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短編集

脳内マイクロチップで思考や行動全てを制限された超監視社会の日本でエロ本を読む方法

作者: 津慈



(警告レベル4!対象の思考に刑法に抵触するパターン信号を感知しました。強制思考浄化を開始します。…浄化を確認しました。)


「くそ、また失敗か!!」


俺は闇市で高額取引されていた黄金期と呼ばれている2000年代のエロ本をソファに投げた。


買った当初、エロ本への耐性のない俺は思考感知を切り抜けるため筋トレをしながら見てみたりや親と電話しながら見てみたりと考えうる限りの方法を尽くし、満を持して今日母と父との馴れ初めを録音した音源をイヤフォンで聞きながら、表紙と目次を見る事に成功したが幼なじみの様子がおかしいという導入部分で努力虚しく、警告音声が脳内に響いた。


「やはり、幼なじみの意味深な『今日家に誰も居ないんだ』が鬼門か!!…音源の効果もあと数回が限界だ」


このエロ本を読むために俺は全てを投げ打っている。会社も辞め精神鍛錬のためにヨガ教室に通い、食事も節制している。


何より母や父に写真を送って貰ったり、今回の様な正気を疑うレベルの頼みを聞いてもらう為土下座やかなりの金銭を使っている。


途中何度も諦めかけたが、先日実家のリフォームを約束する代わりに貰った母と父の馴れ初め 社会人編でついに導入まで漕ぎ着けたのだ。


「前回の高校生編でも、ここまでだったがエロ本の本編が高校生という被りで集中力が途切れてしまった事が敗因。…今回は行けるぞ!」


俺は大きく息を吸うと、壁一面に貼られた両親との家族写真に目をやり目を瞑る。もう表紙、目次、導入への耐性は獲得している。内容に関しても想像で展開に予測を立てて予防線をはりたい所だが、現在の日本にエロに関する全ての情報は脳内マイクロチップの監視AIによって知ることは不可能だ。俺の父と母も人口受精して俺を産んでいるため知る術はない。


(幼なじみの家に誰もいない。この発言からもヒロインがこの女である事は確定だ。とにかくヒロインの顔を想像して耐性を高めよう。)


(警告レベル3!対象の思考に刑法に抵触する可能性があるパターン信号を感知しました。直ちに思考の中止を命令します。繰り返します……)


「くそ、なるべく無表情のヒロインを想像しなければ…もって行かれるか!!」


それから20分かけて出来うる限りのシュミレーションを立てた俺はイヤホンをつけ、音源を再生。再びエロ本に目を向けた。


「あれは社会人2年目の他部署との飲み会の席でだな」

「たしか、あなたの隣の席の人が吐いちゃって私とあなたで介抱したのよね」


イヤホンから知りたくも無い親の馴れ初めが再生される。俺の心が冷え切っていくのがわかる。表紙、目次クリア。


「それでお前がこのまま2人で店を出ないかって誘ってきて」

「ち違うわよ。あなたが誘ってきたんでしょ。行きつけのバーがあるからって」


痴話喧嘩する両親の音声に意識を向けながら、本編導入に突入し、鬼門のヒロインのセリフもクリアした。しかし次のページをめくった瞬間俺は大きな間違いに気が付いてしまった。ヒロインの家に着くとヒロインが部活の用事でいなくなり、代わりにヒロインの母親が登場したのだ。


(警告レベル1!対象の思考に有害なパターン信号を感知しました。)


警告を無視して読み進めると、母親は主人公を無視して風呂場へと向かった。


(警告レベル2!対象の思考に強い有害なパターン信号を感知しました。)


何故か主人公が風呂場へと向かう。シャワーの音が響く脱衣場から磨りガラス越しにシルエットが浮かびあがっている。そして、次のコマに目を向けた瞬間視界が暗転した。


(エラー。対象の思考に重篤なエラーが発生しました。強制的にブラックアウトします。また脳内記録データからエラーに関係する情報の削除を開始します。……削除しました。)


目を覚ました俺は一部の記憶の欠落に気が付いた。幼なじみが部活でいなくなったあと誰かにあった気がしたが、何か激しい危機感を覚え、思考するのをやめた。

同時に部屋にあった親の写真や音声に凄まじい謎の罪悪感を感じ全て捨てることを決めた。その時何故か毎回父の隣に写る女性がいて、不気味さと強い危機感を覚えた。そして問題のエロ本はオークションに出品する事にした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 馬鹿馬鹿しいながらも社会風刺になっていてくすりとさせられました。 数十年後もこの作品が笑って読める世の中であってほしいものです。
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