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29…想い想われ

 皇城の新年パーティも終わってからも、エリーゼはカガリー辺境伯邸での滞在を続けている。

 ホームシックになったこともあって、今回はジュークも付いてきた。

 朝食後に自室に戻り、午前中にある家庭教師の授業の準備をしていると、ロイドが訪れてきた。


「あ、ロイドさん。あの、もう大丈夫そうだし、私、侯爵家へ戻ろうかと」


「……何か、不手際でも?」


 今すぐにでも斬りにでも行こうかというオーラをまとったロイドを見て、エリーゼは慌てて手を振って否定した。


「まさか!! とっても良くしてもらって申し訳ないくらい」


 エリーゼは困った顔をして、にっこりと笑った。



「何だったら、ずっと住んでくれても良んだけど」


 そう言うと、ロイドは帰ってほしくなさそうな顔をして、エリーゼの頬に手を当てた。



 最近、ロイドさんに触れられると、こう、頭の奥が痺れるというか、何とも言えない感覚に陥りそうになるのよね……


 エリーゼはロイドの手に自分の手を重ねて、少しうつむいて照れくさそうにした。


「だって、いつか結婚したら、ミロウ侯爵家の家族と住めなくなるでしょう?」


「………」


 ロイドは驚いて口を開けたままエリーゼを凝視しているけれど、それに全く気付いていないエリーゼは顔色を変えることなく、うつむいたまま話し続ける。


「だから、今のうちに一緒に住んでおきたくて。ロイドさんも大好きなんだけど、お父様もお母様もジュジュも大好きだから」



 さて、お気付きだろうか。


 エリーゼはまだ気付いていないけれど、ロイドに向かって、ロイドへの自分の気持ちを、初めて言葉にしたのだ。



「「……」」



 返事がないので、エリーゼは目線を上げてみると、ロイドが驚きすぎて動けなくなっているのが見えた。



 ロイドさん??

 …………あれ?



「はぁぁっ!!」


 先ほどの自分の言動を脳内再生してやっと事態が分かったエリーゼが、やっと顔面蒼白になって叫び声を上げた。



 えええぇぇぇええ?!

 待って待って。

 私、今、何を、誰に言ったの?!

 まだ正式に婚約もできてないのに。

 あっ! 手を!

 手がっ!!

 ああぁぁぁぁあああっ!!



 自分の頬にあるロイドの手に触れたままで、それもどうしたら良いか分からず、エリーゼは錯乱中だ。


「あの、えーっと、その」


「……俺の一方通行じゃなくなったのか?」


 え? 一方通行?

 なくなった?



「まじか」


 え……



 ロイドの言葉を聞いて、少しずつ冷静になっていったエリーゼは、ロイドを見上げた。



「お、同じ?」


「ああ! 良かった」


 今までエリーゼが見た中で1番嬉しそうな顔をして、ロイドが笑った。



 格好良いロイドさんが可愛く見えるなんて。



「やっぱり離れたくない。ああっ、でも、でも、帰ります」



 ロイドがエリーゼの頬にキスをすると、エリーゼがロイドにギュッと抱きついた。


「私の気持ちは重たくない?」


「いや、それについては勝てる自信しかねーな。どんとこい」


 エリーゼは嬉しくなってニヤけてしまう口元に力を入れたけれど、顔は赤くなっていく。


「……私、ロイドさんの気持ちが重いと思ったことはないわ」


 少しだけ顔を上げて、ロイドと目を合わせてみたけれど、やっぱりエリーゼは恥ずかしくて視線をそらしてしまう。


「まぁ、頑張って遠慮してっから」



 予定外に自分の気持ちを伝えてしまったエリーゼだけれど。

 その時になったら、これだけは伝えたいと思っていたことがあったので、深呼吸をしてから真剣な顔になった。



「この想いは、絶対に、忘れないから」



 目を大きくして、一瞬泣きそうな顔になったロイドが、微笑しながら「ああ」とだけ返事をした。


 ロイドの顔が近付いてくるのが分かると、エリーゼは頬にキスをされるのだと上向きのまま目を少しだけ閉じようとした。


 あ……


 角度が、いつもの頬にするものとは違っていることにエリーゼが気付いた、その時。




ガチャ


「エリィ、今良い?」


 エリーゼとロイドは、近距離まで近付いていた口を瞬時に離して、突然現れたジュークの方へ振り返った。



「ノックしろ」


 ロイドが怒りの形相で、ため息をつきながらジュークをにらんでいる。


「何で上品なこと言ってんの」


 エリーゼはまだ顔が真っ赤で動けず、もちろん口を開くこともできないでいる。



「……お邪魔した?」


「ああ、かなり邪魔だった」


 ロイドは舌打ちをして、怒りを隠すことなくジュークへ向けている。


「へえ、それは来て良かった」



 2人のやり取りを聞きつつ、少しずつ持ち直したエリーゼがジュークの方へ向いた。


「な、何かあったの? ジュジュ」



「ああ、うん、ちょっと」


 少し気まずそうにしたあと、意を決したジュークがエリーゼの目を見た。


「エリィ、家に帰って暖かくなったら、どこかに出かけよう」


 すぐに顔色が変わったロイドが、さっきとは違う表情でジュークをにらみつけた。


 それに気付きながらも、ジュークはエリーゼを見続けている。


「出掛けるの?」


「うん」


 申し訳なさそうにジュークが返事をするのと同時くらいに、ロイドが割って入ってきた。


「行かなくて良い」



「……え?」


 なぜか怒りの声色のロイドを、エリーゼが不思議そうに見上げた。


 ロイドとジュークがお互い真剣に見あっていて、どちらも譲らなさそうな雰囲気だ。


「んな事する必要ねーだろ」


「それは、やってみないと」


「何かあってからじゃ、遅えだろ」


「だから準備をするんだろ」



 いつもと違って対立しているロイドとジューク。


 エリーゼはハラハラしながらも、話に割って入ることにした。


「話が……見えないけど。どうしたの?」



 ロイドは説明するのも嫌だと言わんばかりのだんまりを決め込んでいるので、ジュークが渋々説明を始めた。


「……呪術の狙いが、エリィってことは分かってるんだけど」


 ……そうね。


「呪物を調べても、上手く隠してあって犯人が分からないんだ。媒介や術者が誰なのかを、知るには……」


 エリーゼは、すぐに理解した。


「狙われれば、分かりやすいわね」


 ジュークが申し訳なさそうにするのと同時に、ロイドがエリーゼの手を取った。


 2人とも、そんな悲しそうな顔をしないで。



「呪術が発動されても、守れるように万全の備えをして行くから。僕とロイドとアリストで」


 辛そうに必死に説明しているジュークを、エリーゼは真剣に見ている。



「僕は、根絶したいんだ。エリィを狙う何かを」


 今のままでは、防戦一方が続いていくだけで、エリーゼは自由ではない。




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