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39/52

39…落着の思惑が、

 エリーゼは学園で魔法を更に学び、皇城や学園で禁書を読み、聖魔法の使い方を学んだ。


 本を読みながら、胸に手を当ててブツブツとつぶやきがら、時に指を振ってみたり。


 目を輝かせながら「ロイ、練習させて!」とロイドを練習台にしたり。


 回復しすぎて、ロイドが夜眠れなかったり。

 聖魔法のキラキラが消えず、1日中ロイドが発光していて、ジュークが抱腹絶倒したり。

 時々、そんな失敗もしながら。


 エリーゼは順調に聖魔法を習得していった。


 聖魔法の禁書は、聖属性の魔力を持っている者しか開けない、読めないようになっている。

 エリーゼは自分の属性を分かってはいたけれど、本を開けて読めることで、実感せざるを得なかった。


 そして、それはロイドもだった。

 初めて目の当たりにする事象を、感心のような動揺や諦めのような複雑な表情で、ただエリーゼを見ていた。




 エリーゼが皇城で禁書を読みに登城した日。

 アリストと歩いて来賓室へ入ると、待っていたロイドとジュークが何やら言い合いをしていた。


「そろそろ、やめろって言ってんだけど」


「……考えとく」


「絶対考えないだろ。あの付与魔法を外せよ」


 エリーゼとアリストが扉をノックして入ると、2人が振り返った。


「あの付与魔法?」


 首を傾げているエリーゼの後で、言い合う2人を見てアリストがため息をついている。


「帰るんだろ? エリィ、エスコートするよ」



 エリーゼはアリストにエスコートされて、注目を浴びながら広い廊下を歩き、待機させている馬車へ向かっている。

 ここは吹き抜けのようになっており、たくさんの大きな窓からは心地よい風が通り抜けていく。


 後方で、まだ言い足りないジュークとロイドが小声で言い合いをしていたが、急に静かになった。

 エリーゼが気付いた時には、ロイドが抜剣する音が聞こえてきた。


 同時に、ロイドの舌打ちが響く。



 第一側妃のシンドア国出身の騎士たちが、あちらの方から迷いなくエリーゼの方にやって来ている。

 黒炎をまとっている様を見ると、媒介になっていることが分かる。



「ジューク、エリィとアリストの防音防御を頼む。エリィ、耳塞いで、目閉じてろ。早く!」


 直ぐにエリーゼは、ロイドに言われた通りにした。

 防音も防御もするのに、なぜだろうと思いながら……



 エリーゼのそれを確認すると、ロイドは思いのままに剣を振り、反呪を使い始めた。

 まるでロイドのソロの剣舞にも見える光景は、その場に居合わせた皇城の者たちだけでなく、ジュークとアリストも見入ってしまう。


 美しい鬼人となって、全てをいなしていく。


 媒介の人間が何人もいて、呪物もたくさん出現していたのに。

 アリストから、容赦しなくて良いと事前に許可が出ていたので、ロイドは順調に戦闘不能にしていく。

 それでも命を取らない配慮をする余裕があるのは、やはりロイドが素晴らしい剣術者だということだ。

 しかし……


「あのさぁ、エリィへの配慮は褒めるけど……でも、この場を見せられないから、そのままエリィは連れて行くよ」


 ジュークがあきれたように、とりあえずの感謝を伝えて、馬車へ急いだ。

 満足そうなロイドとアリストは、皇城の方へ返って歩き始めた。

 返り血も拭かず、血の池の中を、バシャバシャとためらわずに歩いて。



「決定打だな。第一側妃は監禁だ」


 そう言った後、アリストはロイドを見ながら、もう一度口を開いた。


「僕は振られたけど、想いはどうしようもなくてさ。だから、今まで通りに、エリーゼファーストは止めないよ」


 スッキリした顔のアリストが、ジュークに連れられて行くエリーゼを見ながら優しく微笑した。

 まだ目を閉じたまま、ジュークに支えられて歩いている。


「ああ……」


 ロイドは覇気なく返事をして、エリィが出ていくのを一度確認して、皇城の中へと入っていった。





「とりあえず、属性が理由でエリィが狙われることは、もうないはずだろうけど」


 ジュークの独り言を、まだ耳を塞いで目を閉じているエリーゼは聞いていない。

 エリーゼの手をそっと持って外させて、もう目を開けて良いことを伝えた。


「ジュジュ、何があったの?」


「媒介になった人たちが来たから、ロイドが倒してくれたよ。2人は、その後の対応をするために皇帝へ謁見するために残ったよ」


 命は取らなかっただけで、容赦なく斬りにいっていたから、辺りは血まみれ、現場は血の海の惨状になっていたし、ロイドも返り血を浴びて不気味なことになっていたなんて、エリーゼには伝えることもなく。


「エリィはロイドと仲良くやってる? 最近ロイドが不安定じゃない?」


「え?! 仲は悪くないと思うけど……確かに、何かちょっと変だなって思うことはあるかも。よくは分からないけど」


 人の恋愛沙汰に首を突っ込むのは、だいたいが余計なお世話になるので、静観するのが一番だ。



 なにはともあれ、ジュークの願望だった第一側妃の監禁が決定した。

 第一側妃は外部と一切連絡が取れないようになったのだ。


 年度末毎に開催している、ミロウ侯爵家の身内と近しい知人だけで開催するパーティーがある。

 何かあるかもしれないと、ジュークは気が気でなかったけれど。


「不安材料が、少し、減ったかな」




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