第14話 burn out②
──あの子の元へ行くんだ!寂しがり屋で泣き虫で、大丈夫だって言う時は大丈夫じゃなくて、負けず嫌いで、頑張り屋で、笑うと可愛くて……。
アレックスは在りし日のお姫様を想い、己を奮い立たせる。
──辛い想いをさせたくない。笑顔でいて欲しい……俺の手で幸せにしたい!だから、だから…
「邪魔すんじゃねー!!!」
アレックスは中庭からわらわらと湧いてくる雑魚共に向かって吼えた。
*
アレックスは無我夢中で湧いてくる男達を片付け、先を急ぐ。礼拝堂への扉が見えた所で、何かが飛んで来た。見えない鋭利な無数の氷柱の様な結晶だ。
アレックスは見覚えのあるその結晶の出所を探った。
ピキッ、ピキッ。
コップの水に氷を入れた時に氷が割れる音が聞こえた。また、結晶の刃が降り注ぐ。アレックスはそれを受けながら、前に進む。躱し切れない刃が、アレックスの体を刻む。
ドガッ!
あと少しで扉という所で、アレックスは何かにぶたれ後ろへ飛ばされた。目を凝らすと、透明な巨大なドラゴン、キュリウスが立ち塞がっていた。
あの少女が拒絶の意思を示している。だからキュリウスも、この先へ行こうとする人間に拒絶の意を示した。
「お前も邪魔すんのか?!」
最後に現れた最大の壁。このドラゴンを攻略出来なければ、花嫁の元へ辿り着けない。
アレックスはキュリウスへ近づいて胴を殴るが砕けない。
──ちっ、硬いな、流石に。
キュリウスは翼で風を起こし、吹き飛ばす。更に追撃の結晶を飛ばす。
アレックスは床に打ち付けられ呻き声を上げる。
「う、ぐっ」
キュリウスは尚も向かって来る相手に攻撃姿勢を崩さない。
アレックスはフラフラになりながらも、諦めない。今度こそ、あのお姫様を迎えに行く。その約束のため、負けられないのだ。
「そこを退いて貰うからな!」
キュリウスはアレックスの声に反応した。
よく見るとあの人間だと気がついた。そして、いつもの手乗りサイズに戻った。キュンキュン鳴きながらモゾモゾと短い手足で体を摩っている様な動きしたと思えば、次は嘔吐している。口から白い薔薇の髪留めを吐き出し、落ち着いたようだ。
そして、キュリウスはキュウーンと悲しそうに鳴きながらそれをアレックスを渡そうとした。だが、今のアレックスが持つと融けそうだから、アレックスは受け取らなかった。
「安心しな。あの子は俺が助けるから。それはお前から渡すんだ」
不安げなキュリウスを安心させるように、頭をなでてから、アレックスは礼拝堂へ向かった。その背中をキュリウスが追いかける。
*
バンっ!!
アレックスが礼拝堂の扉を力任せに開けた。その勢いで元から壊れていた扉が更に壊れた。
「本日は招待頂きありがとうございます。先生。俺の花嫁を返して貰いますよ!」
アレックスは、祭壇を歓喜した表情で見上げるサムソンに宣言した。
サムソンはアレックスに気がつくと驚愕し、「ここまで来たのか。使えないやつらめ」
と忌々しさをぶつけた。
振り返り、アレックスの姿を目の当たりにすると、目を見開いた。
「何だ?その姿は!」
アレックスの獣の耳に獣人だと理解した。
──実在したのか?いや待てよ、赤い髪の魔女と白銀の獣人……!まさか、聖女と聖獣の逸話はお伽話ではなかった!
魔女に関する逸話の研究者は伊達ではない。サムソンはこの国の神話、魔女の起源を思い出した。かつて国の災厄を鎮めた聖女は聖獣との子を授かったとされる。聖女の血筋が魔女ならば、聖獣の血筋は獣人として今も生きている。サムソンは研究者らしく考察した。
「素晴らしい!是非君も取材させてくれ!」
サムソンは新たな事実に興奮が収まらないでいた。獣人のアレックスを取材対象者にしたことで、サムソンの一連の不満全てが消えていた。
アレックスは取材だとか訳の分からないことをぬかしだしたサムソンに、怒りが頂点になる。
「焼き尽くす…お前は灰さえ残さず焼き尽くす!」
アレックスはサムソンの腹部を殴り、うつ伏せにして押さえ込んだ。一撃で気を失ったらしく反応がない。アレックスはそのまま頭を掴み、焼き尽くそうと熱を放つ。
その時、黒ずくめの魔法使いヒスイが現れた。ヒスイは杖をアレックスの首元へ当て、アレックスに冷静になるよう促した。
「そこまでだ。これはオレが預かる。お前は……」
ヒスイは目線を花嫁に向け、お前はお姫様の機嫌を取れと言葉ではなく動きで伝えた。
「ああ、そうだったな」
アレックスはヒスイの言いたいことを悟った。自分の何よりも大切な存在を再確認した。
アレックスは立ち上がると祭壇を見据えた。ヒスイがサムソンの連れ移動したことを確認してから、
「約束通り迎えに来たよ」
バージンロードの先、祭壇の前で氷山のような結晶の中に閉じ込もった花嫁に呼びかけた。
ディアンシーのダイヤストームが物理技の理由が分かった。
私はポケモン好きですよ。




