霊界案内所
1 霊界
死んだB(男、80歳)は霧の中をぼんやりと歩いていた。
周囲にも老人たちが見えてくる。
霧が晴れてくる。
数百人が広い道路を一定方向へ歩いていた。
老人たちの中に、光っている人物もいれば、
真っ黒い不気味な感じの者もいる。
「こちらです。どうぞ」係員が光る人に、ていねいに声をかける。
二人は浮かび上がる。上に案内されていくらしい。
「おまえはこっちだ、ぐずぐずするな!」角の生えた怖そうな鬼が
黒い連中を捕まえて地中に沈んでいく。
どうやらここは天国か地獄かに振り分けられる場所らしい。
行列の半分が連れていかれて、いなくなった。
行く手に建物が見えてきた。職業安定所のような感じ。
ぞろぞろと入っていく。
Bは、どうしようか迷っていると。
Bの後ろから来た人が、「案内します。そちらの建物へ」と案内。
その30歳ぐらいのスーツ男は、Bによく似ていた。
Bよりも、ずっと上品で洗練されていて、自信のある態度だったが。
2 建物
係員が待機するコーナーが10あり、空いている席へ。
上品男も付いてくる。
係員「○○○○さんですね」
B「そうです。あの、ここはどういう場所でしょう?」
「次に行く場所を説明します」
「あの、悪いことをしたら地獄に、良いことをしたら天国に、でしょうか?」
「そうです」
「私は特に悪いことはしていないですよ。天国、ですよね?」
係員「いえ、あなたの悪行はけっこう多いです。こちらがデータです」
コンピュータ画面を手で回して、こちらに見せてくる。
B「つばはき、ポイ捨て、汚い大声が数万回・・・いちいちカウントされるんですか?
いったい誰が。プライバシーの侵害だ!」
上品男「あなた自身です。私はあなたが生まれ変わった
すべての記憶を持つ者です。今回は悪いパターンですね、本人として残念です」
B「こんなこと誰でもするだろう、咎められる筋合いは無い!」
係員「誰でも?他人が人殺しをすれば自分もやって良いと?」
B「それは凶悪犯罪だろう、せこい軽犯罪でくだらん文句は」
係員「でもそれで迷惑してあなたを恨んでる人は」データを示す。
B「数万人、こんなに?」
「あなた嫌がらせ、弱い者いじめが趣味ですよね?
上司にバレないつもりで巧妙に行っている」
「それは誰でもやってることだ!・・・いいがかりで地獄に落とすつもりか!」
「あなたはトカゲ脳のチンピラです。でも確かに凶悪犯罪は行っていない。
ですから猶予しましょう。
あなたの生前の行い通りの存在、他人を見たら吠える、全力で嫌がらせする、
すなわち性悪の犬として生まれ変わってもらいます」
「ふん、まあ気楽に生きられるか」
「いえ、カルマの精算は難しいです。
食用か、悲惨な野良犬、薬殺処分、厳しい状況になるでしょう」
「そんなことされてたまるか!」
「因果応報、これがあの世の法則です。
今回、人間に生まれたのはチャンスだったんですが。残念です」
Bの意識は途切れた。
3 現世
「この頃、小型犬が増えたと思わないか?」
「確かに。猫ではトイレ問題があるが、犬は紐付き散歩で飼い主が始末すれば問題ない、
猫より犬の方が飼いやすい」
「でもこの犬、性格が悪くて。かみつく、吠える、物を壊す。
しつけをまったく受け付けない。性格が最悪だ」
「もし人間だったらとんでもない悪党だな。保健所に始末を依頼しては?」
「そうだな、そうしよう」
Bは善行を積むまでは畜生道から抜け出せない。
何回生まれ変わっても、暴れ続けて世の終わりまで性悪な犬として苦しみ続けた。
手本は「世にも奇妙な物語」の「来世不動産」。
ショムニの人事部部長役の俳優が主役。