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再会
それから二週間経った。その間の私の暮らしは、順風満帆だった。皮肉交じりに言えば。
もう一つの世界は、現れなかったのだ。もう二度と現れることはないのだろうか。あれで最後だったのだろうか。二週間も放置された私は、あの世界を心の底から強く求め、また、そうし続けなければどうしようもない体にさせられていた。
もし、今ここで現れたなら、私は、あれの虜になってしまうだろう。
そう思ったのも束の間。急に、目の前に白いもやが立ち込めた。耳は遠くなっていき、サーッという、自分の血液の流れる音だけが聴こえてくる。
まさか、来たのか。このタイミングで。あの世界は恋の駆け引きのプロなのか。私は、驚きを通り越して感心していた。だが、そのおかげで冷静さを取り戻すことが出来た。
間違いない。もうすぐそこまで来ているのだ。私は必死で、自分の意識に力を込めた。どうしよう。やっぱり怖い。何だか死ぬ気がする。私の身体では、恐怖心と好奇心とが入り混じった汗が、私の皮膚を削るように、いくつもいくつも、流れていた。