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野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第2章 新しいページ
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第27話 編入試験②

 「コクラン先生、早く採点やって下さい」

「ウォルフワルト、なんで誰もツッコミ入れないの?! このだだっ広いアリーナの端っこの机にさ。可笑しいでしょう?!」

淡々と促すアレックスにコクランが物申す。

「他の場所借りれなかったとか? ほら、移動の手間省けていいじゃないですか?」

「なんか違うでしょ?! って、もう聞いてない」

シンシアの実技試験を見守るアレックスには、コクランの叫びは届かなかった。




 魔法演習場の中央。シンシアとエドが対峙している。

「実技試験は魔法の試験。模擬戦の中で君が使える魔法を見せてくれたら良い」

「わかりました」

 


 シンシアはアレックスから実技試験について聞いていた。実技試験は魔法の実践形式で行うこと。担当の先生はかなりの手練だから、全力でぶつかっても大丈夫だろうと。

 

 シンシアは魔法の練習はしていた。過去に魔法を人に使った経験はある。しかし、魔法使いとの実戦は初めてだ。どこまで通じるか未知数だが、シンシアから仕掛けた。


 シンシアは魔力の集中して、無数の結晶の塊がエドに浴びせる。エドは宙を飛び回避する。そうはさせないと、結晶の刃が追いかける。

「なかなか優秀だね。アレックスから聞いておいて良かったよ」

エドの評価は上々だ。



 シンシアは追撃の刃を降らせエドの体を貫いた。

「あっ!! えっ!?」

 刃がエドの体を貫通させてしまい、身を案じたが、炎の人形だったと分かり、安堵より驚いた。

いつの間に移動していたか、エドはシンシアの後ろに回り込んでいた。エドがシンシアに火球を放つ。

「くっ!」

シンシアは後ろの転がりながら避けた。それから距離を取り、体勢を整えた。


 ーふよふよ飛んでいる。火の玉……。相手の攻撃パターン、移動パターンが読めない。

集中しろ。集中だ。


 シンシアはエドとの攻防から、エドの攻略を思案している。そして、やりだすと集中して周りが見えなくなるシンシアの癖が出て、試験を忘れていた。


 「さて、今度は私から攻めてみようか」

エドは炎の渦にシンシアを閉じ込た。エドは炎の中に隠れた。渦の中から複数の炎の人形が火を放つ。火に襲われたシンシアは結晶の防御壁でやり過ごす。


 ―何処だ!何処にいる?


 シンシアはエドの姿を探すが、炎の中では何も分からない。


 ―分からないなら……


 相手が見えないならと、シンシアの出した反撃手段は全方位無差別攻撃。無数の結晶の刃が地面から突き出し、空間を舞う。


 炎の渦が晴れて、シンシアは辺りを探す。エドが上空で、次の攻撃の為に集中していた。シンシアはその隙を逃さない。

「キューちゃん!」

キュリウスは呼び声に反応し、巨大なドラゴンになりながらシンシアの元へ行く。シンシアはキュリウスに飛び乗ると、エドに向かう。



 「あのドラゴン、ああなるんだね。面白い」

エドもシンシアの実戦の出来の良さに、試験を忘れて、戦いに熱中していた。

「さあ、これはどう対処するかな?」

 

 エドが繰り出したのは、巨大な数十の火球だ。それをシンシア目掛け放つ。

「流星群、受け切れるか」


 手加減無しで注がれる流星群の中で、エドはシンシアを見失った。

「ちょっとやり過ぎたね」


 シンシアの危機を感じ、本気なりかけたことを反省した。ここまでの魔法を繰り出せる機会があまりない為、手加減が効かなくなってしまった。

 エドがシンシアを探そうとした時、前方から何かが放たれ、頬掠めた。

「なっ!!?」


 下を見ていたエドは流れる血を抑えながら顔を上げた。そこには、巨大なクリスタルドラゴンに跨り、クリスタルの弓矢を構えるシンシアがいた。獲物を捕らえた眼光、射線上以外目に入らない集中力。そのシンシアにエドの評価が更に上がる。

 

 シンシアの無事と実力が確認出来たので、試験は終了だ。

「シンシアさん、試験は終了だ。君の力は確認出来た。家に帰って大丈夫だよ。結果は来週までに伝えるよ」


 試験終了の言葉で、シンシアは実技試験だったと思い出した。

「あ、ありがとうございました。失礼します」

我に返ったシンシアはエドに挨拶をして、アレックスの元へ向かった。


 

 去りゆくシンシアの後ろ姿を眺め、エドが呟いた。

「そういえば、あいつの姪っ子だったね」





 実技試験中、採点を任されたコクランは虫の知らせを感じた。

 この学園の入学資格、試験会場、実技試験という言葉、極めつけはエドの「バリアを張る」だ。

 机に座り、丸付けをするが、嫌な予感で赤ペンが進まない。

 

 ある程度採点をしたとこで、恐れていた事態となった。シンシアの魔法で造られた結晶の刃が頭上を掠めた。パラパラ舞い散る髪の毛に、コクランは絶叫した。

「はあっ??!! 何か飛んできた。バリア意味ないッス、エド先生!」

コクランを他所に、余裕で避けるアレックスは「シシィ、怪我すんなよ。頑張れ、行けー!」

と、保護者のように応援していた。

その空間に炎が襲いかかる。それはバリアが防いだ。

「炎は守ってくれるんだ」

コクランが安堵したのもつかの間。また何かが飛んできた。コクランは机の下に逃げ、震えていた。

「もうヤダ。帰りたい」

「コクラン先生、採点代わりますよ」

そんなコクランを見かねて、アレックスがシンシアの答案用紙と解答用紙を取り上げた。


 筆記試験は一般教養、語学、数学、科学、魔女史学、魔法学。各教科15分、義務教育レベルの内容であるが、学校とは無縁だったシンシアが解けるか。この試験の合格ラインが分からないが、シンシアなら大丈夫だと信じ、アレックスは採点していく。

「先生、計算ミスとか、途中式の部分点はどうすれば……あー、俺の裁量で加点します」

「ヒィイイイ」


 アレックスは使い物にならないコクランを無視し、シンシアの教科書になる位の丁寧に書かれた美しい字に丸を付ける。



 アレックスがシンシアの様子をみる。実技試験も大詰めのようだ。

「流星群って、試験の割に本気出してませんか?この感じなら合格だな。筆記試験も全科目8割以上取れてるから」




 

「アル?試験終わったから帰っていいって」

試験を終えたシンシアがキュリウスを抱っこして来た。アレックスはシンシアをハグして、労った。

「お疲れ様、頑張ったね。じゃあ帰ろうか」

キュリウスごと、シンシアも抱きしめて転移魔法で帰宅した。



 その夜のリビング。

「筆記試験大丈夫かな?私、字書くの遅いから、そこ時間取られて試験時間足りないってなってたから……実技試験はやり過ぎたかもだし……」

「大丈夫だって。自信持って。シシィは合格だよ。俺と一緒に学校行くこと考えような」

 試験の反省し不安なシンシアと、合格を確信して前向きな言葉を掛けるアレックスが、仲良くソファーにいた。




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