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5…カガリー辺境伯邸にて①ロイドの弟妹

「今日から2週間お邪魔致します」


 エリーゼはカーテシーで、ジュークは侯爵家の礼で挨拶をした。


 カガリー辺境伯邸の前で一家総出で出迎えをしているが、ミロウ侯爵家へ来た時より人数が多い。


 ロイドの隣で目を輝かせている少女と、どうにか隠れられないかとしている少年がいる。

 それぞれがロイドにも似ているが、この2人は顔がとってもそっくりだ。


 2人が気になってエリーゼが視線をやっていると、ロイドが話かけてきた。


「道中、大丈夫でしたか?」


 ジュークは少し意味ありげな顔をしてロイドと目を合わせたけれど、エリーゼはにこにこしている。


「はい、お陰で無事に到着できました」


 楽しそうに答えるエリーゼを見て、ロイドもつられて笑顔になった。


 そのやり取りを見ていた少年少女が、なぜか震えながら驚愕しているのだけれど……


 そんな2人へエリーゼが視線を戻したので、ロイドが観念したように紹介を始めた。


「紹介が遅れました。私の弟妹です。サイラス、リリアナ、挨拶を」


「サイラス・フォル・カガリーです。12才です」


「リリアナ・フォル・カガリーです。12才です」


 サイラスはロイドに似たお辞儀で、リリアナは可愛らしいカーテシーで、そっくりな双子がエリーゼとジュークに挨拶をした。



 滞在する部屋を従者たちが整えている間、来賓室で過ごすことになったので、移動したのだが。

 なにやら背後からの視線を感じつつも、エリーゼはロイドにエスコートしてもらいながら歩いていた。



「あの、これを……」


 来賓室に着くと、恐る恐るロイドが何か小さな小物入れを取り出した。

 ロイドがそっと開けると、イヤリングが誇らしそうに姿を見せた。

 きれいに輝いている宝石が装飾されている。


「きれい……私に? 良いんですか?」


 初めて家族以外から装飾品をプレゼントされ、エリーゼは照れくさそうに笑って手を握りしめた。


「今から、私が付けても?」


 ロイドが付けてくれると言うので、エリーゼは驚いて鼓動がおかしなことになりつつも、うなずきながら何とか姿勢を正した。


 それを見たロイドは、嬉しそうにエリーゼの耳にイヤリングを付けているけれど、後方で双子は再び信じられないものを見るような顔をしている。


 どどどうしよう、緊張する。

 恥ずかしくて、どこを見ていれば良いのか、わからないっ。


 エリーゼは視線をあちらこちらに動かせながら自分の鼓動と必死に向き合っていて、双子の様子には全く気付けない。


「あ、ありがとう、ございます」


 恥ずかしそうにお礼を言うエリーゼが可愛くて、ロイドも嬉しそうだが、なぜかリリアナが今にもエリーゼに飛びつきそうだ。



「ねえ、自分の瞳の色の石を送るの、まだ早いと思うんだけど?」


 ロイドの正面に移動したジュークが、ため息をつきながら面白くなさそうに抗議すると、後の双子も同意するかのようにスンと真顔になった。



 待って待って、本当だ、ロイドさんの瞳の色……



 それに気付かされたエリーゼは、ロイドの瞳から視線をゆっくり外して、緩みそうな口元を押さえた。

 真っ赤になった顔を全く隠せなかったけれど。


 不機嫌なジュークに聞こえないように「いつも付けてくれると嬉しいです」とロイドがエリーゼに耳元でささやいた。


 甘いやり取りに全く慣れていないエリーゼは、やっと顔を隠しながら、ただ何度も小さくうなずくだけで精一杯だった。


 ロイドはエリーゼの反応を見て、嬉しそうに笑っている。



 すると、カガリー辺境伯夫妻に呼ばれてロイドが部屋の隅へ行ってしまったので、エリーゼは取り繕うようにリリアナに話かけてみた。


「わ、私ね、双子ちゃんは初めてお会いするの。とっても嬉しいわ。本当にそっくりね」


「それなら! 是非とも触ってくださいっ」


「ん?!」


 サイラスが間髪入れずリリアナを隠すように現れた。


「すみません、リリアナは美しくて可愛いものに目がなくて。気持ち悪いかもしれないっすけど、害はありません、たぶん」


 目をキラキラさせて息が荒くなっているリリアナを、サイラスは押さえている。


「サイラス、うるさい!! あの、良かったら、エリィ姉さまと、呼ばせて下さいっ」


「距離感! 近すぎんだろ。まじで気持ち悪いって自覚しろよ」


 エリーゼは手で口元を押さえて、ジュークに顔をうずめて小刻みに震え始めた。


 それを見てリリアナが涙目で真っ青になっているので、ジュークが笑いながらエリーゼを抱きしめて、否定するように手を振った。


「大丈夫だよ。笑ってるだけだから」


 笑いながら、エリーゼがすぐに顔を出した。


「ふふ、何でも好きに呼んでね。私はリリアナちゃんとサイラスくんで良いかしら?」


「サイラスと呼び捨てて下さって大丈夫です」


「私も! 是非とも、呼び捨てて下さいっ」


 一転喜びに満ちあふれたリリアナが、サイラスの後から前のめりになってエリーゼに向かっている。


「だから、気色悪いっつってんだろ」


「ふふっ、んふふ、サイラスとリリアナね。よろしくね」


 エリーゼが握手をしようとジュークから離れて手を出すと、リリアナがもう我慢できないとエリーゼに飛びついてきた。

 そんなリリアナを笑顔で受け止めてから、エリーゼはサイラスに手を伸ばして、握手をした。


 握手をしながら、サイラスが部屋の隅の方で両親とロイドが話している方を何気なく見た瞬間、その目が大きく開いて青ざめた。


「あの、兄と、もう握手とか、しましたか?」


 なぜかサイラスはエリーゼから手をそっと離して両手を上げて、後退りしている。


「え? 握手……は、してない、と思う、けど」


 思い出しながらエリーゼが返答するのを最後まで聞かず、サイラスは回れ右をして「俺はこれで失礼します!」と言い残し、全力で部屋から出て自室へ向かって走っていった。


「クソッ。兄さま、恐ぇわ!!!!」



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