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禁呪の力を使って最強の勇者へと僕は成り上がった。役たたずと罵って追放したパーティ、覚醒した僕を見て手の平を返しているがもう遅い。~この腐り切った世界をひっくり返す為に、まずは王国でも滅ぼします~

作者: カニクウ
掲載日:2021/08/01

 王宮内部三階にて僕、アストは勇者ロイに非情な言葉をかけられていた。


「お前はクビだ」


「え?」


 いきなり言われた言葉に、僕は理解が追い付かなかった。

 僕より頭一つも身長の高い勇者ロイの高圧的な視線、反論しようにも声がうまく出ない。


「もう一度言う。お前はクビだ」


 クビ……勇者パーティを脱退しろということか。

 いやだ! だって僕は勇者になるのが夢だから。

 やっと巡ってきたチャンス、こんなところで逃すわけにはいかない。


 冷徹な視線で一瞥してからロイはくるりと踵を返し、足早に立ち去ろうとする。

 僕は咄嗟にロイの腕を掴んでしまった。ハッと我に返った僕は慌ててロイから距離を取る。

 だが、相手は勇者。僕は勇者でなくサポート要員。つまり上司にあたるわけだ。殴られても文句は言えない。


「ぼ、僕は」

「黙れ。そして消えろ」


心底めんどうくさそうに言うロイ、舌打ちしながら僕の手が触った箇所を叩いて(はたいて)から立ち去ろうとする。


「ま、待って!」


 と声を出すと、ロイと僕を遮るように二人の勇者が立った。

 盾の勇者であるレイストは人でも殺しそうな目つきで声を荒げる。


「ロイの言葉がわかんねえのか? この田舎生まれのグズが! テメエにはもうここにいる資格はねえんだよ!!」


 その言葉を聞いて、僕の中で何かがキレた。

 ロイを説得する為に、ロイに聞こえるように声を張り上げる。 


「でも、僕たちS級指定されたドラゴンを討伐したじゃないか! ずっとパーティーを組んできた仲間なんだしこれからも一緒に」


 と、そこまで言った時、肩からどくどくと血が流れてきた。


「……へ?」


 肩に一本の矢が突き刺さったかのように穴が開いて、そこから止めどなく溢れてくる。

 そして全身に痛みが走る。


「ぐわああああああああああああああああああああ」


 痛みと多量出血で意識が朦朧とする中、盾使いのレイストは高らかに笑う。


「くっくっく、おいおい、ロイ。これはあまりにも優しすぎるぜ」

「そうね、王宮勇者へと昇格したロイ様にそんな口答えして肩一つ、アストくんは運がよろしいこと」


 魔法使いのブリンディもギロリと僕を睨みつけた。紫色の長い髪を左右に揺らしながら女性にしては汚く下品な笑い声を王宮内に響かせる。


 ここでようやく悟った。

 味方なんていない。最初からずっと利用され、いらなくなったら捨てられたという現実が僕の背中に重く伸し掛かってきた。

 

「し、信じてたのに……」


 この言葉にピクッと反応したのは、ロイだった。


「失せろ」


 そう言い残したロイはパチンっと指を鳴らし、


「王宮勇者、ロイ=エルフォードの名の下に、この男を王都から追放する」



 ◇ ◇ ◇



 小さい声から勇者に憧れていた。

 でも何をすれば勇者になれるかわからなかったからひたすら剣技を磨いていた。


 カッコよくモンスターを倒したい、悪い奴らをぶっ倒してやるんだ。

 そう意気込んで毎日毎日、一人で修行を積んでいた。

 でも結局、剣術の才能があるわけでもなく、さらに言えば勇者になる為の必須要素である【異能(スキル)】を持っていなかった。


 つまり、僕が勇者になれないのは生まれたその時から決まっていた。

 このことに気付いたのは、田舎から王都へとやって来た丁度一年前の今日。


 ただ何の役にも立たない剣技の訓練だったが、勇者パーティーのサポートとして働くことはできた。


 仕事内容は、クエストの申請とそのクエストに必要な道具を集めたり、クエスト攻略までのプランを計画すること。さらにボスモンスターの弱点を事前に調べておくなど、雑用がメイン。普通ならダンジョンには潜らずに、地上で待機する。

 でも、僕の所属していたパーティーは違った。


 荷物持ちとしてダンジョンに連れて行かれ、ポーションの供給をしたり簡易魔法でバフをかけたりと慌ただしいものだった。

 魔術の才能のない人間が、簡易魔法を使用すると魔力の代わりに生気を失うので、本当に命がけだった……というか、死にかけたこともある。


 ただ勇者になりたかった僕にとって、たとえきつい仕事でも勇者の力になれていることが純粋に嬉しかった。

 それにクエスト達成した時の満足感は、未だに忘れられない。


 特にトラブルもなく、一年間戦い続けた僕らはとうとう王宮勇者になるチャンスを手に入れた。

 王宮勇者とは、ギルドに雇われている普通の勇者とは違い、王宮から直接雇われる勇者ということ。王国を代表する勇者となると同時に、王族の持つ一部権力も手に入れることができる。


 要は、王都を中心に活動している勇者にとっては最終的な目標。

 その適正テストとして、まだ誰も討伐したことのないS級指定のドラゴン討伐が条件となった。


 結果から言えば、見事にドラゴンを討伐することはできた。

 もちろん無傷で勝利を収めたわけではなく、皆ほぼ瀕死な状態になりながら、ぎりぎりの戦いを制していた。


 ロイは倒れ、レイストは気絶、ブリンディは岩陰へと逃走。


 ロイの必死な声、確か「行くなっ!」と叫んでいた気がする。でも、僕はこのパーティーで最強になりたかった。

 もっと強ければ、もっと力があれば彼らを救えたのに。そう思いながらドラゴンへと立ち向かっていく。


 そこから先はよく覚えてない。

 ただ猛然と剣を振っていたような気がする。

 とにかく僕がドラゴンを倒したのだ、この僕が。役立たずと言われる筋合いはない、追放される理由などない、


 だってこの僕がドラゴンを倒したんだから!!


 僕が勇者になるはずだったのに、……僕が最強なのに。



 ◇ ◇ ◇



 目を覚ますと、ダンジョンにいた。

 しかも、モンスターに喰われてくださいとお膳立てするかのようにモンスターをおびき寄せる煙を炊いている。


 幸いにも、まだモンスターは寄って来ていない。煙の効果範囲にモンスターが入ってきたら一巻の終わり。


 ロイによって貫かれた左肩はまだ再起不能。

 いたい。

 あー、いたいなぁ。確かドラゴン戦の時もこんな感じじゃなかったか。


 ふぅ、と息を吐いて落ち着こうとしたその時、乾いた笑いがこぼれた。


「……もっとゆっくりさせて欲しいな」


 A級レベルのモンスター、ベルセルクだ。

 何十、何百と勇者を切り殺してきたベルセルクの持つ剣は既に僕をロックオンしている。

 逃げるか、死ぬか。


 ベルセルクが僕を見つけ、狙いを定めたと同時に走り出した。

 この一年、ダンジョン内では走り続けてきたお陰か体力と地理には自信がある。


 ベルセルクはモンスターの中では足が遅い。

 別のモンスターと鉢合わせないように安全なルートを辿って地上に戻れば、まだ僕の人生はやり直せる。


 とにかく走る、走る。

 五分程マラソンをしてようやく物陰で隠れられた。


「ふぅ……」


 ここまで来れば大丈夫、と安心していたら肩を叩かれた。


「うわあああああああああああああああああああああああ」


 目にも止まらぬスピードで振り向いた僕は、目の前にいるのが人間だと認識して慌てて口を閉ざした。


 美少女、という簡易な言葉では例えられない美人な女の子。年は十六か十七くらいだろうか、僕と同じくらいに見える。金色の髪は腰まで伸びており、腕や足も細く勇者ではないと思う。にこにことダンジョン内で笑っているのは一体なんなんだろうか。


「あなた、アスト様よね」

「ふぇ?」


 なんで俺の名前を知っているのか、という驚きと普通に会話をし始めたこの状況に声を出さずにはいられなかった。


「まさかこんなところで会えるなんて!」


 ぐっと前のめりになって近づいてくる彼女に、恋愛などしたことのない僕は反射的に身を引かせてしまう。

 と、そこで時間が止まったかのように僕と彼女の動きが止まる。


「あっ」


 という声を出すが、もう遅い。

 その行為が女の子を傷つけてしまうことに気付いたところで、巻き返す手段などない。


「ごめん」

「べ、別に気にしてないから」


 明らかに気にしているようだが、そこはもう触れないことにする。


「あの、なんで僕の名前を?」


 そんなことよりも真っ先に解決しなければならない問題がある。僕の名前は別に有名じゃない、パーティーに勇者でないサポートを雇うのは普通のことだからだ。

 僕だけが特別なわけじゃない。


 しかし、彼女は僕を真っすぐな綺麗な瞳で見つめる。

 そしてゆっくりと手を取り、言葉を告げる。


「だってあなた様こそが私の求めていた、最強の勇者だからです」


 え、なんて言った?

 思考が追い付かない僕に対し、ニコニコと満足気な笑みを浮かべる彼女。

 バサバサっと下級モンスターの夜行鳥の群れが飛び立った音だけが洞窟に響いた。


「僕が、最強の勇者?」

「はいっ! その証拠に、S級指定されたドラゴンを討伐しましたよね?」

「でも、あれはロイが……」


 咄嗟に出た言葉がこれ、さっきまでの気迫はどこへやら僕の心は脆かった。

 しかし、彼女はこれを肯定しない。


「あなたが倒したのを私、見ました!」

「そ、そう。…………やっぱり僕が倒していたのか?」

「何か言いました?」

「い、いや、なんでもない。ふんふんそれで僕がなんだっけ?」


「あなたが最強の勇者ということです」


 美人ほど何を考えているかわからない、なんてことを父さんに教えられたけど本当だ。

 でも、もしも僕がこの娘の言う通りに最強の勇者であるなら……


「試してみましょう。あそこにいるベルセルク、あれをサクッと倒しちゃってください!」


 さっきのベルセルクが僕を探しているのかうろうろしながらこっちへ近づいてくる。

 え、戦うのか? 死ぬかもしれないのに。ドラゴンを倒したのがまぐれだとしたら……。

 この思考が体にブレーキをかけた。硬直して動かない体に指示を出すことなく、このまま岩陰に隠れていようか、そう思った時、


「えいっ!」


 ドンっと背中を押され、片腕を負傷した他称『最強の勇者』はベルセルクの前へと飛び出した。


「あれ?」


 ギロリと標的を認識したベルセルクは真っすぐ向かってくる。

 うおおおおい、あの女。まさか僕を囮にして逃げるつもりか。


 もう僕の逃げ道はない、戦うしかない。

 最強の勇者、彼女の言葉を信じよう。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 雄たけびを上げ、目を血走らせる。

 

 刹那。


「ああああああああああああああああああっっっぁぁぁ!!」


 言葉にならない叫び声と共に、モンスターは消滅した。

 僕の手には何もない、丸腰だ。

 丸腰で敵を倒した。


「ぷふっ、アスト様は可愛いですね」


 小馬鹿にした笑い、死にかけ生きながらえた僕にはそれが悪魔の笑いにも見えた。

 でも可愛い、それは揺るがない。


「何が、起こった……?」


 楽しそうな表情を浮かべる彼女は、弾むような声で告げる。


「禁呪です。あなたはドラゴンと対峙した時、禁呪を使用したことでドラゴンを討伐することができました」

「禁呪?」


 初めて聞いた言葉に、首を傾げた。


「禁呪は人を超越した力を手に入れる契約です。これは誰にでも使えるわけではなく、適正がある者にしか使えません。人の願いを力に変える、そんな能力です」

「願いを?」

「そうです。勇者は弱き者の願いを叶える使命があります。世界にたった一つしかないその能力は正に最強の勇者の証明です」


 よくわからないけどベルセルクを一撃で倒せたのだ。この能力はとてつもないものに違いない。

 じゃ、じゃあ僕は遂に最強の勇者になったのか。


 喜びを噛み締めていると、彼女は僕に軽くキスを交わし微笑む。


「私、レミエラ=モルフスト。次期女王候補、序列七位の王女でした。つい先日、王国から追放されてしまたので仲間を探していたところです。……ねえ、アスト様? 私と一緒に王国を滅ぼしませんか?」

読んで頂きありがとうございます。


「面白かった!」


と少しでも思っていただけたら幸いです。


よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] タイトルに対して中身薄すぎ。作品単品で完結してないんだから短編ですらないだろ
[一言] 続きが気になる...連載してほしい...(*´・ω・)
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