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野良犬と宝石のお姫様  作者: 鶴野江
第2章 新しいページ
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第16話 新しい朝

第2章からヒロインは名前で呼ばれます。

ほぼ日常回、説明回になります。

 アレックスがシンシアと去った後、黒尽くめの赤い髪の魔法使い、ヒスイが礼拝堂に入ってきた。サムソンは邪魔なので拘束している。

 

「それにしても派手にやってくれたな、あいつら。後始末する身になれっての」

 シンシアの魔法の跡が残る現場で、一人ごちる。ヒスイはアレックスがのしたならず者達の状態の確認し、記憶を操作して何もなかったことにしていた。

「まあ、いいさ」

 ヒスイはシンシアの魔法の結晶を自身の体へ傷を埋めるように取り込んだ。

「同族の魔力……血の繋がった魔力は馴染むな」


 ヒスイはアレックスを認めたくは無い。

 しかしシンシアの目を覚ましたのはあいつだ。アレックスがシンシアを想っているのは確かに伝わってきた。


 ──まだまだシンシアは子供だ!! 嫁に出す気は無い!!


 ヒスイは姪っ子と義理の甥になりそうな青年との今後展開に、複雑な想いを寄せた。



 *



 とある一室に、冬の冷たい空気と柔らかな朝日の差し込む。真新しいベッドの布団の中に二人の寝姿が見えた。


「おはよう、シシィ」


 シンシアが目覚めると、語尾にハートマークが見える甘い声と、蜂蜜よりも甘く蕩けたアレックスの満面の笑みが目の前にあった。

「寝顔が可愛いのは勿論だけど、寝起きも可愛いね」


 そう、お姫様の新しい一日は甘い甘い王子様の笑顔から始まったのだ。



 昨夜アレックスはシンシアが心配でいてもたってもいられず、シンシアのベッドで一晩ほぼ寝ずにいた。そして迎える愛しい愛しい最愛のお姫様との初めての朝、睡眠不足など関係無くご機嫌だ。



 シンシアは瞬きを数回して、最上級に蕩けたアレックスに「おおは…おはよう?」と、どもりながら挨拶した。


 ──アルがいて……ふかふかのお布団……

 暖かい広い部屋……キレイな服……?


 シンシアは寝起き且つ初めての場所で状況が掴めないでいた。するとコンコンとドアをノックする音が響いた。


 ──誰かくる?


 シンシアは体を起こしドアに目を向ける。

 ノックと共に「失礼致します」とメイドのキャシーが入ってきた。


 「おはようございます。わたくしメイドのキャシーと申します。本日よりシンシアお嬢様のお世話を………」

 挨拶の途中だが、想定外のアレックスと目が合った。さらにアレックスの姿を見て

「アレックス様ダメです!そんなガウンからチラ見する鎖骨とか胸筋とか!イケメンの割れた筋肉の細身な体とか大好物です!じゃなくてその肉体はシンシアお嬢様のであって私が堪能する訳にはいけないのです!!」

赤らめた顔を両手で覆い、絶叫しながら早口でまくしたてた。


 シンシアはキャシーが何やら叫んでいる間、意味が解らずポカンとしていた。アレックスは、また何か始まったとばつが悪くなっていた。

「キャシーはあんな感じだけど気にしないでね。あれだけど仕事の出来るメイドだから頼っていいんだよ」

 アレックスは混乱気味のシンシアに取りなすように優しく声をかけた。

「キューキュー」

 アレックスはキュリウスを忘れてはいなかった。ちゃんと一緒に連れ帰っていた。

「キューちゃん?いたんだ?良かった」

「こいつも連れて来ないとな」

 シンシアは状況が分かっていないが、慣れ親しんだ小さいドラゴンのおかげで少しリラックス出来た。



 一方キャシーは声に出さないよう心の中で一頻りキャーキャー悶えた後、仕事の顔付きに戻った。

「今からシンシアお嬢様のお着替えです。アレックス様はご退場願います!」

 口調はしっかりしているが、アレックスを視界に入れないよう壁に向けて言われては締まらない。


 ──埒が明かないな。

 アレックスは「俺も着替えてくるよ」とシンシアの頬を撫で髪に触れ、「また後でね」と退室した。


 シンシアは状況について行けず、終始目をぱちくりさせるだけだった。


 *


 アレックス退室後、シンシアの身支度は「まずはお風呂です!」から始まった。

 フリフリの薄いピンクのネグリジェを剥がされ、泡泡にされ温かいお湯に入れられた。

 次に湯上がり後の「お肌のお手入れを致します」からの化粧水やら乳液やらを塗りたくられ、キャシーが一つ一つ説明してくれるも耳に入って来ない。


 シンシアは遠慮して断りたかったが、言葉が分からないだけでなく、キャシーの圧力に負けた。


「お洋服はいかがいたしましょうか?」から服を選ぶにしても、戸惑ってクローゼット前で立ち竦んでいた。

「こちらは全てシンシアお嬢様の為にご用意致しました。どれでもお好きなものをお選び下さい!」


 ───すごい、キレイなお洋服が沢山だ…

 選ぶの?この中の?私のなの?このお屋敷の誰かのじゃないの?


 いつの間にか用意されていた洋服に頭の中がハテナマークだらけだ。シンシアがここでも圧倒されて動けずにいると察してキャシーが助け船を出した。

「僭越ながらわたくしめが決めさせて頂きます。」


 服が決まりようやく最後まで来た。

「シンシアお嬢様、髪はいかがいたしますか?」と鏡台の椅子に誘導されたシンシアは、沢山の初めてが詰まった白い薔薇の髪留めに声を零した。

「あっ…」


 ──良かった…無事だったんだ……。


 されるがままだったシンシアが初めて見せた自分の意思。本人は気づいていないが、愛しそうに見つめていた。その目線と表情をキャシーは見逃さない。

「髪飾りはこちらに致しますね」

 出来るメイドは余計なことは言わないのであった。


 *


 アレックスはシンシアの部屋の前でそわそわしていた。

 新婚気分で迎えた朝。

 今は初めてのデートで待ち合わせしている気分だ。


「お待たせ致しました。」

 ドアが開き、キャシーに促され身支度を終えたシンシアが、慣れない服におずおずと出てきた。

「アル?……待たせてゴメンね?」


 ──美しい可愛いキレイだ!後光がさしている……何て尊いんだ! 可愛い可愛い可愛い……。


 ネイビーブルーのワンピースを着て現れたシンシアにアレックスは釘付けになった。アレックスは顔を赤らめ口を半開きにして固まって、微動だにしない。そんなアレックスにシンシアは不安になった。


 「アル?」

 シンシアが呼びかるが反応がない。


 ──似合ってないよね、変だよね……せっかく着せてもらっても私なんかじゃ。


 なかなか動きの無いアレックスにシンシアは自己嫌悪になっていた。


 アレックスはキュリウスに小突かれ我に帰った。

「キレイだよ…似合っているよ。ああっ、そんな悲しい顔しないで。見蕩れてて……あの……」


 ──見蕩れる?そんな要素があるかな?お洋服は確かにキレイだ、それかな?


 褒められたことが無いシンシアは、自分のこととは結びつかないでいた。

 アレックスは身なりを整えたシンシアを堪能した後、気取った表情を作り朝食へシンシアを誘った。

「じゃあ、朝食の準備が出来たと思うから行こうか?」

 当然のように差し出されたアレックスの手。シンシアは自分の手より大きな温かい手を戸惑いながら握った。


 ──いつまでもこの手に頼る訳には行かない。でも今は何もわらないから頼るしかない。早く色々と覚えないと!



 アレックスにエスコートされながら、シンシアはそう思った。



 *


 ダイニングテーブルに案内されると、アレックスが自然な流れで椅子を引き、シンシアを座らせる。

 テーブルにはオートミール粥、果物、野菜スープ。シンシアに合わせた質素なメニューはアレックスには物足りないが、彼はシンシアが全てなので気にならない。


 シンシアは頂きますと挨拶するアレックスの真似をして食べ始めた。テーブルを見ればシンシアの時代には無かった果物がある。しかしシンシアはそれよりもマグカップに目が向けられた。


 ──あの時のカップだ。


「気付いた? お揃いなんだ。シシィは水色で俺のは緑。中はホットミルク、熱いから火傷しないようにな」


 お揃いの意味があまりわかっていないが、自分のマグカップが出来てシンシアは嬉しそうだ。シンシアはアレックスにテーブルの上にある調味料やら食材を教わりながら、懐かしさを感じながら朝食を味わっていた。


 アレックスは初めての胡椒にむせて、酢で口を窄めて、タバスコで涙目になるシンシアに笑い出す。アレックスは互いの瞳を意識したマグカップに、口元が緩みっ放しだ。ふーふーしながらホットミルクを飲むお姫様に、愛おしさが溢れ出す。


 こうして二人の穏やかな一日が始まった。

 

アレックス視点だと、「嫁可愛い」だけしかないです。


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