第24話 ロイの受難
アレックスが右手首のブレスレットを見て、ニヤニヤする日が増えたある日の夜。ロイがシャワーから戻ると、抑揚の少ないマイペースな女の子の声と、時折笑い声が零れるデレデレなアレックスの声が聞こえた。「アレックス、キャラ変えた?」と思ってしまう程、普段と掛け離れている。いつも他人を突き放す、孤高の一匹狼はどこへやら。以前言っていたお姫様と通話をしているのだろうと、ロイは察した。
この学園では携帯電話を禁止しているため、魔術的な手法で通話しているのだろう。ロイが盗み見ると、鏡の通話魔法を行なっていた。
鏡の通話って確か、濃厚な魔力のやり取りした相手って授業でやってたような…
濃厚な魔力のやり取りとは、口移しで魔力を流す行為。つまり、そういうやり取りをする間柄。
牛柄のフードの女の子にロイはそれ以上考えないことにした。
「お休み、また明日」
彼女との通話を終えたアレックスがロイの方へ振り返る。盗み聞きはバレていたようだ。
「可愛いだろ? な!」
アレックスは、今まで見せたことのないキラッキラッな満面の笑顔だ。愛しい愛しい彼女を自慢したくて仕方ないようだ。
「ああ、可愛らしいね」
ロイはチラリと見た第一印象を答えた。
「らしいって何だ、らしいって!かわいい確定だろ!それかキレイとか美人とかあるだろ!」
「アーソダネ」
アレックスはロイの、“らしい”が気に入らないようで、殺気全開で睨んだ。そのアレックスにロイは思った。「うわ〜めんどくさい奴だな」と。
そからアレックスは聞かれてもないのに、ペラペラと話を始めた。
「シシィは、シンシアな、ホントに可愛いんだぞ!普段は結構ほわ〜んとした感じで癒されて。でも弓矢を構えた集中した姿は、凛々しくてカッコよくて。名前の通り女神で、近寄りがたい神々しさがあって……何回、胸を射抜かれたか」
「そう」
ベッドに入ったロイは嬉しそうに話すアレックスに、雑に相づちを打つ。
「最近、色々勉強とか頑張っててな、料理とか裁縫も教わってるみたいで。俺と一緒に何か作りたいって言ってるんぞ。もう、可愛いだろーな!シシィも俺と一緒にいたいって言ってるようなもんだろ?早くちゃんとした結婚式やりたいな。式はロイも招待してやるから。俺の花嫁、花嫁姿はキレイだったな。結婚して、シシィに似た可愛い娘がいて、幸せな家庭を築くんだ!可愛い奥さんと可愛い娘。聞いてるか?ロイ」
「聞いてるよ」
「何だ!!その返事は!?」
アレックスはロイの生返事が気に入らないようだ。
「まあいい。シシィは……」
その後もアレックスは、シンシアの可愛さやシンシアとの思い出話、シンシアとの未来の妄想を永遠と語った。
ロイは最初はからかいながら面白半分で聞いていたが、何時まで続くか分からないアレックスの惚気話に嫌気が差してきた。アレックスに早く寝かせてと訴えるが、悉く却下された。
*
何時まで続くか分からないアレックスの惚気話は、突然終わった。
「ああ、こんな時間か?じゃあ俺は走り込みの時間だから」
アレックスは毎朝4時に、走り込みや剣の素振りや武芸を型などの自主トレーニングをしていた。その時間になるとようやく解放されたロイは、
「アレックス、君、こんな朝早くから起きてたの?でも助かった、寝よ」
アレックスの日課はどうでもよく、即寝た。
この日からロイは、終わりの見えないアレックスの惚気話につき合わされるようになった。寝てない筈なのに普段と変わらないアレックス。反対に睡眠不足でフラフラなロイであった。
来年も同室なロイの呟き
誰か部屋、代わって…寝たい…
アレックスと同室になると定期的に、徹夜で嫁自慢されます。
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