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閑話休題2〜こいつはガチめの(sideジューク)

「それは、本当にあったこと?」


 ジュークが学園に入学するためにタウンハウスへ出発する数日前、両親のミロウ侯爵夫妻に呼び出された。


 話の内容はエリーゼの過去についてで、にわかには信じられない物語のようなものだった。


「姉様が、そんなことに……でもさ、聖魔法ってすごいんでしょ。おとぎ話か都市伝説かと思ってた」


 そして、その時にカガリー小辺境伯のロイドが恩人のような働きをしてくれたので「くれぐれも失礼のないように」と、ミロウ侯爵にジュークは何度も念を押された。


「大丈夫だよ、僕は礼儀を知ってるよ」




 学園での昼休みは、小侯爵である自分に取り巻こうとしてくる同級生から逃げるために、ジュークは中庭の木に登り、そこでのんびりするようになった。


 ジュークは賢くて、誰がいて何を話ししていた、相手の身振り手振り、等々を頭が勝手に覚えてしまう。

 過去に脳が働きすぎて夜眠れず大変だったので、できる限り遠慮することにしている。


 誰がどこの子息令嬢かなんて、貴族名簿で丸暗記しているので自己紹介なんて、いらない。


 今日もゆっくりと読書をしていたのだが、突然ジュークより年上の誰かが近くまで軽く上ってきた。


 木登りできる令息なんて珍しいなと、ジュークは自分のことを棚に上げて視線を向けた。


「ジュークだな、久しぶり。覚えてるか? ロイド・フォル・カガリーだ」


「ああ、あなたが。ええ、僕がジューク・ハゥル・ミロウです。すみません、僕が会った時が幼すぎて。何となくしか記憶になくて」


 木の上で自己紹介なんて、可笑しい状況だなとジュークが思っていると、ロイドは食い気味にエリーゼについて聞いてきたのだ。


 一緒に登校しているのか、何時に登校しているのか、今日はどんな髪型だ……



「あー、ごめん、ちょっと待って。最初にあやまっとくね。父には、失礼のないようにって言われてるんだけど、何だろう、ほぼ初対面であれなんだけど……無理っぽい」


 ロイドは学園で文武両道の超有名人で、硬派なイメージで通っていると、事前の情報収集でジュークは聞いていたのだが。



「まずは姉様について知ってることを、全て吐け。僕が姉様についての問題を出すから、答えてみろ」



 お茶の種類によって入れる砂糖の数が違うが何個ずつか、朝食で必ず食べている物は何か、好きな色やスイーツや本の種類、どこでドレスを仕立てているか、学園の成績……


 ジュークしか知らなさそうなことも問題にしてみたのだけれど。


 ロイドは全問正解したのだ。



 もうこれでもかというくらいドン引きしているジュークが、顔を引きつらせながらロイドを見ている。


「ええぇぇぇ、きもっ。何でそんなに知ってんの。本当に、確か10年以上会ってないん、だろ……引くわ。ガチめのストーカーじゃん」


 これのどこが硬派なんだよ?!


「んなことねーだろ。ちょっと情報収集してただけだろ」


 10年も?! し続けたのか。


「言い方良くしてるだけじゃん。僕は騙されないからね」




 少し話した後に、先ほどとは違い、ロイドが遠慮気味にジュークに聞いた。


「……過去については、知ってんのか?」


「うん。入学前に聞かされたよ」


 ロイドは「そうか」と言って、黙ってしまった。



「ねえ、関係なしに、姉様に会えば良いのに」


 こじらせてストーカーになるくらい想ってるなら。


「いや、もし何か良くない影響があるとダメだろ。完全に守れなかったことへの罰だ」


 あー、この人、生きるの下手な人かな。


「あと、離せなくなったら大変だろ」


 は? 何て?

 いや、もう会わなくて良いや。

 もう会うな。




 その日から、ジュークは昼休みにちょくちょくロイドに会うようになった。


 エリーゼのことを聞かれることが多いけれど。

 仲が良くなるにつれ、核についての話や呪術についての話もするようになった。


 ロイドの領地、カガリー辺境伯領に接している隣国では呪術が盛んで、よく相手をしているとか。

 エリーゼの核を抜かれたのは、呪術が関係しているらしいことも聞いた。


 時折、アリストも仲間入りして、呪術に対してどう対応するかを考えたりもした。

 最近は専らそのことばかりだ。


 そのお陰で、ジュークは退屈な魔法実技の授業を頑張れた。

 他の授業も、一字一句逃さず、知っていることを更に上塗りするように、知らないことなんて無いように。

 全ては、何か起こった時のために。


 呪術には、カガリーの血の契約でしか発動しない反呪の魔法しか効かないらしい。

 でも、何かしらの対策はできるはずだし、足手まといなんてゴメンだ。



 ロイドとアリストが2人揃って、エリィエリィと呼ぶのを聞いていくうちに、ある日ふと姉様と呼んでいる自分1人だけが幼いように感じた。


 その日の昼休みから就寝時までずっと、ジュークはそのことを考えていて、眠る直前ついに姉のことをエリィと呼ぼうと決めた。


 僕だって姉様を守りたい。

 弟だっていう甘えを無くすためにも、呼び方を変えよう。

 まずは形からだ。




 翌朝、いつも自分より遅く食堂に入ってくる姉に、ジュークはこう言うと決めていた。



「エリィ! おはよう」



 きっとすごく驚く顔をするだろうけど、それもとっても可愛いんだろうな。

 あの2人が決して見ることができない、家での素のエリィ。



 姉様は、僕の大切な宝物だ。




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