表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/52

閑話休題7〜それに叶う者に

「ロイ、遠慮なく、私を斬って!」


 エリーゼが得意そうに両手を広げている。


「いやいや、できるわけねーだろ!」


 ロイドは剣を背中に隠して、ぐいぐい来るエリーゼから後退りしている。

 その隣では、双子たちも激しく同意している。


 唯一、エリーゼだけが、不服そうだ。


 珍しく、エリーゼに対してカガリー辺境伯の子どもたちが対抗する図ができあがっているのだが。



 婚約のお披露目のために、カガリー辺境伯に滞在中のエリーゼが、お願いがあると言いながら、ロイドとリリアナとサイラスが手合わせ中にやってきた。


 エリーゼが嬉しそうに来るので、3人とも気が抜けて、穏やかに汗を拭きながら聞いていたら、あんな度肝を抜くような発言だ。


「冗談でも、エリィに刃は向けねぇ。絶対だ」


 不満そうにするエリーゼが「それなら」と、双子の方に向いたのだが。


「「絶対、無理」」


 エリーゼが頼む前に、リリアナとサイラスは明快にシンクロ返事をした。



「何がどうなって、そんなこと言ってんだ」


 ロイドが聞くと、説明をしていなかったことに気付いたエリーゼが、恥ずかしそうに話し始めた。


「私の魔力量はちょっと多めらしいの。でも、攻撃は苦手で、上手にできなくて。人を傷付けるのも恐いし。ほら、癒やす方が得意でしょう? でも、カガリー辺境伯家の一員になった時に、足手まといになるのは嫌で……」


 いつも穏やかなエリーゼだけれど、根は負けず嫌いなのだ。


「ジュークに言われたの」







「エリィ、ロイドは辺境伯で国境付近に住んでるから、それなりに敵襲は多いよ」


 カガリー辺境伯邸へ来る前に、姉を心配するジュークがエリーゼとお茶をしている時に言ってきたのだ。


「エリィが自衛できないと、ロイドは安心して戦えないからね」


 まるでロイドの邪魔をしないようにという言い方だ。

 ジュークは、その方がエリーゼが頑張って保身を考えるだろうと分かっているので、あえてその言い方をしている。


 ロイドの弱点であることで、エリーゼが狙われるようになるのが心配で、ジュークは気が気ではない。

 とにかくエリーゼが安全でなければ、カガリー辺境伯家に嫁になんてやれない。


 いや、それとも関係なく、大好きな姉を嫁になんてやりたくないのだけれど。






「裏に思惑がありそうな発言だな」


 ロイドはそう言ったけれど、嬉しそうにエリーゼの頬についている土ぼこりを優しく払った。


 エリーゼの気持ちを聞いて、双子もロイドと同じような顔をしている。

 カガリー辺境伯家に入ることを、エリーゼが真剣に考えていたことを知り、嬉しくないわけがない。


 必死なエリーゼは、ロイドの服をつかんで説明を続けている。

 まだまだ、試すことを諦めきれないらしい。


「何重にも聖魔法の防御である保護魔法を重ねると、誰も何も、私に攻撃できないかもしれないって思って。だから、試しに、強いロイに斬ってもらいたかったの」


 手を広げて、どうぞ斬って下さいと言わんばかりのエリーゼ。

 期待に満ちた眼差しで、ロイドを見ている。


 気持ちは分からないでもないが、まだ仮説の段階なので、ロイドは難しい顔をして、やはり無理だと頭をかいている。


「それにね、抱えられたら簡単に連れて行かれるでしょう? それについては、地面に繋がれば大丈夫かなって。聖魔法に、結びつけの縁魔法があるから」


 唯一の弱点であるエリーゼが安全であれば、ロイドは安心して動くことができる。

 確かに、その通りなのだ。


「あー、それは助かるな……ああ、それなら、サイラスにかけてくれ、思いっきりやってやるから」


 剣に手をかけるロイドが、冗談のようにしながらも、少し本気の目でサイラスを見ている。



 サイラスの気持ちに、ロイドが薄っすらと気付いているのかと、リリアナはゾッとして、緊張しながら2人のやり取りを見守っている。

 いつもの表情はどんな顔だったか、本当に分からなくなってきて、リリアナは焦っているのを見せないようにするので必死だ。


「ひっでぇ!!」


 そんなことに気付かず、いつものようにサイラスはエリーゼの後に隠れたのだけれど。


 エリーゼも、いつものように楽しそうに笑ってサイラスをかばっている。




 結局、高価そうな壺に保護魔法を何重にもかけて、ロイドが思いっきり斬ってみたが、衝撃すらも伝わっていないように見え、全くの無傷だった。

 その上、誰も壺を移動させることができなかったのだ。


 エリーゼの考えた方法は、いけることが実証され、カガリー辺境伯の子どもたちは驚き喜んでいる。

 念の為に、後でカカガリー辺境伯にも見てもらうことにした。



「これで、ロイの足手まといにならないかしら!! 婚約者として相応でいられる?」


 誇らしそうに嬉しそうにするエリーゼが、ロイドに向けて両手を伸ばしてきた。


「俺の婚約者殿はすげーな!」


 ロイドは豪快に笑いながら、そのままエリーゼを抱きしめて、くるくる回り始めた。


 エリーゼは、ロイドと楽しそうに笑っている。



 それを双子も嬉しそうに見守る。



 誰もが、エリーゼの笑顔が好きなのだ。



 ずっと、ずっと、どうか、平和が続きますように。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ