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私Aは私Bを呼んだ  作者: 源義史
もう一つの世界
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憂鬱な夏

 七月の終わり。外の気温は三〇度を超えている。まだ八月にはなってないというのに。が、部屋のクーラーから吐き出されたエアーの塊を、一日中喰らっている私にとっては、関わりのないことだ。今年、晴れて高校に入学した私は、今は、晴れた空のもと、夏休みを謳歌しているところ。ただ、謳歌といっても、真っ白な壁のもと、寝て、食べて、ゲームをして、を繰り返しているだけなのだが。


 ある日。この日も、私は、十時に強引に起きた。ここ最近の目覚めは最悪だ。十時になると、外はもう夏らしい暑さになるし、家の中もそうだ。気が狂いそうになる。


 しかも、夏休みに入ってからは、夜中はずっと独りでゲーム三昧だから、頭やら、首やら、肩やらがガンガン、ギシギシ、ズキズキと痛む。そんな状態のまま、クーラーを浴びて、無理やり理性を保とうとするのだから、そりゃあ、気分は最悪になるはずだ。というわけで、いつもはもうひと眠りする。決して誇れないし、誇る気もないが、これが私のルーティンなのだ。


 しかし、この日はそういうわけにはいかなかった。理由はいたって高校生らしい。夏休みの宿題。数学のプリント。仕方なしに手に取ったその藁半紙には、インスウブンカイや、サインシータ、コサインシータなど、その存在理由が不明の連中が堂々としたものだ。私は、嫌気を押し殺して、さっそく取り掛かったが、思ったより終わりは近かった。


 というのは、これまたいたって高校生らしく、私は、勉強が嫌いなのだ。集中は五分と持たない。私は、机を覆っていた藁半紙をどこか遠くの方へ投げ、とりあえず、裸の机に素肌を合わせてみることにした。しばらく経ったらまたやろう。こういうのはメリハリが大事だ。私は、諭すように自分にそう言い聞かせた。


 しかしそれにしても、この机は意外にも心地いい。机の奥の方からその表面へと、ひんやりとした空気の塊が、ゆっくりと伝わってくるのを感じる。そんなことをしているうちに、思いもよらず、私は、結局独りでもうひと眠りしてしまった。


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