第3話 宝石のお姫様②
暫くアレックスがお姫様のいた場所で佇んでいると、突然の旋風が襲ってきた。アレックスは咄嗟に避けて、風の出所を探した。
──誰だ?!
「中々の反応だな。悪くない」
現れたのは赤い髪に黒ずくめの魔法使いの青年であった。
──あれは…
あの青年をアレックスは知っている。あのお姫様の伯父である。ヒスイと名乗っていたが、これが本名か謎である。ここに何をしにきたかは不明だが、売られたケンカは買うしかない。
「いきなり何だよ!義伯父さん!」
「誰がおじさんだ?!どう見てもお兄さんだろうが!!」
ヒスイは若々しい見た目と前世のことからか、アレックスからのおじさん呼びを激しく嫌った。
ヒスイはおじさん呼びの腹いせに無数の水の蛇をアレックスに放つ。しかし、その程度の水の魔法はアレックスには効かない。彼の能力、発熱能力の前では全て蒸発していく。アレックスの能力は体温を数百度、千度以上に上げられるのである。曰く、鉄のフライパンなら余裕で融かせると。
アレックスは熱でヒスイの水の蛇を蒸発させ、水蒸気を目眩ましにしヒスイとの距離を詰める。
ヒスイは小さな竜巻を起こし雪や木の葉を巻き上げ牽制するが、アレックスの放つ熱でそれらは簡単に燃え尽きる。
近づいてくるアレックスに雷を落とすが、アレックスは軽やかな身のこなしで駆ける。普通の人間よりも飛び抜けた身体能力で簡単に木の枝から枝へ飛び移る。
「その動きは強化魔法か素か?どっちだ?」
「どうでもいいだろ」
ヒスイが高圧的な試験管のように問いかける。アレックスはヒスイを無視して、右手でヒスイに殴りかかる。
「遠距離攻撃は苦手か?魔法学校通ってんのに」
ヒスイは持っている杖で受け止めた。
アレックスはヒスイの意図を計り兼ねるが、左の爪を獣の爪に変え、ヒスイの肩をえぐり取ろうと反撃する。ヒスイは避ける為、初めてその場から足を動かした。
「及第点だな」
そしてヒスイはそう採点し、攻撃を止めた。
「及第点って何だ?」
いきなり襲ってきた挙げ句、偉そうに及第点と言われ、アレックスは虫の居所が悪くなってきた。
「実力テストだ。弱いやつの元へ置いておけないだろう?で、ウチのお姫様はどこだ?一緒じゃないのか?」
ヒスイはいつものように腕組みをし、アレックスを問いただす。
──弱い奴?お姫様はどこだ?だって?
ヒスイの発する言葉の全てがアレックスの神経を逆なでている。
ヒスイは姪が目覚めたことを察知していた。当然アレックスが目覚めさせ一緒にいると信じて来たのだ。
「義伯父さんと一緒じゃねーのか?」
キレそうなのを抑えてアレックスは訊き返す。ヒスイは返ってきた内容に違和感を感じた。
「オレは知らないぞ。…まさかお前もっつーことはないよな?」
「…」
アレックスの沈黙を肯定とみなす。
「どういうことだ?!」
ヒスイが睨みつけた。
「こっちが訊きたいんだけど」
アレックスも負けじと睨む。
お互い喧嘩腰で問答を繰り返していたが、姪がいないとわかったヒスイは
「ちっ!使えねー奴だな。まあいいさ、また後で来るわ」
と台詞を吐いて箒に乗り飛び去った。
アレックスはヒスイが消えた方角をわなわなと睨みつけ、溜まりに溜まったフラストレーションをぶつけるように叫んだ。
「どいつもこいつも使えねー奴で悪かったな!!」
自称永遠のお兄さんヒスイ再び
アレックスはすでに義伯父さん扱い




