プロローグ2
オーシャニアに到着した私は、神殿を訪れていた。神殿は、この地には2つあり、一つはオーシャニアに流れこんむグラン川の東側の丘の上の神殿である。2つ目は、火口島の対岸すぐにある神殿、それから火口島の頂上付近にある神殿である。
私がいま訪れているのは、丘の上の神殿である。
神殿の受付に訪問を告げると、神殿の一室に案内された。しばらく、コーネリアとソファーに座って待っていると、お目当ての人物がノックとともに入室してきた。
私とコーネリアが礼を尽くした挨拶をすると、その人物は笑って言った。
「私はもうありとあらゆる職を辞したただの司祭です。そのような仰々しい挨拶は不要ですよ。」と言って、ソファーに座るように促してきた。
「そのようにおっしゃいますが、ヨハネス様。枢機卿までお勤めになられた方に無礼なこともできませんので・・・。」
「私としては気安く接していただける方がうれしいのですよ。私に気安く話をしてくれる者は皆逝ってしまいましたからね・・・。」と司祭は寂しそうに笑った。
「早速ですが、本日お伺いしましたのは、陛下より歴史書の編纂を命じられたからです。こちらが陛下の勅書でございます。陛下からは王国にとって不都合な出来事であっても事実のみを記すようにとお言葉をいただいております。」
「面白いですね。歴史書は古今東西権力者にとって都合の良いことのみを記し、不都合なものは記されないか、都合の良いものに書き換えられるかのどちらかです。今上陛下はなかなかに見識があるとお見受けします。」
「はい、私も過去の歴史に照らしても名君と言って良いかと思っております。」
「くっくくく・・・。失礼。あなたはどうして若いのにまるで年長者のように評価なさいますな。」
「いや別にそのようなつもりはないのですが、つい歴史家というものはついそのように物を言ってしまうようでして、いろいろと不興を被ったこともございます。」
「そうですか、そうですか。して、あなたがお聞きになりたいのは、「始まりの3人」についてですかな?」
「はい、おっしゃる通りです。特に始まりの3人の海の覇者あるいは海王とも言われるジャン・ロレンツオについてお聞きしたいと思っております。」
「なるほど・・・。あれは、ちょうどまさに100年前の今日のことですよ。あの日の夜は嵐がやってきていました。」
その聖職者は、ゆっくりと話始めてくれた。