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6…カガリー辺境伯邸にて②双子の距離感

 エリーゼとジュークがカガリー辺境伯邸に滞在して数日後のお昼。

 子どもたち5人でお茶をしていると、従者が何やら書かれた紙をロイドに渡しにやって来た。


 それを見たロイドのテンションが急降下してしまったので、皆立ち上がってロイドの周りに集まって紙をのぞこうとしている。


 唯一紙をのぞき込めたジュークがウエッと苦々しい顔になったあたりで、頭を抱えたロイドもやっと口を開いた。

 紙を手で握り潰しながら。


「あと少しで、アリストが到着するらしい。なぁジューク、明日からのはずだろ」


 紙が可哀想になるくらいロイドに握られているのを、双子たちは震えながら見ている。


「あー、必死に執務を終わらせたんだろうね」


 心から姉を大好きなジュークは、エリーゼの隣になる確率を減らされるのが本当に嫌なのだ。

 きっとロイドも同じようなものだろうとジュークは考えているけれど、決して譲るつもりなんてない。



 エリーゼはというと、そんな2人のやり取りを見て、それぞれ知合いというだけではなく3人でも繋がっているのかと驚いている。


「3人でも仲良いのね」


 ジュークが深い深いため息をついた。


「……ねぇ、この反応を見て、どうしたら仲良いって思えるのかな」


 崩した顔をまだ戻さないジュークがエリーゼに異議を唱えると、それに間髪入れずにロイドも付け加えた。


「腐れ縁です」


 そんなことをロイドもジュークも言っているが、どちらも自分よりもアリストと仲が良さそうだったのを、エリーゼはその目で見たのだ。



「あ、それならサイラスは?」


 エリーゼは春から同じ学園に通い始めると言っていたサイラスにも聞いてみることにした。


 もう呼び捨てられているサイラスへ、ロイドは驚いた顔で視線を移したけれど、サイラスは上手くリリアナを盾にして避けた。


「俺は春から学園入学なんで。たまに殿下はうちに来るけど、特に話さないっすね。距離置いてる、置いてます」


 サイラスは敬語に言い直してそう言うと、小声で「何か恐いし」とエリーゼとリリアナにだけ聞こえるように付け加えた。


 エリーゼとリリアナはきょとんとして目を合わせて、笑いながら2人でサイラスの頭をなでた。



「へぇぇ、仲良くなれたようで良かった」


 目がすわったロイドに視線を向けられて、サイラスは背筋が凍えて、そっとエリーゼの後に隠れて独り言を言うしかなかった。


「勘弁してくれ。全然、良かったって顔してねぇし」




「ねえ、エリィ姉さまと庭園を散歩してきて良い? 兄さまは殿下が来るまで待機するんでしょ?」


 リリアナがエリーゼの腕をギュッと抱きしめている。


「……ああ、もし、良ければ」


 ロイドはエリーゼの方を尋ねるように見ると、エリーゼは「喜んで」と笑顔になった。


「サイラスも連れて行くね!」


 とリリアナは言って、目を大きくして真っ青になっているサイラスも引っ張って部屋から出ていった。


「まじで、やめてくれ! 兄さまの目が、後で絶対しばくって言ってる!!」





 ポカポカと暖かい今日は、草花がきれいに咲いている庭園を散策するには最高の日和だ。


 リリアナとサイラスの説明をエリーゼが楽しそうに聞いている時に、一瞬双子が同じ方向に視線だけをやった。


 リリアナが、エリーゼに気付かれないようにサイラスに小声で話かけた。


「サイラスの方が強いんだから、エリィ姉さまを頼むわ」


 そっと手を上げてサイラスが応えたのを見て、エリーゼに「ちょっと待ってて下さいね」と手を振った後、リリアナは迷いなく茂みに走って入って行ってしまった。


「あの、リリアナが行ってしまったけど、どうしたの?」


 動揺するエリーゼを見て、サイラスは笑って「いつものことっす」と言うだけだった。



 数十秒経って、リリアナがパンパンと手を払い髪を整えながら戻ってきた。

 よく見ると服に少し土が付いている。


「エリィ姉さま、お待たせしました。何かいたかなと思ったんだけど、気のせいだったみたい」


 え、絶対何かあったと思うんだけど……


「あー、何もなかったってことで」


 ことで?!


 リリアナとサイラスの会話に、エリーゼはすごく突っ込みたいところだけれど。

 絶対教えてくれない雰囲気を2人がまとっているので、視線だけを茂みの方へと向けておいた。



 そうこうしていると、玄関あたりがにぎやかになり、それはアリストが到着したことを告げていた。



「エリィ!!」


 勿論アリストは、いの一番にエリーゼの元へやって来て、挨拶に手をとってキスをした。


 リリアナとサイラスはアリストへの挨拶をしている途中だったので阻止することもできず、ただ崩した顔で抗議をするだけに止まった。


 アリストの後から付いてきていたロイドの表情は、双子を一瞬で震え上がらせたけれど。


「やめてよね」


 普通に苦情を発したのはジュークで、エリーゼの手を拭きながら口を尖らせている。




「こんなカオスな感じが続くとか、まじかよ。兄さまなんて話し方も変だし、いつも以上に超恐えし」


 サイラスが脱力してつぶやくと、異性で気楽なリリアナは同情するように肩に手を置いた。


「でもさ、兄さまが笑うなんて、1年に何度かなのに。今日はとっても笑ってるよね。エリィ姉さま何者なの」


「本当それな。雪でも槍でも降るんじゃねーか」


 春の陽気に当たりながら、リリアナもサイラスも不思議そうにエリーゼを見ていた。



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