

「ありがと。アル」

「ごめんね、ウチのじいちゃん達が盛り上がって」

「うん」

「今日は遅いから寝ようか?」

「うん」



 気疲れとアレックスが側にいる安心感からシンシアは間もなく眠りについた。





 

 翌日、アレックスはシンシアを連れて狼の森に向かった。お姫様に会うため通い続けた道を、お姫様を連れて歩く。二人の周りをキュリウスが飛びび回っている。

 アレックスはキュリウスを見て、自分がシンシアと会っていた時も、気づかないだけでそこにいたのかと、ふと思った。


 シンシアが眠っていた場所に行く道中、アレックスは城の伝承をシンシアに話した。


 初代の城主、森で眠るお姫様、そのお姫様がモデルとなった絵本など。


 そうしている間に目的地に着いた。








「ここにいたんだ……ここで、硝子の棺で眠っていたんだ」


 シンシアはあの日から寝ていた実感は無い。だが、山の斜面の落ちて行く間に気を失いそのまま眠っていたのだろうか、と理解は出来た。

 

シンシアは改めて自分が寝ていたという場所を見た。


 大きなうろの巨木、ここだけ雪の少なく木漏れ日が差すこと。他の場所と空気が違うような気がした。


 シンシアが不思議そうは周りの見ている姿を、アレックスは見守っていた。

 

 シンシアをここに連れて来たのは正解だったのか?何か起きるのか?

 アレックスはそんな不安な気持ちがよぎるが、シンシアを守る想いは揺らぐことは無い。




 アレックスは、ここには用が無いから帰ることシンシアに伝えようと側に寄った。その時、突風が吹き付けた。アレックスはいつも穏やかな場所で、この風は不自然だと思った。さらに風の刃がが二人を襲う。この攻撃で臨戦態勢に切り替わったシンシアが防御壁を展開し防ぐ。


 アレックスは、前もこんな不意打ちしてきた奴がいたなと、思い出した。アレックスがその思考に意識が向いていた刹那、シンシアが飛び出した。


 「まっ……」

アレックスが危ないからとそいつは一応知り合いだからの意味で、「待て、シシィ」と言い終わる前に、シンシアが取り押さえたのは……。


 ヒスイであった。


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