表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/52

3…見合い相手と弟と

「エリィ!!」


 馬車から少年が出てくるなり、背丈が同じくらいのエリーゼに飛びつくと、エリーゼも嬉しそうに抱きしめ返した。


「おかえりなさい。道中何もなかった?」


 背丈も同じくらいで、相思相愛の2人はなかなか離れようとしない。


「うん。ロイドはもう来てるんでしょ」


「ジューク、お邪魔してます」


 ちょうどロイドが現れ、きれいなお辞儀をして挨拶をした。


「いいよ、そんなかしこまったの。いつも通りに話してよ」


 かわいい顔のジュークが、嫌そうにウエッという顔をしてロイドを見上げた。


 家の格はジュークの方が上だけれど、年上の人に対して、ここまで砕けた話し方をしている弟の姿を見るのが初めてで、エリーゼは驚いている。


 そんなエリーゼの様子を見て、ジュークが苦笑しながら「まぁそうだよね」とまだエリーゼを抱きしめたまま呟き、ロイドを見やった。

 ジュークはエリーゼと手をつないで、ロイドに目で何やら伝えている。


「ロイドとは同じ学園だから、よく話すんだよ。これから3人で一緒にお茶しようよ」


 学園が同じなだけで、友だちのように話をするものだろうかと疑問に思いながら、納得するしかないエリーゼ。

 学園は完全に男子校と女子校で分かれているので、未知の男子校はそうなのかもしれないから。


「ええ。でも、もしかして私、お邪魔じゃないかしら」


 ジュークは他人には警戒して一定の壁を作って接するのだけれど、ロイドには心を許しているように見える。

 そんなことは珍しいので、エリーゼは自分が部屋に戻ろうかと思ってしまった。

 お見合い相手を置いて。


「ははっ、それ言うなら僕が邪魔だよね。婚約するかも、でしょ?」


「そんなこと言わないでっ」


 エリーゼは、逃がすまいとジュークとつないでいる手に力を込めた。


 一瞬切なそうな顔をしたジュークは、パッと笑顔になって「僕の部屋へ行こう」とエリーゼを引っ張って、ロイドにも目線を向けた。




 ジュークの部屋に着くと、既にお茶の用意がされていて、それぞれに用意されているお砂糖の数が違う。


 ロイドは迷わずエリーゼの席の椅子を引いて、エリーゼを座らせてくれた。


 まただわ。

 なぜ……偶然?

 ああ、消去法で分かったのかしら。



 そんなことをエリーゼが考えている間に、ロイドとジュークは話をしている。


 カップを持って、ジュークはにっこり笑ってロイドを見た。


「そうだよ。僕の方が2つ年下なんだけど、愛称で呼んでるんだ。エリィって響き、可愛くて似合ってるでしょ。父様と母様ばかり、ズルいなって。アリストまで僕の前で呼び始めた時は、殺意が湧いたけど」


 ジュークが可愛らしく話しているけれど、突っ込みどころがありすぎて、エリーゼは白目をむきそうだ。


「ジューク」


 ジュークがエリーゼをにらんで「いつも通りに呼ばないと……」と脅してきたので、初対面のロイドの前で申し訳なさそうにしながら、エリーゼは話し始めた。


「ジュジュ、年上の方は敬称付けしなきゃ」


 もう13才の弟を、幼い頃からの愛称で呼んでいることを知られてしまい、恥ずかしそうにエリーゼはロイドの様子をうかがった。

 ロイドは特に気にしていなさそうで、エリーゼはホッと胸をなでおろした。


 ただ、先ほどからロイドとジュークは視線で会話をしているようで、やはり仲が良いらしいことが分かった。

 学年もかなり違うのに一体どうして仲良くなったのか、そんな疑問をエリーゼが聞いたとしても、賢いジュークはうまくかわすだろう。



「アリストに良いって言われたんだ。公ではちゃんとしてるから良いんだよ」


 ジュークは可愛らしく天使のような面立ちなので、皆ついつい許してしまうのだろう。

 ご多分に漏れず、エリーゼもそうだ。


 最近、どうやらジュークはそれを分かってやっているらしいと、エリーゼは気付いてしまった。

 賢さを様々な方向に向けるようになってきたジュークの行く末が心配で、困っているのだ。

 女性関係で刺されたりしないだろうか、とか。


「ジュジュ、女の子は泣かせないでね」


「……今の話の流れで、何がどうなったらそうなるの。時々1人で飛んでいくよね」


 我が弟ながら、あきれ顔可愛いもすぎるなと感心しながら、エリーゼはジュークを愛でている。


「僕にはエリィが側にいて、他の子はその他大勢だから泣かせようがないよ」


 ジュジュってば。

 よそ様がいらっしゃる前で、何て可愛いシスコン発言するの。



「ジュークは家でも変わらずそうなのか」


 エリーゼはふふっと笑って聞いていたけれど、ロイドの言葉が脳内リピートされて青ざめていく。


「い、いえ、家でもって……」


「あれ、ご存じないですか? 学園でジュークは極度のシスコンで有名ですよ」


 あら、極度が付いちゃってるわ。


「ちょっ、ジュジュ。そんなことしたら、婚約者とか決まらなくなっちゃうわ」


 エリーゼの婚約話が出たのが少し遅いくらいで、そろそろジュークも婚約者を決めなければならない時期だ。


「大丈夫だよ、皆納得してるし。婚約は誰でも同じだから、父様が選んだ侯爵家のためになる人と結婚するって決めてるよ」


 ジュークがそんな事を考えていたなんてと、エリーゼは驚いて少しの言葉も出ない。


 皆なぜ納得してるの? それで良いの?



「それにさ、オープンにしとけば、僕とエリィの虫除けにもなるかなって。エリィはきれいで可愛いからね」


 にこにこ笑いながらジュークが称賛の言葉をくれるので、エリーゼは嬉しそうに笑った。


「何言ってるの。きれいで可愛いのは、ジュジュよ」


 ミロウ侯爵家の姉弟は、お互いを絶賛し合うのだ。


 そんな2人を見て、ロイドは嬉しそうに笑っている。


「いつも聞いている話を、実際見られるとは思っていませんでした」


 婚約者になるかもしれない女性が、弟をべた褒めしても平気なんて、懐が広いのか少し変わってるのかと考えながらも、エリーゼはその笑顔に救われたような感覚になった。



 美しすぎて心臓が心配だったけど、ロイドさんの笑顔は、今はずっと見ていたい気がするわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ